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「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【168】「松橋事件」4人の犠牲者

■「松橋事件」アーカイブ

昨日(10月29日)、とても悲しいニュースがありました。「松橋(まつばせ)事件」の宮田浩喜(こうき)さんが亡くなりました。87歳でした。

宮田さんは逮捕時の1985年は52歳、2019年3月に再審無罪を勝ち取るまで30年以上、人生の後半ほぼ全てを冤罪との闘いに費やさざるを得ませんでした。晩年は認知症を患い寝たきりだったといいますが、一体どんな想いで旅立たれたのか…心中を察すると言葉が出ません。

9月には弁護団が「宮田さんは違法な捜査などで長期間、拘束されて精神的苦痛を受けた」として、約8500万円の損害賠償金を熊本地裁に提訴したばかりでした。

実はこのブログで、もっともアクセス数が多いのが「松橋事件」関連の記事でした。7本書いたので、改めてリンクをまとめておきます。

(記事はリンクの下へ続きます)

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被害者とその家族も同じ“冤罪犠牲者”

「松橋事件」の犠牲者は、宮田浩喜さんだけではありません。

まずは被害者となった当時59歳の男性。この男性と宮田さんは、将棋仲間だったといいます。そして事件の3日前にお酒を飲んだ勢いで口論になったことが、宮田さんが犯人と疑われるきっかけになりました。

どのような経緯で生命を奪われたのか、今となっては知る由がありませんが、真犯人が捕まらずに事件から35年が経過してしまっては、とてもではありませんが浮かばれないでしょう。

被害者男性には、長女がいらっしゃいます。「西日本新聞」の記事を見つけたので、リンクを張っておきます。

松橋事件 再審無罪へ(中) 誰が父を殺したのか|【西日本新聞ニュース】

被害男性長女「あっけない」 松橋事件再審結審|【西日本新聞ニュース】

“自分の父がどのように殺されたのか?” 真相がわからず仕舞いで過ごすのが、どんなに辛いことか。想像を絶する苦しみに違いありません。宮田さんの再審無罪に対して、複雑な心境になるのも無理はないでしょう。

ここで「松橋事件」から少しハナシがそれますが、マスメディアにお願いがあります。私は被害者家族も同じ冤罪犠牲者だと思っています。なので無実を訴える被告人サイドと、家族を失った被害者サイドの対立や分断を煽るような記事は、配信しないでいただきたいと思います。

上記の西日本新聞の記事はそうでもありませんが、守大助さんの「北陵クリニック事件」の報道は、非常に醜いモノでした。筋弛緩剤を “投与されたとされる” 5人の患者さんのうち、当時11歳だったA子さんは意識が戻らず、現在も寝たきりです。そして大助さんが裁判で無実を訴えるごとに、マスメディアはA子さんのお母さんの「守被告は罪を認めてほしい」というコメントを報じました。

娘さんの状況を想えば、このように言いたくなる心情は理解できなくもありません。お母さんの筆舌に尽くしがたい苦しみに対して、私のような者が軽々しく意見すべきではないことは十分に承知しています。しかし「北陵クリニック事件」は冤罪であり、守大助さんは無実です。悪いのは杜撰なデッチ上げを行った警察と、それを追認した検察、裁判所です。

マスメディアはこの現実にしっかり目を向けて、配慮した報道を行ってほしいと思います。

本当に被害者サイドが「罪を認めてほしい」と言ったとしても、発言をそのまま流すのはやめてほしい。もしこれが双方の言い分を公平に伝える「両論併記」などと思っているなら、トンデモない間違いです。こうした無神経は報道は、無実を訴える被告人サイドの切実な声を貶め、被害者サイドの傷をいたずらに広げるだけで、何も生み出しません。

■ご長男の冥福を祈るとともに「加害者家族」にもスポットを

4人目の犠牲者が、宮田さんのご長男であった貴浩(たかひろ)さん。施設で寝たきりになった宮田さんを支え、ともに再審請求を闘った貴浩さんは、2016年に熊本地裁の再審開始決定を受け、新聞の取材にこうコメントしています。以前も紹介しましたが、再掲します。

「捜査に当たった警察、検察の関係者も、父と同じ期間を刑務所で過ごしてほしい。そうでなければ冤罪はなくならない」(2016年7月1日/毎日新聞

貴浩さんは2017年9月、病気のため61歳で亡くなりました。高齢で寝たきりの父を残し、無罪の確定を聞く前に他界してしまった無念さは、計り知れません。本当に貴浩さんがコメントした通り、冤罪をデッチ上げた警察官や検察官には何らかのペナルティが課されるべきだと思います。

昨年結成された「冤罪犠牲者の会」は、「捜査関係者・裁判関係者(証拠のねつ造・改ざんに関与した者)の責任追及」を目標の一つに掲げています。本当にこれは実現させなければならなりません。

enzai.org

貴浩さんは父親が殺人犯とされてしまったことで、いろいろと苦労したようです。冤罪は当事者だけでなく、その家族の人生まで狂わせてしまうと言われる所以です。

しかし本来は、冤罪であろうと本当に罪を犯していようと、家族が罪を背負わなければならない道理はないはずです。“犯罪者の子どもや兄弟”という理由で差別や迫害を受ける日本社会の状況を、まずは何とかするべきでしょう。

「加害者家族問題」も冤罪と同様に、個人の尊厳を著しく傷つける人権侵害という点で変わりません。支援活動に乗り出しているNPOもあり(下記リンク)、私自身具体的に何ができるかわかりませんが、関心を持ち続けたいと思います。

www.worldopenheart.com

無念のうちに旅立ったであろう、宮田浩喜さんのご冥福を祈ります。(画像はRKK熊本放送ニュースより)

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