Free大助!

「冤罪・北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【79】「松橋事件」再審開始、各紙の社説

先日紹介した「松橋事件」の再審開始。

【77】「松橋事件」再審開始に思うこと - Free大助!

新聞各紙の社説で取り上げているので、目についたカ所を抜粋します。

 

朝日新聞 

(社説)再審手続き 繰り返し整備を求める:朝日新聞デジタル

再審手続きにおいて、弁護側はどんな権利を行使でき、検察は義務を負うのか。裁判所はいかなる権限に基づいて審理を進めるのか。朝日新聞の社説は、法令や規則ではっきり定めるよう繰り返し訴えてきたが、この事件を通じてその必要性はますます確かなものになった。あわせて考えるべきは、検察官の不服申し立てのあり方だ。(中略)

冤罪は、人生を根底から狂わせる。それを晴らそうとする人の貴重な時間を奪い、二十三重に苦しめた責任を、検察は直視しなければならない。

※私から一言

「再審法」の制定、とりわけ検察の抗告をやめさせるべき!ということですね。締めくくりに 検察を断罪しているのは画期的です。

そして何度も書いてきましたが、朝日新聞は守大助さんの逮捕時、警察のデタラメ発表を垂れ流し、センセーショナルで異常な犯人視報道を繰り広げました。そのことを反省し、大助さんの再審も応援してくださいね。

 

熊本日日新聞

松橋事件再審確定 冤罪救済へ制度見直しを | 社説 | コラム | 熊本日日新聞社

宮田さんと共に再審請求した長男は昨年9月、再審確定を知ることなく急死した。こうした経緯も踏まえれば、再審確定は遅きに失した感が否めない。今後、熊本地裁でやり直しの裁判が始まるが、無罪となる公算が大きい。高齢の宮田さんのためにも、速やかに結論を出すべきだろう。

※私から一言

事件の地元紙らしく、宮田さんと亡くなられたご長男に寄り添った内容です。再審に時間がかかり過ぎることを、的確に批判しています。

 

西日本新聞

冤罪防止 制度改革がさらに必要だ|【西日本新聞】

無実の罪で服役したり、違法な取り調べを受けたりした人たちが、「冤罪被害者の会」を来年前半にも結成するという。(中略)全事件での取り調べの可視化(録音・録画)や証拠の前面開示をはじめ、冤罪を生んだ捜査員らの責任の明確化を訴えていく。

とりわけ注目すべきは、再審開始決定や無罪判決が出た場合に、検察側が不服として上訴できる権利を制限する案だ。

※私から一言

こちらも九州の新聞です。「冤罪被害者の会」は「布川事件」の桜井昌司さんらの呼びかけで結成されます。“捜査員らの責任の明確化を訴えていく” 方針が紹介されたのは画期的。これまで冤罪を生んだ警察官、検察官、裁判官は何のペナルティも受けることなく、ノウノウと余生を送っています。責任追及は、冤罪被害者の悲願でもあります。

 

南日本新聞

[「松橋」再審決定] 証拠開示で法制化急げ | 社説 | 南日本新聞 | 373news.com

今回の最高裁決定に至ったいきさつから、再審での証拠開示の重要性が改めて示されたといえる。検察は、証拠は自分たちのものという意識があるのではないか。裁判所の判断に影響を与えるような重要な証拠は示さず、再審開始決定後に抗告を繰り返す姿勢は到底許されまい。

(中略)松橋事件の再審開始決定は、再審請求中の「大崎事件」の弁護団や関係者にとっても人ごとではない。

※私から一言

驚く事に、検察は多くの再審事件において “証拠を開示する必要ナシ” と居直っています。そんな姿勢を厳しく批判しています。そして鹿児島の新聞らしく「大崎事件」の再審開始も促しています。

 

北海道新聞

松橋事件再審へ 一刻も早い無罪宣告を:どうしん電子版(北海道新聞)

検察は、地裁や高裁で再審開始が認められても抗告して争い、審理を長引かせた。いたずらにメンツにこだわった態度と批判されても仕方あるまい。加えて、布切れといった検察側に不都合な証拠を隠していた疑いさえある。自らの主張と証拠の矛盾に気づきながら、開示しなかったとすれば到底許されない。

※私から一言

北海道からも憤りの声です。冤罪デッチ上げに加担しながら、再審開始に抗告をする検察の姿勢を厳しく糾弾しています。私に言わせれば “検察死ね!” ですが、新聞の社説なので “到底許されない” と表現するのが精一杯だったのでしょう。北海道といえば「恵庭OL事件」の再審が最高裁に係属しています。地元紙として精一杯応援してください。

 

以上、各新聞の社説でした。

ただし、検察はむしろ再審の担い手なるべき…

という視点が見当たらなかったのは、ちょいと残念。

おこがましいのを承知で、過去に書いた記事のリンクを張っておきます。

【46】検察官こそ再審請求を!〜内田博文教授の講演録から〜 - Free大助!

何はともあれ、これだけ多くの新聞で取り上げられるということは、

社会の注目も集まっている証。この追い風が守大助さんをはじめ、

無実を訴える全ての皆さんに吹くよう、引き続き声を上げ続けます。

 

マスメディアの注目を追い風に!

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【78】大杉漣の映画「教誨師」〜この男は実在した!?〜

大杉漣さん最後の主演作となった映画「教誨師」を観てきました。

大杉さんはエグゼクティブプロデューサーも兼任したということで、

並ならぬ意欲が伝わってきます。

 

まずはパンフレットから、作品の概要を抜粋して紹介します。

■「教誨師とは…」

刑務所や少年院等の矯正施設において、被収容者の宗教上の希望に応じ、所属する宗家・宗派の教義に基づいた宗教教誨活動(宗教行事、礼拝、面接、講話等)を行う民間の篤志の宗教家のこと。

■「解説 INTRODUCTION」

牧師の佐伯は、半年前に着任したばかりの教誨師。彼が面会するのは年齢、境遇、性格の異なる6人の死刑囚。皆、我々と変わらない人間でありながら、どこかで道を誤ったり、ちょっとしたボタンの掛け違いによって取り返しのつかない過ちを犯した人々。

 

公式サイトのリンクも張っておきます。

kyoukaishi-movie.com

 

舞台はほぼ全編を通して拘置所の面会室。

大杉さん演じる教誨師が6人の死刑囚と入れ替わり立ち代わり、

対話を重ねるシーンが2時間近くにわたって続きます。

 泣き叫んで感情を露にしたり、社会を斜めに批判したり、

それぞれに一癖も二癖もある6人。

時にはそれを根気づよく諭し、時には優しく包み込む大杉さん。

迫真の演技を観ていると、心臓が押しつぶされそうな気分です。

ちょっとトボケた感じの拘置所の所長さんも、なかなか良い雰囲気。

教誨師さんははじめてですか。実は私もはじめてなんです…」

というセリフが耳から離れません。

何が “はじめて” なのかは、ぜひ劇場に足を運んで確かめてください。

 

1つだけネタバレを…。

3人を殺害した、男性の死刑囚が登場します。

彼は計画的に犯行を行ったとして、死刑が確定しました。

しかし本当は突発的に殺してしまったのを “用意周到にやったんだろう!” と、

取り調べで厳しく責め立てられ、つい認めてしまった…。

その “真相” を告白された教誨師はすかさず、

“ならば、裁判のやり直しをしましょう!” と声を上げます。

付き添いの拘置所職員に “そういう話は遠慮して” と言われながらも、

「再審」をやりましょうと、アドバイスを送ったのです。

このブログのテーマである「冤罪」とは少し外れますが、

再審制度が取り上げられたことに、つい反応してしまいました。

 

そして本当に、大杉さんのような教誨師がいたことを思い出しました。

古川泰龍(たいりゅう)さん(1920〜2000年)です。

古川さんは妻の美智子さんとともに、

戦後初の死刑冤罪と言われる「福岡事件」(1947年)で、

処刑された西武雄さん(1975年執行)の雪冤に生涯を注ぎました。

実は過去に一度、古川さんについて書きました。

一部を手直しの上、再度紹介させてください。

 

文章は美智子さんの手記『悲願〜「福岡事件」再審運動に捧げた生涯〜』をもとに構成。

 結婚した翌年(1953年)、熊本の住職だった古川泰龍さんは、

福岡拘置所の死刑囚専属の教誨師になりました。

そして死刑台に赴く人々と交流する中で無実を訴える西武雄さんと、

共犯者とされ同じく死刑が確定した石井健治郎さんに出会います。

「2人を何とか助けてあげたいが、一教誨師に何ができるだろう」

一家(8人家族)の生活を支えなければならない責任もある中で、

思い悩む泰龍さんの決意を後押ししたのは美智子さんの一言でした。

「あなたが助けるほかに道はないでしょう。

あなたが立ち上がるなら、私は陰の力となって助けます」

この時、美智子さんの脳裏には母校・東京家政学院の学院長の教え

“世のため人のため尽くせよ” が浮かんだそうです。

 

泰龍さんは福岡事件の冤罪性を広く世に訴えるべく、

『真相究明書』の執筆に取りかかります。

宗教書が大半だった書斎の本棚は、社会問題や裁判に関する書籍一色に。

原稿用紙2000枚以上を書き上げたものの、印刷・出版資金がありません。

そこで泰龍さんは托鉢となって各地を回り、お布施でお金を集めます。

法務省からは “死刑囚を支援するなどトンデモナイ” と、

教誨師を辞めさせらますが(今も昔も法務省やることは…(怒)

『真相究明書』300冊を刷り上げ、法曹関係者や文化人に配布します。

 

しかし活動に没頭するほど一家の生活は火の車に。

ビールを買えず水を「鉄管ビール」と言って飲んだり、

ガスや水道も止められて、家の敷地内に沸く温泉で炊事や洗濯を賄うなど、

想像を絶するドン底生活が続きます。

そんな中でも美智子さんの決意は揺らぐことなく、

お金の工面に駆け回ったり、托鉢に同行したり、

一貫して泰龍さんの活動を支え続けます。

 

苦境にメゲず運動を続けたことで徐々に仲間が増え、

テレビや雑誌で福岡事件が取り上げられ、

1968年の「死刑囚再審特例法案」へと結実します。

これは神近市子議員ら超党派の有志と連携し、

アメリカ占領下で起きた死刑確定事件について、

再審の機会を与える法案を提起するという運動です。

 

現在の再審制度を巡る動きを先取りしたような運動が、

半世紀も前に行われていたことに新鮮な驚きを感じます。

 

法務省の反対で(また法務省…(怒)法案の成立は見送られますが、

恩赦によって共犯者とされた石井さんの、無期懲役への減刑が実現します。

そして西さんも恩赦…!と期待されましたが、

1975年6月17日、あっけなく死刑が執行されてしまいます。

無実を訴えつづけてきた西さんは、60歳で国家権力によって命を奪われました。

まさに不意打ち…遺書を書く時間も与えらなかったといいます。

西さんの処刑に意気消沈しながらも泰龍さんと美智子さんは、

「死後再審」に向けた取り組みを続けます。

そして1989年に仮釈放となった石井さんも運動に加わり、

再審請求がくり返されますが、2009年に第6次請求が棄却。

西さんの雪冤を果たすことなく夫婦は旅立ちます。 

 

現在は長男の住職・古川龍樹さんが、2人の遺志を継いでいます。

龍樹さんは幼い頃か拘置所に面会に行く両親に付いて行ったり、

“おじさん(西さん、石井さん)”が獄中で育てた小鳥をもらったり、

学生時代には托鉢に参加していたそうです。

事件発生から71年、西さんの処刑から43年。

 龍樹さんは福岡事件を語り継ぐとともに、

有志による「再審法」の成立に向けた運動にも参加しています。

 

どうでしょうか…大杉漣さんの主演で、

古川泰龍さんをモデルにした続編を観てみたかった!

と思うのは私だけでしょうか?

大杉さんがいない今、その願いも叶わなくなってしまいました。

 

また名優が1人、旅立ってしまった…。映画パンフレット裏表紙より。

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【77】「松橋事件」再審開始に思うこと

10月10日(水)、「松橋(まつばせ)事件」の再審開始がようやく確定しました。

最高裁は検察の特別抗告を棄却。

これにより、熊本地方裁判所で再審公判(やりなおしの裁判)が行われることになります。

従って現在はまだ「無罪になった」のでなく、

あくまでも「再審をやることが決まった」という状況。

当事者の宮田浩喜(こうき)さんは85歳。

脳梗塞などを患い病床に伏していることを考えると、

熊本地裁は一刻も早く再審公判を開き、速やかに無罪を出して欲しいものです。

事件については、過去にこのブログでも紹介しました。

【27】冤罪「松橋事件」どうする検察!? 12月4日に注目! - Free大助!

【28】冤罪「松橋事件」やはり検察は特別抗告(怒) - Free大助!

 

ここで2010年代に入って再審無罪となった、3事件の経過を振り返ってみます。

布川事件2005年9月水戸地裁土浦支部が再審開始決定、検察は抗告。

      2008年7月・東京高裁が検察の抗告を棄却、検察は最高裁に特別抗告。

      2009年12月・最高裁が検察の特別抗告を棄却、再審開始が確定。

      2011年5月・水戸地裁土浦支部で再審公判、無罪!

■東電女子社員殺人事件:2012年6月・東京高裁が再審開始決定。

            同時に無期懲役のゴビンダ・マイナリさんを釈放。

            2012年8月・検察が最高裁への特別抗告を断念。

            ゴビンダさんはネパールへ帰国。

            2012年11月・東京高裁で再審公判、無罪!

■東住吉事件:2012年3月・大阪地裁が再審開始決定、検察は抗告。

       2015年10月・大阪高裁が検察の抗告を棄却。

             検察が最高裁への特別抗告を断念。

       2016年8月・大阪地裁で再審公判、無罪!

どうでしょうか?

異例の早さで再審無罪となった「東電女子社員殺人事件」以外は、

再審開始決定から最終的に無罪を勝ち取るまで、何年もの歳月を要しています。

繰り返しになりますが、熊本地裁は一刻も早く再審公判を開き、

宮田さんの命あるうちに無罪を言い渡さなければなりません!

 

そして時間がかかる最大の原因が、抗告を連発する検察であることは明白です。

この検察の姿勢がいかに許されないことであるかは、過去に書きました。

【29】何故、検察は再審開始を妨害してはダメなのか? - Free大助!

【46】検察官こそ再審請求を!〜内田博文教授の講演録から〜 - Free大助!

もはや検察の横暴を止めるには法制度を変えること…

つまり刑事訴訟法の再審に関する規定を全面的に見直し、

再審開始決定に対する検察の抗告を禁止する他ありません。

そもそも裁判所が出した判断に、検察が言いがかりを付ける権利があるのか?

あるハズないですよね!

こんなバカなことを許さないためにも法改正は絶対に必要ですし、

その動きを後押しするために、私たち市民がもっと声を上げなければなりません。

「守大助さん東京の会」も、その一翼を担います!

 

宮田さんの命あるうちに再審無罪を!

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【76】「司法総行動」で守大助さんの無実、訴えました。

■「司法総行動」とは?

司法は言うまでもなく、私たち市民の幸福や安全・安心を守るためのもの。

裁判所、検察、警察が、好き勝手にして良いモノではありません。

 

10月4日に行われた「司法総行動」は、

「守大助さん東京の会」の母体となる人権団体・日本国民救援会

弁護士団体の自由法曹団労働組合組織の全労連などが協力し、

日本国憲法が掲げる基本的人権を守った司法の運用を行うよう、

裁判所、警察庁法務省などに要請を行うという取り組み。

ちょうど20年目を迎えた今回の行動に、はじめて参加してきました。

“昼に最高裁判所前に来てくれ” と言われ、

何をするのか理解しないままに駆けつけたところ、

宣伝カーの上に乗り、マイクを握って訴えるという大役を任されました。

以下に訴えた内容を紹介します。

北陵クリニック事件の概要についても話しましたので、

事件の概要や冤罪のポイントを改めて知りたい!という方もぜひお読みください。

 

■守大助さんは無実!こんな捜査・裁判が許されるのか!

現在、最高裁判所では、私の知る限り7つの冤罪事件(※)が、

再審無罪を求めて闘っています。

※飯塚、恵庭OL、大崎、湖東記念病院、袴田、北陵クリニック、松橋(まつばせ)事件

これだけの数の再審事件が同時に最高裁判所に係属するのは、

日本の刑事司法史上、極めて異例の事態です。

私はその1つである「北陵クリニック事件」の支援に携わっています。

この事件が起きたのは、今から17年前の2001年1月。

宮城県仙台市にあった「北陵クリニック」という医療機関で、

患者さんの急変(急に具合が悪くなること)が連続して起こり、

准看護士の守大助さんが、

5人の患者さんの点滴に筋弛緩剤を入れたとして逮捕されました。

そして裁判で有罪・無期懲役が確定した守大助さんは、

千葉刑務所から無実を訴えて現在に至ります。

この事件、そもそも筋弛緩剤は一切関係ありません。

守大助さんは一滴の筋弛緩剤も入れていません。

5人の患者さんの急変の原因は、いずれも病気や抗生物質の副作用によるものです。

担当医師がそのようにハッキリと証言しているのです。

しかし警察(宮城県警)は勝手に“筋弛緩剤を使った犯行”と思い込み、

患者さんに接する機会の多かった守大助さんを犯人と決めつけ、逮捕しました。

“恐怖の点滴魔” “子どもやお年寄りの患者ばかりを狙った卑劣な犯行”…。

守大助さんが逮捕された直後のセンセーショナルな報道を、

覚えていらっしゃる方も多いと思います。

実はこの時点で、警察は患者さんのカルテさえ調べていませんでした。

カルテを押収したのは、何と逮捕から10日も後でした。

つまり患者さんの急変が筋弛緩剤によるものなのか、基本的な裏付け捜査も行わず、

予断と偏見だけで逮捕に至ったのです。

続いて警察は、鑑定書を提出してきました。

“5人の患者の尿、血液、点滴液から筋弛緩剤の成分が検出された” というのです。

しかしこれが、とても “鑑定書” と呼べるような代物ではありません。

まず、当然あるべきの実験データが添付されていません。

鑑定試料を捜査班から科捜研に渡した際に作成されたハズの、

「受渡簿」も提出されていません。

つまり本当に鑑定が行われたのか、客観的に証明するモノが何もないのです。

これはあまりにも不自然すぎます。

私はこの鑑定は、守大助さんを犯人にデッチ上げるために、

警察がねつ造したものであると確信しています。

しかし裁判ではこのアヤシい鑑定が証拠の柱として採用され、

守大助さんに有罪・無期懲役という判決が下されました。

逮捕当時29歳だった守大助さんは、自由を奪われたまま47歳になりました。

30代から40代半ばまでの貴重な人生の時間を、

このようなデタラメな司法によって奪われる…。

そして今日も、いつ出られるかわからない日々を塀の中で過ごしている。

その無念さと憤りは、筆舌尽くし難いものでしょう。

 

 ■“第二・第三の守大助”は私になるかもしれない

守大助さん以外の冤罪事件も、驚くほど構図が似ています。

“コイツがアヤシい” と決めつけ、思い込みで捜査を行う警察。

脅迫的な取り調べによる自白強要。

一旦起訴したら何としても有罪に持ち込もうと、無実の証拠を隠す検察。

そんな警察や検察の肩を持ち、無実を訴える被告人の声に耳を傾けず、

十分な証拠調べも事実認定も行わずに有罪判決を下す裁判所…。

また裁判所が「再審開始決定」という英断を下しても検察が抗告し、

再審無罪を勝ち取る機会が引き延ばされる例も少なくありません。

最高裁に係属している再審事件のうち大崎、湖東記念病院、松橋の3事件は、

地方裁判所高等裁判所が再審開始決定を出しながら、

つまり2度もの再審開始決定を勝ち取りながら、

検察の抗告によって最高裁での闘いを余儀なくされています。

また袴田事件は同じく検察の抗告によって、

静岡地裁が出した「再審開始決定」が東京高裁で覆されました。

検察の横暴に対して最高裁がどのような判断を下すのか?

予断を辞さない局面を迎えています。

そして現在のような状況が続くかぎり、

いつ私自身が、第二・第三の守大助さんにならないとも限りません。

これは私たち1人ひとりに突きつけられた問題なのです。

今こそ力を結集させて草の根から最高裁判所を動かし、

日本の司法を良い方向に変え、健全な国づくりにつなげましょう!

以上で訴えを終わらせていただきます。

 

宣伝カーの上で。視線の先には最高裁の建物。(写真:T.Yamazaki)

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10月4日、

 

 

 

【75】「東京の会」総会・阿部泰雄弁護士のお話③

〈前回から続く〉

■“ネス湖ネッシーがいない”を証明しろ!?

私たちは再審請求で志田保夫先生(東京薬科大・中央分析センター教授)という、

質量分析の第一人者にお願いをして、

筋弛緩剤の未変化体を調べてもらった。

案の定m/z258なんて出てきません。

ところが今回、再審請求を棄却した仙台高裁は、

“志田教授の鑑定はm/z258が出ないことを証明していない” からダメだと。

これは “ネス湖ネッシーがいない”

“ヒマラヤに雪男がいない” ことを証明しろ!というのと同じです。

何故ここまでやって、再審を開きたくないのか?

こんな裁判ありますか?

この決定を書いた根崎修一という主任裁判官は、

この直後に栄転して東京地裁に戻りましたよ!

 

■1人の御用鑑定人さえ現れない

この裁判の特徴は、

検察側のいわゆる “御用鑑定人” が一人も出て来ないことです。

他の再審事件では検察のご機嫌取りがたくさん出て来て、

ああ言えばこう言うで、

弁護側の新証拠を潰そうと水掛けをしてくるでしょう。

ところがこの事件は科学原理法則ですから、水掛け論にさえならない。

そもそも判断が別れようがないから、

御用鑑定人さえ出て来る余地がないんです。

 

■裁判所は何を守ろうとしているのか?

それでも再審請求が棄却された。

裁判所は一体何を守りたいんですか?

裁判所だって分かっているんです。これが冤罪だって…。

しかしそれを認めるワケに行かない。

何故なら…この北陵クリニック事件に限らず、

日本の犯罪捜査は各都道府県の警察の科捜研に大きく依存している。

デタラメな鑑定で冤罪が生まれた例もたくさんある。

しかし裁判所はこれまで、

科捜研の鑑定結果にオンブにダッコで有罪判決を書いてきた。

それを認めるワケには行かないんです。

 

■そもそも科捜研は鑑定をやったのか?

警察の「犯罪捜査規範」には“鑑定資料を全量消費するな” と、

明記されている。

しかしこの事件は “全量消費した” がまかり通っている。

さらに資料を移動したら受渡簿に記載しろとも書かれています。

宮城県警から大阪府警に渡したら、その記載があるはずなんです。

しかしいくら受渡簿を出せ!と言っても出て来ない。

裁判で宮城県警の刑事が、

“私は仙台空港から飛行機で大阪に行って、

地下鉄で大阪府警まで資料を運びました” と、

バカみたいな証言をしていますが、

それなら何故、受渡簿を出さないのか?

そもそも鑑定試料なんて、存在しないんでしょう。

5人の患者さんが急変した当時、

事件性は疑われていなかったわけですから、

血液や尿をわざわざ取っておく必要がないんですよ。

だから “全量消費した” でゴマカシている。スゴい事件でしょう!

だから皆さん、もっとこの事件のことを知って、

広めてください。

証拠と事実と論理で徹底的に闘うことはもちろん大切ですが、

単に裁判所にマトモな判断をしろ!だけではダメです。

最後に彼等が恐れるのは世論ですから、

守大助君が無実だ!という声を世の中に広げることが、

とても大切なんです。

ということで…、

時間が延長してしまったことを反省しながら、

これで私の話を終わります。

〈了〉

1時間以上にわたり、熱弁をふるった阿部泰雄弁護士。

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【74】「東京の会」総会・阿部泰雄弁護士のお話②

〈前回から続く〉

■警察のカルテ押収は逮捕から10日後!!

いいですか皆さん、筋弛緩剤が使われたと断定するのに、

何をしなければならないですか?

まずは患者さんのカルテ(診療録)を精査しなければならない。

こんなことは小学生でもわかります。

カルテを精査して、急変の原因が薬剤の副作用でもない、

疾患でもないし、どうみてもわからない…。

最後の最後に、もしかすると人為的なコトが行われたのではないか?

薬物を投与してワルさをした人がいるんじゃないか?

という流れで捜査を進めるのが、アタリマエですよね。

ところが宮城県警は1月6日に守君を逮捕して、

その10日後にやっとカルテを入手した。

にもかかわらず、この時点でもうマスコミに大々的に発表して、

世の中じゅうが筋弛緩剤事件で大騒ぎです。

 

■筋弛緩剤による犯行など、そもそも存在しない

検察もあと10日で起訴を決めなければならない。

私たち弁護団は「やめろ、不起訴裁定書を書け」と申し立てをしたんです。

しかし貸す耳もなく起訴しました。

その間に、亡くなった89歳の女性について2件目の逮捕。

これは主治医の先生も、

「原因は筋弛緩剤ではなく心筋梗塞」とおっしゃっている。

守君も接見したら、

「冗談じゃないですよ。私が心筋梗塞という診断書を渡したんですから」と。

3件目は1歳の女児で、一過性の虚血性能発作。程なくして元気になった。

4件目は45歳の外来の男性で、抗生物質の副作用。

同じく主治医の先生も「筋弛緩剤でない」と。

5件目は5歳の男児で、FESの手術だった。

守君が “やった” とされる5件の急変は、いずれも病気や薬の副作用によるもの。

筋弛緩剤なんて関係ないんです。

 

■“真犯人”は『ミトコンドリア病メラス』だった

ただし発端となった11歳の女児については、具体的な病名がわからなかった。

それでもカルテには “神経症状と考えられる” と、

つまり中枢神経症状ですよ。

公判でも小川龍先生が “原因は不明であるが急性脳症、筋弛緩剤ではない” と。

それが再審請求で、

難病の『ミトコンドリア病メラス』であることが明らかになったんです。

女児が昼間、クリニックを受診するきっかけになったのは腹痛と嘔吐。

これは『ミトコンドリア病メラス』の症状と一致します。

ところが宮城県警は夕方に点滴をした5分後の急変、

“モノが二重に見える” “呂律が回らなくなった”という部分しか見なかった。

だから “原因は点滴だ!” と。

全体の流れを見ないでこんな捜査をしていたら、

往々にして間違えますよね。

思い込みで “やったのは守だ!” という筋書きで突っ走ってしまった。

だからカルテさえ調べなかった。

それがこの事件の真相です。

アホじゃないですか!! 声を大にしてトンデモない捜査だと言いたい!!

 

■一番ワルいのは裁判所です。

検察の主張も “土橋鑑定で筋弛緩剤が出た!” 一本です。

この鑑定もですね、トンでも鑑定です。

質量分析というのは、原子と分子の体重計なんです。

ですから筋弛緩剤の標品(未変化体)を分析して出る数値はm/z279。

これは日本を含む万国共通の認識なんです。

海外のどの文献を見ても、土橋のいうm/z258が出るとは書いてありません。

258と言っているのは、世界中で土橋だけ。

ですから二審の仙台高等裁判所では、

鑑定資料は全量消費したと言っているが、

筋弛緩剤の標品の鑑定できるでしょうと。

それで258が出てくるか、疑問なので再鑑定をやりましょうと。

これは当たり前の要求じゃないですか!

ところが仙台高裁は、再鑑定は不要であると。

“土橋が258を出したと言っているのだから間違いない。

分析装置が違えば、279じゃなくて258がでてもおかしくないんだ” と。

皆さん、こんなのが裁判官をやっているんです。

 

最近、行政官僚が公文書の隠蔽や改ざんをやっているって騒がれているでしょう。

こんなこと、裁判所はもう何十年も前からやっていますよ。

で…最高裁でも “土橋は間違いないんだ” で、

無期懲役の刑が確定(2008年)してしまった。

一番ワルいのは裁判所です。冤罪を完成させるのは裁判官ですから。

〈次回に続く〉

 

阿部康雄弁護士。写真は今年2月、仙台での記者会見時。

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【73】「東京の会」総会・阿部泰雄弁護士のお話①

8月18日(土)の「東京の会」総会には昨年に続き、

阿部泰雄・弁護団長を招いて、事件の問題点を改めて共有しました。

阿部弁護士は2001年1月9日、

守大助さんが逮捕された3日後にはじめて接見して以来、

17年にわたって無罪を勝ち取るために闘っています。

総会でのお話を、何回かにわけて紹介します。

※はじめての方は分かりにくいヵ所があるかもしれません。追って補足説明したいと思います。

 

■証拠の資料は?全量消費しました…でも有罪

弁護士の阿部泰雄です。

去年の7月に東京しゃべらせていただいて、約1年ぶりかと思います。

その間、今年の2月28日に仙台高等裁判所で、

再審請求の即時抗告棄却という決定が出ました。

棄却直後の記者会見で私は、

“今回の決定は、科学に対する無謀な挑戦だ!” と批判しました。

守君の有罪の根拠になっているのは、

大阪府警の土橋均(つちはしひとし)吏員による鑑定です。

まず筋弛緩剤「マスキュラックス」の標品(製品)を質量分析装置で調べたら、

m/z258という電気信号が出た。

次に5人の患者さんの鑑定資料(尿、血液、点滴溶液)を調べたら、

同じくm/z258が出たと。

従って筋弛緩剤が使われたと、こういう論理なんです。

しかも鑑定資料は全て使い切ったと、再鑑定させないわけです。

 

これは皆さん、ドーピング問題を考えてもね、

あるいは競走馬の薬物疑惑でも、

不利益処分を受ける側は再鑑定を受ける権利が保証されているんです。

ところが死刑や無期懲役もあり得る重大な事件で、

被告側に再鑑定をさせないというのは、どういうことなのか?

裁判所はこんなヒドいことをやっているんです。

ある若い裁判官にきいたら “そんなのは証拠能力がない” と、

感想を述べていました。

しかし仙台地方裁判所の判断(2004年の一審)は、

全量消費は合理性がないわけではないという判断で、有罪・無期懲役です。

判決の夜、NHKの「あすを 読む」でも若林誠一解説委員が、

「資料が残っていない場合は、証拠として認めないことが必要ではないか」と、

ハッキリ言っていました。

 

■筋弛緩剤と真逆の症状…でも有罪

日本医大麻酔科の小川龍先生は、被害者とされる11歳の女児の症状を見て、

“筋弛緩剤なんて及びもつかない。症状がまるで逆だ!” と。

仙台地裁で証言してくださいました。

麻酔学会の頂点にいる先生が、ハッキリと否定したんです。

筋弛緩剤というのは神経と筋肉の連絡を断って、筋肉を緩めて弛緩させる。

だから本来は最初に呼吸筋がやられて、

酸素が脳に行かなくなって、最後に脳がやられる。

(※そのため手術等で筋弛緩剤を使うときには人工呼吸が行われる)

ところが小川先生は、女児の症状を見て “これは逆だよ” と。

はじめに何らかの原因で脳に障害が起きたんだと。

そこで呼吸中枢がやられて、その後に呼吸とか循環機能が低下した。

心拍数が落ちて呼吸数も落ちているんです。

 

動物実験では筋弛緩剤を投与すると、必ず浅く早い呼吸になる。

何故なら呼吸筋がやられても一気に止まるわけではないので、

大きな呼吸ができない代わりに早くなる。心拍数も上がるんです。

ところが女児の症状は呼吸数も心拍数も下がっている。

つまり呼吸中枢と循環中枢が先にやられた。

脳が先で、胸(呼吸)が後だと。

筋弛緩剤は胸が先で脳が最後。これはハッキリしているんです。

しかし仙台地裁は、この疑問に何も答えていない。

400ページもある判決文の中で、まったく触れていないんです。

 

私は小川先生以外にも何人ものお医者さんに会っていますが、

皆さん、筋弛緩剤じゃないとおしなべて言っている。

 麻酔医師だって神経内科だって。

 そもそも女児には、筋の弛緩がないんです。

女児は2000年10月31日「北陵クリニック」に入院した日に急変します。

そして仙台市立病院に搬送されて心肺停止まで行ってしまいますが、

救急隊員が蘇生させて、命だけは取り留めます。

問題はですね…なぜ女児が脳梗塞のような症状をきたしたのか?

市立病院の小児科の先生もわからなかった。

 

そしてこれは大事なポイントなので申し上げますが、

11月30日に「北陵クリニック」の女医(半田郁子・副院長)の

旦那さん(半田康延・東北大学教授=クリニックのオーナー)が、

同僚の法医学教授に相談をします。

それを聞いた法医学の先生は当時大阪で愛犬家殺人事件という、

サクシン」という筋弛緩剤を使った事件がピンと来て、

“「北陵クリニック」を調べてくれ” と、宮城県警に情報提供をした。

そういうことで県警の捜査陣はすっかり舞い上がってしまい、

本来は医学的な裏付け捜査をしなければならないのに、

それもやらないでアタマから筋弛緩剤を使った犯行と断定して、

何も証拠がないのに守君を逮捕してしまった。

当時の捜査主任の高橋という警部も、

“本件の捜査の端緒は何か” という私の質問に、

“犬殺し(筋弛緩剤)が使われた可能性がある”という、

法医学教授からの情報提供だったと答えています。

〈次回に続く〉

 

裁判の不条理をアツく語る、阿部泰雄弁護士。

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