Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【128】冤罪の連鎖を食い止める、原因究明&再発防止プロジェクトを!

◆飛行機事故と同じ再発防止策を冤罪にも

「北陵クリニック事件」の支援者仲間には、航空業界の関係者も多くいます。「守大助さん東京の会」の母体である「日本国民救援会・東京都本部」が、日本航空JAL)がらみの不当解雇の裁判支援をしている関係で、つながりが生まれているのです。元整備士、元客室乗務員など立場はさまざまですが、皆さん口を揃えてこう言います。

「航空業界では事故が起きるごとに徹底した調査が行われ、同じ原因による事故を二度と起こさないよう努力が重ねられている。その結果、飛行機の安全性は進化をとげてきた。冤罪についても、同じことをやるべきじゃないか?」

まったくその通りだと思います。ある1つの冤罪事件で無罪を勝ち取ったら“良かったね!!”で終わらせるのでなく、原因を究明して同じような過ちを繰り返さないよう対策を打つことは、とても大切です。

当ブログでも繰り返し書いてきましたが「北陵クリニック事件」の発端は、病気や抗生物質の副作用による急変を“殺人・殺人未遂事件に違いない”と警察が思い込んだことでした。そして“筋弛緩剤を使った犯行”というストーリーをデッチ上げ、准看護士だった守大助さんを犯人と決めつけて逮捕したのです。

ここ何十年もの間(いや、江戸時代以前からかもしれません)、“思い込み”と“決めつけ”によって、数え切れないほどの冤罪がつくられてきました。警察、検察、裁判所がこのことを反省して再発防止策に努めていたら、そもそも「北陵クリニック事件」などという事件は発生しなかったし、大助さんが逮捕されることもなかったでしょう。

業界をあげて事故の再発防止に取り組むのは、航空業界に限ったハナシでありません。自動車、鉄道、建設、IT、医療など他の業界でも、当たり前に行われているでしょう。むしろそれを怠ってきた日本の司法の方が、異常なのです。

◆「SBS検証プロジェクト」のような取り組みを広げよう

冤罪が起きる原因は、ほぼ2つのパターンに分けられます。

  • ①単なる「事故」を「事件」と思い込んで、架空の犯行ストーリー&犯人をデッチ上げる。=「北陵クリニック事件」など
  • ②「事件」が起きると“アイツが犯人に違いない”と決めつけ、逮捕して自白を迫る。真犯人は野放しになったまま。=「名張毒ぶどう酒事件」、「袴田事件」、「布川事件」、「和歌山カレー事件」、「飯塚事件」、「今市事件」など

ここ最近無罪判決が相次いでいる「揺さぶられっこ症候群(SBS)」も、①の典型的なパターン。2017年に研究者や弁護士によって、救済プロジェクトが立ち上げられました。

shakenbaby-review.com

個別の事件の救済だけでなく、問題を横断的にとらえて根本的な再発防止につなげようという「SBS検証プロジェクト」の試みは、とても画期的です。こうした取り組みが実を結んで、最近の相次ぐ無罪判決につながっているとしたら、本当に素晴らしいことです。

②については他にも数え切れないほどの事例がありますが、いずれの事件でも犯人にされたのは、何らかの理由で地域社会から浮いていた人でした。

無職であったり、他から引っ越してきた新参者であったり、被差別地域の住人であったり、外国人であったり…警察にも検察にも裁判所にも、マイノリティに対する差別と偏見が間違いなくあると思います。

袴田事件」の袴田巖さんも“元ボクサー=野蛮人に違いない”という偏見で、犯人にデッチ上げられたようなものです。

 ◆日本でも始まったイノセンス・プロジェクト

すでにアメリカやイギリスでは「イノセンス・プロジェクト」と呼ばれる、冤罪の根本的な原因究明&再発防止策が取り組まれています。関係者が来日した時のシンポジウムの様子を、当ブログでも紹介しました。

【98】検察に冤罪救済部門が!?『アメリカにおけるえん罪救済の最前線』 - Free大助!ノーモア冤罪!

【10】シンポジウム『えん罪を生まない捜査手法を考える』に参加して - Free大助!ノーモア冤罪!

【13】『えん罪を生まない捜査手法を考える』イギリスの取り調べは“インタビュー” - Free大助!ノーモア冤罪!

改めて読み返してみると“思い込み”と“決めつけ”によって冤罪がつくられるのは、万国共通の問題であることがわかります。この2つをいかにして捜査現場から排除できるか、元警察官や元検察官が一緒になって知恵を絞る姿には本当に感銘を受けました。

イギリスやフランスでは、死刑を執行してしまった冤罪事件が明るみになったことが、死刑廃止を後押ししたといいます。ちゃんと過ちを反省して、制度改革につなげているのです。

検察や裁判所のメンツを守るために無実の人を処刑し、意地でも再審を認めようとしない日本とは大違いです。

アジアでは台湾がいち早く「イノセンス・プロジェクト」を立ち上げ、取り組みの先端を走っています。

実は日本でも2016年4月、研究者や弁護士らによって「えん罪救済センター(イノセンス・プロジェクト・ジャパン)」が立ち上げられ、ようやく一歩を踏み出した状況です。先ほどの過去記事で紹介したシンポジウムは、いずれも同センターの主催です。

www.ipjapan.org

他にも 有志によって、ここ数年の間にいろいろな会が立ち上げられています。

●「再審法改正をめざす市民の会」(2019年設立) 

https://retrial-law.wixsite.com/mysite

●「なくせ冤罪!市民評議会」(2015年設立)

http://www.snow.jca.apc.org/

●「冤罪犠牲者の会」(2019年設立)

https://enzai.org/

●「再審・えん罪事件全国連絡会」(1973年設立=かなりの老舗です)

http://www.saishin-enzai.net/

これだけの会があると、さぞや盛り上がっていると思われるかもしれませんが、実態はまだまだ。同じ人が複数の会の役員を兼任しているケースも多く、もっと多くの人に参加して欲しいと願っています。

少しでも関心を持たれたら、ぜひ問い合わせてみてください。

もちろん警察、検察、裁判所の力も必要なのですが、残念ながら多くは期待できません。だから私たち市民が先陣を切って運動を盛り上げて、彼らが協力せざるを得ないところまで追い込むしかありません。

 

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