【15】阿部泰雄弁護士のお話① “マインドコントロール”されていた大助さん
7月15日の「東京の会総会」では、阿部泰雄(あべやすお)弁護団長を招きました。阿部弁護士は、守大助さんの逮捕直後から16年間ずっと弁護を担当し、再審無罪獲得に向けて奮闘しています。
これまでの闘い、冤罪のポイント、再審への展望など、いろいろなお話を聞けたので、
何回かに分けて紹介します。第1回目は、大助さんとの出会いについてです。
どうぞ、お読みください!
※文章は録音を基に再構成したものです。文責は「東京の会」事務局長の私にあります。
◆オレはやっぱりやっていないんだ…
はじめて守大助君(以下 守君)に会ったのは、逮捕から2日後の2001年1月8日。拘留されている宮城県警・泉警察署で接見しました。守君はほとんど眠れていない様子で、“自分が(犯行を)やりました”と言っていました。
翌9日も接見して、“やったなら、どんなふうに筋弛緩剤を入れたんだ?”と質問をしても、守君はほとんど具体的に答えられない。
こうして会話を重ねるうちに“ああ、オレはやっぱりやっていないんだ…”と。守君はマインドコントロールから覚めて、そこからは完全に否認に転じたんです。
◆100日間、土日も警察署へ
5件の犯行を行ったということで1件につき20日×5件で計100日間、警察は守君の身柄を拘留しました。さらに凶悪事件ということで接見禁止にし、弁護士以外とは家族とも会えない状況に置きました。
この最初の100日間、私たち弁護団は毎日、土日も関係なく守君への接見を続けました。“警察が毎日取り調べをやるのなら、弁護士だって毎日接見してもいいだろう”というわけです。
守君は完全に否認・黙秘を貫き、警察が勝手に作った約60通の調書にも1通もサインしませんでした。
◆4年半の接見禁止
守君は起訴され、身柄を仙台拘置所に移されましたが、接見禁止は4年半にわたって続きました。その間も弁護団は接見を繰り返し、社会とのつながりを絶たれた守君に、本を差し入れたりしました。
〜今回は以上です。
実は大助さんと阿部弁護士は逮捕直後、共著で本を出しています(下の写真)。
マインドコントロールされてしまうほどの苛烈な取調べの様子が、
生々しく描かれています。現在は絶版ですが中古で購入できます。
あまりのムゴさに最後まで読み切るのは大変な労力が要りますが、
日本の取調べの実態を知るためにも、機会があったらぜひご一読ください。