【16】阿部泰雄弁護士のお話② こうして大助さんは“犯人”にされた
前回に引き続き「東京の会総会」での阿部泰雄弁護士のお話です。
第2回目は、大助さんが逮捕された経緯。
このブログで過去に紹介した内容と一部重複しますが、
阿部弁護士から、より詳細に聞くことができました。
どうぞ、お読みください!
※文章は録音を基に再構成したものです。文責は「東京の会」事務局長の私にあります。
◆発端は小学生の患者さんの急変
2000年10月、
小学6年生の女の子がお母さんに連れられて、
北陵クリニックの小児科を受診しました。
激しい腹痛を起こし、嘔吐も繰り返したということです。
副院長の半田郁子先生は盲腸かもしれないので入院しなさいと。
それで吐き気止めを点滴で投与するよう指示を受けたのが、
准看護士の守大助さんでした。
そして点滴が始まって5分ぐらいすると、
女の子が“モノが二重に見える”と言い出して、
ろれつが回らない状態になりました。
夕方6時50分頃には意識がなくなり痙攣を起こし、
7時15分頃には心肺停止に。
救急隊員が駆けつけて心臓マッサージを施し、
蘇生させて仙台市立病院に搬送しました。
腹痛と嘔吐、モノが二重に見える、痙攣、
そして脳梗塞のような症状の急変…。
これは後にミトコンドリア病メラスという難病の、
典型的な症状であることが明らかになるわけですが、
(このポイントは再審請求の柱にもなっています)
当時はほとんど知られていない病気だったため、
半田先生は“神経障害と考えられる”とカルテに記しました。
◆法医学教授が“筋弛緩剤かも”と警察へ
仙台市立病院でも急変の原因が分からないまま、1ヵ月が過ぎました。
そこでクリニックの実質的経営者である、
東北大学の半田康延教授(郁子先生の旦那さん)が、
同僚の法医学教授に相談するわけです。
法医学教授は“筋弛緩剤”による犯行を疑いました。
これは1990年代に大阪愛犬家連続殺人事件というのがあって、
「サクシン」という筋弛緩剤が使われたとされています。
この事件がセンセーショナルに報道されていたため、
“筋弛緩剤”を連想したのでしょう。
そこで法医学教授は宮城県警本部に行って、
「北陵クリニックを捜査してくれ。
筋弛緩剤を使った犯罪が行われた恐れがある」と言うわけです。
これを受けた県警はすぐに特殊犯罪の捜査チームを立ち上げます。
警察は“筋弛緩剤による犯罪”と最初から決めつけ、
まっしぐらに捜査に取りかかってしまったわけです。
〜今回は以上です。
守大助さんの再審無罪獲得に向け、16年間の闘いを振り返る阿部康雄弁護士(右)。