Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【46】検察官こそ再審請求を!〜内田博文教授の講演録から〜

今回は「再審法」について書くと予告しましたが、ちょっと寄り道をして、また検察と再審について書きます(これも「再審法」に大いに関係あるので)。

この問題については、以前も掘り下げて書きました。

【29】何故、検察は再審開始を妨害してはダメなのか? - Free大助!

そこでは “検察は再審を妨害するのでなく、むしろ積極的に協力すべき立場にある”という問題提起をしました。実際に刑事訴訟法(第439条1項)では、こう規定されています。

 再審の請求は、左の者がこれをすることができる。

1検察官

2有罪の言渡を受けた者

3有罪の言渡を受けたものの法廷代理人及び保佐人

4有罪の言渡を受けた者が死亡し、又は心神喪失の状態に在る場合には、その配偶者、直径の親族及び兄弟姉妹

改めて驚いたのは、筆頭に挙げられているのが検察官であること。ここからも、検察が再審開始決定に抗告するなど、言語道断であることが分かります。

 では何故、検査官が再審請求を行う権利を持っているのか?私は “(本来は)公益を代表する立場だから” と、漠然とした理解しかしていなかったのですが、この疑問に明快に答えた講演録を見つけました。

内田博文・神戸学院大学教授・九州大学名誉教授が、「菊池事件」の集会でお話ししたものです。講演録のリンクを張るとともに、印象に残ったカ所を抜粋して紹介します。

http://www5b.biglobe.ne.jp/~naoko-k/why.pdf

ハンセン病差別が生んだ死刑冤罪と言われる菊池事件の概要や、内田教授の取り組み等については、ぜひ検索してみてください!#検索キーワード=内田博文、菊池事件、再審請求、検察

 以下、講演録からの抜粋です。とくに心に刺さった部分は赤字+下線にしました。

 講演タイトル「何故、再審請求を検察官に求めるのか、その意義は」

■誤判を是正する責任は誰にあるのかということです。誤判を是正する責任は冤罪被害者およびその家族にあるのでしょうか。あるとすれば、これらの人たちが再審を請求しないとすれば、司法は誤判を是正しなくてもや止むを得ないともいえます。しかし、誤判を是正する責任が冤罪被害者およびその家族にあるというのは明らかに間違っています。誤判を犯した原因は冤罪被害者およびその家族にはないからです。

 

■検察官は被疑者の意思に関係なく一方的に起訴します。裁判所も被告人の意思に関係なく一方的に判決を言渡します。刑の執行も一方的になされます。冤罪被害者およびその家族の意思は一貫して無視されます。(中略)このように一貫して無視されてきたにもかかわらず、誤判の是正、再審請求の場合にだけ、冤罪被害者およびその家族の意思を問題とする。誤判を是正するかどうかは冤罪被害者およびその家族の意思次第だというのは不公平ではないでしょうか。

 

司法が一方的に犯した誤判であるとすれば、それを是正する責任は司法の側にあると考えるのが当然ではないでしょうか。司法の側が、その責任で自ら再審を行い、自ら誤判を是正する。そして、誤判を犯したことを謝罪し、名誉回復、被害救済を図るというのが当たり前ではないでしょうか。国民主権の下では、司法にそのようにさせるのは国民の権利でもあり、責務でもあるといえます。

 

■今、いじめが大きな社会問題になっています。いじめには、加害者、被害者、そして、傍観者という構図が見られる。そして、傍観者は第三者では決してなく、明確に加害者だということがしばしば説かれています再審請求について、司法が傍観者の立場、受け身の立場を取り続けるということは、第二の人権侵害を犯すということにならないでしょうか。(中略)これを国民、市民が許すということは、国民、市民もまた人権侵害の側にくみするということを意味します。今まで眠っていた検察官による再審請求という規定を活用させるということは、司法だけでなく、国民、市民の側の権利、そして義務でもあるのではないでしょうか。

 

■問題は、このような形で検察官による再審請求という規定を活用することが法解釈論上可能かどうかです。法解釈論上は全く問題はありません。検察庁法4条は、検察官の職務について、次のように規定しているからです。

「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所の法に正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。」

 

■そして、刑事訴訟法435条6号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」があると考えた場合には再審を請求するというのも、「公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う」に該当します。それも検察官の職務なのです。有罪にすることがけが検察官の職務ではないのです。

 

刑事訴訟法が、冤罪被害者らによる再審請求とは別の、もう一つの再審請求の道の担い手をなぜ、検察官としたのでしょうか。再審を請求するにあたっては訴訟手続きや事実誤認についての専門的知識が必要不可欠で、ときには捜査に関する能力も要求される。新しい証拠を収集する必要もある。このようなことから、検察官が適任とされたものと思われます。それ故、検察官がその「再審請求権」を行使するにあたっては、「検察の利益」に目を奪われるようなことがあってはなりません。「公益の代表者」として、国民の権利を擁護し、国民の負託に応えるという観点から、これを適正かつ公正に行使しなければなりません。国民からの再審請求の要請だということを真摯に受け止め、その再審請求権を誠実に行使しなければならないことは改めて詳述するまでもありません。

 

 以上です。いかがでしょうか?冤罪をなくすことや司法を監視することは、国民の責任でもあると言われていることに私は大変共感しました。それは図らずも、このブログを立ち上げた目的に一致しています。

 内田教授は、前回紹介した「福岡事件」の再審にも携わり、本も出している。『冤罪・福岡事件 届かなかった死刑囚の無実の叫び』(現代人文社)

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【45】冤罪支援と家族の支え〜福岡事件・古川さん夫婦の活動を振り返る〜

「守大助さん東京の会」で一緒に活動しているIさんから、

嬉しい話を聴きました。

(Iさんについては、このブログの【30】【21】で紹介)

Iさんには奥さんと娘さんがいます。

2人とも冤罪などの社会問題に無関心だったのが、

急に大助さんの事件の資料を読むようになったそうです。

TVドラマ「99.9-刑事専門弁護士」の影響らしい…とのこと。

メディアの力の大きさもさることながら、

家族の理解を得ることの素晴らしさを、

改めて感じさせられました。

 

冤罪の支援活動を続けるにあたって、

家族の応援はとても大切です。

土日や休日に時間を割いて出かけるのを、

快く送り出してくれることに、

本当に感謝しなければなりません。

“身近な人の支えがあってこその活動!” 。

このことを最近、

ある夫婦の物語を読んで実感しました。

 

その夫婦とは、

僧侶の古川泰龍(たいりゅう)さん(1920〜2000年)と、

妻の美智子さん(1918〜2010年)

戦後初の死刑冤罪と言われる「福岡事件」(1947年)で、

無実を訴えながら処刑された西武雄さん(1975年執行)の雪冤に、

一心同体となって力を尽くしました。

美智子さんが遺した手記

『悲願〜「福岡事件」再審運動に捧げた生涯〜』をもとに、

駆け足になりますが2人の軌跡を紹介します。

 (福岡事件の概要や冤罪のポイントについては、ぜひ検索を!)

 

 結婚した翌年(1953年)、住職だった泰龍さんは、

福岡拘置所の死刑囚専属の教誨師になります。

そして死刑台に赴く人々と交流する中で、

無実を訴える西武雄さんと、

共犯者とされ同じく死刑が確定した石井健治郎さんに出会います。

2人を何とか助けてあげたいが、一教誨師に何ができるだろう

一家(8人家族)の生活を支えなければならない責任もある中で、

思い悩む泰龍さんの決意を後押ししたのは、

美智子さんの一言でした。

あなたが助けるほかに道はないでしょう。

あなたが立ち上がるなら、私は陰の力となって助けます

この時、美智子さんの脳裏には、

母校・東京家政学院の学院長の教え

“世のため人のため尽くせよ” が浮かんだそうです。

 

泰龍さんは福岡事件の冤罪性を世に訴えるべく、

『真相究明書』の執筆に取りかかります。

今まで宗教書が大半だった書斎の本棚は、

社会問題や裁判に関する書籍一色に。

原稿用紙2000枚以上を書き上げたものの、

印刷・出版資金がありません。

そこで泰龍さんは托鉢となって各地を回り、

お布施でお金を集めます。

法務省からは

“死刑囚を支援するなどトンデモナイ”と、

教誨師を辞めさせらますが(今も昔も法務省のやることは…(怒)

『真相究明書』300冊を刷り上げ、

法曹関係者や文化人に配布します。

 

しかし活動に没頭するほど一家の生活は火の車に。

ビールを買えず水を「鉄管ビール」と言って飲んだり、

ついにはガスや水道も止められて、

家の敷地内に沸く温泉で炊事や洗濯を賄ったり、

想像を絶するドン底生活が続きます。

それでも美智子さんはブレることなく、

お金の工面に駆け回ったり、托鉢に同行したり、

一貫して泰龍さんの活動を支えます。

口で決意を述べるのは簡単かもしれませんが、

現実的な問題もある中、

それを実行し続けたのは本当にスゴいと思います。

並大抵のことではありません。 

 

苦境にメゲず運動を続けたことで徐々に仲間が増え、

テレビや雑誌で福岡事件が取り上げられ、

1968年には「死刑囚再審特例法案」を提案。

これは神近市子議員ら超党派の有志と連携した運動で、

アメリカ占領下で起きた死刑確定事件について、

再審の機会を与えるという法案です。

半世紀も前に現在の「再審法」を先取りした運動が行われていたことに、

新鮮な驚きを感じます。

(「再審法」については後述します)

法務省の反対で(また法務省…(怒)法案の成立は見送られますが、

その代わり恩赦によって、

共犯者とされた石井さんの、

死刑→無期懲役への減刑が実現します。

そして西さんも恩赦…!と期待されましたが、

1975年6月17日、死刑が執行されてしまいます。

無実を訴えつづけてきた西さんは、

60歳で国家権力によって命を奪われました。

処刑前は遺書を書く時間も与えらなかったといいます。

石井さんは恩赦で減刑西さんは処刑…。

同じ福岡県で発生した「飯塚事件」のケースそっくりです。

(このブログ【34】で紹介しています。ぜひお読みください)

 

ちょっとハナシは逸れますが…

最終的に死刑執行のハンコを押すのは法務大臣ですが、

どの死刑囚の刑を執行するかを決めるのは「法務省刑事局」。

実質的に検察の下請け機関みたいな部署です。

このブログでは検察のことを

“司法マフィア” とか “サイコパス” と批判してきましたが、

どんな意図を以て西さんを処刑したのか…。

やはり検察の皆さんを、

同じ血の通った人間と認めることはできません。

 

話題を戻して…

西さんの処刑に意気消沈しながらも、

泰龍さんと美智子さんは、

「死後再審」に向けた取り組みを続けます。

仮釈放となった石井さんも(1989年)運動に加わり、

再審請求がくり返されますが、

2009年に第6次請求が棄却。

西さんの雪冤を果たすことなく2人は旅立ちます。 

 

現在は長男の住職・古川龍樹さんが遺志を継いでいます。

龍樹さんは幼い頃から拘置所に面会に行く両親に付いて行ったり、

“おじさん(西さん、石井さん)”が獄中で育てた小鳥をもらったり、

学生時代には托鉢に参加していたそうです。

事件発生から71年、西さんの処刑から43年、

風化させまいと活動を続けていることは、

本当にスゴいと思います。

 

龍樹さんは福岡事件を語り継ぐとともに、

有志による「再審法」の成立に向けた運動に参加しています。

刑事訴訟法で再審を請求できるのは、

「本人、親族、検察官」のみとされています。

福岡事件の場合は親族も亡くなっており、

再審請求が非常に困難な状況にあります。

そこで現行の制度を見直し、

三者にも請求権を広げようというわけです。

他にも再審開始決定に対する検察抗告の禁止など、

(このブログ【29】参照)

刑事訴訟法とは独立した再審のルールを作ろうと、

さまざまな冤罪事件の当事者や支援者、弁護団

一部の国会議員も連携した運動へと発展しています。

そして守大助さんの再審無罪を勝ち取るために、

自分も運動に参加していきたいと思っています。

次回はこの “再審法とは?” について紹介します。

 

古川美智子さんの手記。泰龍さんとともに表紙写真に収まる。

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■「再審法」成立を目指す院内集会で「福岡事件」を語る長男・龍樹さん。

 手にしているのは、西武雄さんが獄中でしたためた写経。

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【44】Are you サイコパス, KENSATSU!?

今週は、冤罪をめぐる大きな動きが2つありました。

 

■恵庭事件〜29歳だった彼女は47歳に〜

1つは3月23日、札幌地方裁判所が、

「恵庭OL殺人事件」の再審請求を棄却しました。

日弁連(日本弁護士連合会)も再審を支援している、

典型的な冤罪事件です。

(事件の詳細は、ぜひネットでググってみてください)

何が “典型的” かと言うと、

冤罪の発端が警察の “思い込み捜査” だったこと。

犯人とされた大越美奈子さんの小柄な体格・体力では、

どうやっても犯行が不可能だったり、アリバイがあったり、

明らかに無実じゃん…というポイントがたくさんあるのですが、

警察は “三角関係のモツレによる殺人” と勝手に思い込み、

犯行のストーリーをデッチ上げて逮捕。

検察も裁判所もそれを追認…。

“思い込み”が 冤罪を生む温床になっていることは、

このブログでも何度か紹介してきました(【10】ほか)。

29歳で逮捕(2000年)された大越さんは現在47歳…。

偶然にも守大助さんとほぼ一緒です。

大越さんの場合は無期懲役でなく有期刑(16年)ですが、

たくさんの楽しいコトを体験できたであろう、

30代と40代を丸々奪わるとは…?

その無念さを表現する言葉が見当たりません。

人の人生を一体何だと思っているのか!

改めて司法への憤りを感じずにいられません。

 

■大崎事件〜やはり検察は特別抗告!〜

そしてこのブログ【40】で紹介した大崎事件、

福岡高等検察庁は特別抗告してきました!

事件の概要等は前回紹介したのでくり返しませんが、

検察の異常さが改めて浮き彫りにされました

 

口では正しいことを言いながら、

ウソをついたり、約束を破ったり、人を傷つけても

全く平気な人たちを サイコパスと呼ぶそうですが、

抗告した当事者である福岡高等検察庁のHPを見ると、

そのサイコパスぶりがよくわかります。

榊原一夫検事長の挨拶部分のリンクを貼っておきます。

検事長挨拶:福岡高等検察庁

ご覧の通り、こんなことを述べています。

 

私どもの使命は、日々生起する事件について、

適正な捜査・公判活動を実施し、

事案の真相を解明して、

これに見合った国民の良識にかなう相応の処分、

相当の科刑を実施することを通じて市民生活の安全・安心を確保し、

社会経済の基盤である法秩序を維持することにあります。

 

今回の特別抗告が本当に、

適正な捜査・公判活動” でしょうか?

国民の良識にかなう相応の処分” でしょうか?

 

 そして、

次席検事の森本和明さんは抗告の理由として、

再審開始決定が法令違反である、としています。

ここまで冤罪が明らかな事案に対して、

何が法令違反なのでしょうか…

森本さんは福岡高検に来る前は、

奈良地検におられました。

その時の新聞記事のリンクと、

記事の一部を紹介します。

やまと人模様:奈良地検検事正 森本和明さん 更生、地域で支援を /奈良 - 毎日新聞

真相解明のために捜査を尽くすことを信念とし、

被害者支援に取り組む人や犯罪者の立ち直りを支える

人たちにも連携を呼び掛ける

 

ならば…今回の事案についてはたまたま、

真相解明のために捜査を尽くしてなかったのかな…

まあ、人間だから時には間違いを犯しますからね…

 

何となく取り留めなく書いて来ましたが、

検察のようなサイコパスな人たちが、

絶大な権力を握っている。

それが日本の司法の現実である、ということを、

今一度しっかり認識しておく必要があると思います。

本当に冤罪はヒトゴトじゃありません。

 

福岡高検のお二人のスクリーンショットも貼っておきます。

上=榊原検事長福岡高検HPより)

下=森本次席検事(奈良地検時代/毎日新聞より)

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【43】棄却を受けて、守大助さんメッセージ

仙台高等裁判所の暴挙を受けて、

守大助さんから全国の支援者に、

メッセージが届きました。

全文を紹介します。

 

嶋原裁判長は、

棄却というバカげた決定をしました。

4年間で三者協議は3回、

何をやっていたのでしょう。

無実の訴えを聞かない、

無実の証拠を見ない、

証拠開示・尋問しない。

いったい無実の私は!

どこに訴えればいいのですか。

特別抗告審で勝利するため、

今後も皆さん、

お力を貸して下さい。

 

一雨ごとに暖かさが増してまいります。

皆さんいかがお過ごしですか。

先日の仙台高裁が出した決定に、

何と言えばいいのか。

年度末までに出すと言われてましたが、

それが2/28と。午後3時頃ということで、

私は不当な判断が出ると思っていました。

夕刊、夕方ニュースに不当判決が出ることを、

嶋原裁判長は恐れたため、

あの時間にしたのでしょう。

3月には「袴田」「大崎」が

高裁で開始決定が出る前に本件を棄却した。

土橋鑑定はデタラメ、

土橋証言は偽証。

犯行で使用されたとされている

薬品アンプルからは!

指紋が検出されているというのに、

それが誰の指紋なのか明らかにされていない。

これらを無視して判断することが許されるなら、無実の者は救われないです。

春が来るというのに、

2018年も本当の春は来ませんでした。

絶対に許されない決定です。

皆さんが要請して下さった

「証拠開示・証人尋問」を無視した判断は‼︎

誰が考えても不公平です。

理不尽であること明白です。

最高裁で勝利するため、

私は負けずに闘います。

決定当日、全国から駆けつけて下さり感謝します。私は絶対にやっていません!

両親が元気でいる内に帰りたい。

2018年3月  無実の守大助

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【42】守大助さん再審、闘いは最高裁へ②

冤罪で一番ワルいのは何処(誰)か?

私はズサンな捜査や証拠の捏造を行う警察か、

無実の証拠を隠す検察だと思っていました。

でも冤罪と闘う当事者は、

“裁判所がワルい”と口を揃えます

守大助さんは面会で切実に訴えました。

“警察や検察は仕方ない(これも困るんですが…)。

でも裁判所はもっとシッカリして欲しい”。

 

大助さんの弁護団長・阿部泰雄弁護士も、

“裁判所さえシッカリすれば、

警察も検察もワルいコトはできなくなる”

とつぶやいていました。

 

さらに他の冤罪事件の被害者の皆さんも、

同様に語っているのを聴いたことがあります。

 

さて前回【41】の続きです。

弁護団が再審請求で主張したポイント②と③を、

仙台高等裁判所がどんな理由(屁理屈)で門前払いしたか?

その決定要旨を読んで “確かに裁判所が最悪だ” と、

私も納得できました。

 

ポイント“被害者” の病状は筋弛緩剤によるものではない

 これは5人の患者さんのうち、

今ひとつ原因が分からなかったA子さん(当時11歳)の急変は、

ミトコンドリア病」によるというもの。

『総合診療医者ドクターG』NHKでもおなじみの、

池田正行医師(元・長崎大学大学院教授/現・法務省矯正医官が、

再審請求にあたり詳細な意見書を提出しています。

ミトコンドリア病」というのはその名の通り、

細胞内の微小器官・ミトコンドリアの異常による病気。

現在は国の難病に指定されていますが、

事件のあった当時は一般的に知られていなかったため、

“原因不明の急性脳症” と診断されていました。

しかし改めてA子さんのカルテに記された一連の症状を検証すると、

(腹痛、嘔吐、視力障害、けいれん、呼吸低下、心停止など)

すべてミトコンドリア病で説明できることが明らかに。

池田先生は怒りを込めて、こう告発します。

“A子さんも北陵クリニック事件の犠牲者だ。

“筋弛緩剤中毒” という誤診を、

検察や裁判所が認めないために、

A子さんはミトコンドリア病の治療を受けられず、

15年以上も放置されている。

これは人権蹂躙以外の何者でもない!”

 

弁護団仙台高等裁判所に、

池田医師の証人尋問を行うよう、

再三にわたって要請してきました。

医療のプロの意見を聴いて判断してくれ…と、

至ってマトモお願いをしているのですが、

裁判所はこれを門前払いし続けた挙げ句に、

再審請求を棄却しました。

 

決定要旨には、棄却の理由が2つほどあげられています。

ごく簡単に説明すると…

1)A子の症状が筋弛緩剤の効果と矛盾しないことは、

 すでに東北大学大学院教授・橋本保彦の証言で明らかになっている。

2)A子の試料から筋弛緩剤の成分が検出されたという、

 客観的な事実が存在する。

よって大助さんが犯人ということで決着が付いているから、

今更再審を認める理由がない…

大体こんな感じのことを言っています。

 

1)の橋本証言とは…?

大助さんの裁判が始まったばかりの頃(一審の仙台地裁

検察サイド(つまり大助さんを犯人にデッチ上げたい側)の証人として、

橋本保彦という麻酔科の先生が、法廷でこんな証言をしました。

“A子の症状は筋弛緩剤と矛盾しないと思う” 。

それだけです。

橋本先生は筋弛緩剤の権威ではなく、

論文を発表しているワケでもなく、

ただ“自分はこう思う”と発言しただけです。

 

よくある冤罪事件のパターンとして、

医学的・化学的な証拠の攻防になると、

必ずと言っていいほど、

検察側の “御用学者” が現れて、

それらしいデタラメを述べたりします。

しかし大助さんのケースでは、

橋本先生に追従する “御用学者” は誰も出てきません。

あまりにデタラメなので、誰も引き受けないんでしょう。

 

2)の鑑定が鑑定とすら呼べないシロモノであることは、

このブログの【41】や【37】で指摘した通りです。

 

つまり裁判所は、

何ら正当な理由を示さずに、

無実を訴える大助さんの声を退けたのです。

しかも4年もかけて…。

こんな薄っぺらい棄却決定を出すのに、

何故こんなに時間がかかったのでしょうか?

その間、大助さんは4つ歳を重ねてしまいました。

一人の人間の人生を、何だと思っているのでしょうか(怒)。

 

あっそうだ…

ポイント大助さんの自白はウソを強要されたものである

はどうなったかって?

これについては、完全に無視されました。

というわけで、

裁判所がスルーした自白のメカニズムについては、

改めて書きたいと思います。

無実の人が何故、身に覚えのない罪を自白するのか?

おそらく皆さんが一番不思議に思うポイントだと思いますので。

引き続き宜しくお願いいたします。

 

棄却という仙台高裁の暴挙を受け、記者会見する弁護団

阿部泰雄弁護士(右から2人目)は“完全な開き直りの決定、

科学に対する挑戦”と決定を批判。(写真/守大助さんを守る宮城の会)

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大助さんの弁護団

 

 

【41】守大助さん再審、闘いは最高裁へ

仙台高等裁判所の再審請求棄却を受け、

3月5日、守大助さんの弁護団は、

最高裁判所に特別抗告。

闘いの舞台は東京になりました。

 

弁護団は大きく3つの争点で再審を求めてきました。

“筋弛緩剤が出た” とする警察の鑑定は誤り

“被害者” の病状は筋弛緩剤によるものではない

大助さんの自白はウソを強要されたものである

 

大阪府警科学捜査研究所(以下/科捜研)が、

5人の患者さんの試料(尿、血液、点滴液)を鑑定したら、

いずれも筋弛緩剤の成分が検出された…というもの。

当ブログで何度か指摘してきましたが、

下記のようなオカしな点があります。

 

宮城県警から大阪府警に試料を渡した際に作成したハズの

「受渡簿」が1通も提出されていない。

(刑事裁判では提出されるのが当たり前、何故出さない?)

★科捜研が試料を全量消費した…と言っている。

 患者さんによっては数百回〜数千回も鑑定できる量を

 押収した “ことになっている” にもかかわらず…。

(警察の「犯罪捜査規範」においても再鑑定が必要な場合に備えて、

 試料は残しておくよう明記=捜査のイロハをも無視したルール違反!)
★実験データ、実験ノート等も提出されていない。

(これらが添付されていない鑑定は、そもそも鑑定の体をなしていない)

 

つまり「鑑定を行ったこと」を客観的に証明するモノがないんです!

さらに…

上記のポイントに加えて弁護団が問題としているのは、

科捜研が出した鑑定結果の数値も誤っており、

信用に値するモノではない、ということです。

この鑑定論を説明し始めると複雑になるので、

ごく簡単に述べます。

 

化学の常識では、

筋弛緩剤(未変化体)の成分を

鑑定(質量分析と言います)すると、

m/z279というイオンが検出されます。

 これは万国共通の認識です。

 

しかし科捜研は…

“筋弛緩剤(未変化体)を示すm/z258が検出された”

よって筋弛緩剤の混入が認められた…と主張しています。

“未変化体”というコトバはこの際無視していただいて、

この鑑定のオカシサを上手く例えたブログがあります。

 

「「おはぎ」を鑑定した結果、きな粉が検出されたため、

 この試料は「おはぎ」と認められる」
弁護団は当然反論します。
「「おはぎ」からはあんこが検出されるべきであって、

 きな粉が検出された試料は「おはぎ」ではない」

ブログのリンクも張っておきます。ぜひ読んでみてください。

冤罪ファイル その11 「北稜クリニック事件 / 仙台筋弛緩剤えん罪事件」 - 「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

 

つまり弁護団は、

“ 根拠となる数値が間違っているのだから、科捜研の鑑定は無効”

という、ごく真っ当な主張をしているわけです。

しかし裁判所は、

“鑑定の装置や条件が異なれば、違う数値が検出されることもある。

だから鑑定は間違っていない”

というトンデモない理屈をデッチ上げて、

大助さんの無実を訴える声を門前払いにました。

 

考えてみてください。例えば…

A社の電子計算機を屋外で使ったら「1+1=2」と出た。

でもB社の電子計算機を屋内で使うと「1+1=3」と出ることもある

こんなコトを言ったら、

“バカじゃない(笑)” の一言で片付けられるでしょう。

この “バカ” を真面目に主張しているのが裁判所なのです。

 

そして恐るべきことにこのバカ鑑定が、

大助さんの有罪・無期懲役の柱となっているのです。

科捜研でこの鑑定を行ったのは、

土橋均(つしはし ひとし)という人です。

現在は大阪医科大学を経て、

名古屋大学に栄転されているようです。

今から7年ほど前には分析器メーカーのHPで、

「分析装置と向き合う心得」

なるインタビューにも答えています。

下に該当ページのリンクとスクリーンショットを張っておきます。

今回は以上です。

②と③については、また次回に説明します。

 

 ▼土橋均さんのインタビューはこちらから▼

LCtalk 81号 分析装置と付き合う心得 大阪医科大学 予防・社会医学講座 法医学教室 准教授 土橋 均先生 : 株式会社島津製作所

 

 

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【40】大崎事件、再審開始決定!だが喜ぶのはまだ早い

守大助さんの無実を訴える声が、

仙台高等裁判所に門前払いされて、

明日でちょうど2週間、

一体何から書けばいいのか…

書きたいことはたくさんあるのに、

まとまらないうちに時間ばかりが過ぎています。

 

そんな中、大崎事件の再審開始決定という、

嬉しいニュースが飛び込んできました。

事件の概要などは、各マスコミ報道や、

こちらの支援団体のHPを参照ください。

日本国民救援会

 しかし…まだ安心するわけにはいきません。

検察が最高裁に特別抗告してくる恐れがあるからです。

この問題については当ブログの【28】をご参照ください。

 

実は大崎事件は2002年に鹿児島地方裁判所が、

一度、再審開始決定を出しています。

本来はここで、無罪になるべき案件でした。

しかし検察の抗告によって取り消され、

今日に至るまで16年間、

原口アヤ子さんと弁護団は、

2度の再審請求を繰り返し、

血のにじむような闘いを強いられてきました。

そして3度目の請求でやっと再審開始が認められた現在、

90歳となった原口さんは老人ホーム暮らし。

 

 

上記のリンクをご覧いただければ分かるように、

大崎事件の冤罪は明らかです。

にも関わらず何故、

3回もの再審請求をしなければならなかったのか…?

 

検察は “目の黒いうちに再審を開かせてたまるか!” と、

亡くなるのを待っているとしか思えません。

自分たちが一度起訴して有罪を確定させたものが、

覆されるのがガマンならないのでしょう。

連中のアタマの中にあるのは、

自分たちのメンツを守ることだけ。

以前も書きましたが、

検察というのは “司法マフィア” です!

 

現在、こんなことを許してたまるかと、

冤罪被害者や弁護士などが集まって、

「再審法」を制定しようという運動が始まっています。

実は再審に関するルールというのは、

刑事訴訟法で少し触れられているだけで、

手続きがシッカリ定められているワケではないんです。

なのでそこをハッキリさせて、

“再審開始決定に対する検察の抗告の禁止” を、

ルールとして定めてしまえば良いのです。

もうこれ以上、検察の横暴を許すワケには行きません!

 

ちょっと取り留めのない内容になってしまいましたが、

大助さんについても頑張ってアップしていきますので、

これからも、どうぞお付き合いください。

 

夜中でしたが、大崎事件のドキュメントをご覧になった方もいらっしゃると思います。

再審に「格差」などあってはなりません。(番組HPよりスクリーンショット

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