Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【149】こんな時こそ、受刑者の権利を守ろう!こんなに違う台湾と日本

◆全国の刑務所・拘置所で面会禁止に

千葉刑務所の守大助さんと面会ができなくなって、1ヵ月以上になります。弁護士以外、家族も含めて面会が禁じられています。

理由は、新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため。法務省がこのように決定したため、他の刑務所や拘置所も一律同じような対応になっているといいます。

守大助さんのご家族からは「大助は元気です。安心してください」というメールが届きました。まだ詳細は確認していませんが、とりあえず一安心です。

一体いつまでこんな状況が続くのか気がかりですが、一番ツライのは塀の中の大助さんでしょう。引き続き手紙やハガキを送って励ますしかありません。

◆台湾ではハグ以外の面会はOK

私たちはこれも非常時だから仕方ないと思いがちですが、海外から見るとそうでもないようです。台湾からの留学生は、“ひどい”と驚きの声を上げています。

この学生さんから「再審・えん罪事件全国連絡会」に寄せられたメールを紹介します。この学生さんは台湾の「イノセンス・プロジェクト」(冤罪救済の取り組み)にも関わっています。

※一部「てにをは」を直しています。

コロナという理由で、家族も会えなくなるなら非常にひどいです。

コロナの影響で接見できなくなるかについて、台湾の状況を聞いてみました。

特別接見(直接接触できる接見、つまりハグしたりすることができる形)は制限されました。これに対し、一般接見(ガラス窓を通じ、通話機による面会)は通常通りできます。

当面、入る時、体温が測られ、マスクをつけるという条件なら、接見できるそうです。

 受刑者のマスク事情について、毎週1個配られるが、舎房と工場にいる時使用できず、移動するとき使用できるそうです。

 以上、今のところ聞いた情報です。

コロナという理由で、家族に一切会えなくなるなんてびっくりしました。

ハグできる「特別接見」なるものがあるとは、本当に驚きです。さすがにハグは禁止になっているものの、通常のガラス越しの面会はOK。日本とは大きな違いですね。

南アフリカの人権活動家であり、大統領にもなったネルソン・マンデラさん(1918〜2013年)の言葉を思い出しました。

 刑務所に入らずして、その国家を真に理解することはできない。
国家は、どのように上流階級の市民を扱うかではなく、どのように下流階級を扱うかで判断されるべきだ。

本当にその通り!と同意するしかありません。

法務省に要請書 

こんな状況を手をこまねいて見ているわけには行きません。「日本国民救援会」と「再審・えん罪事件全国連絡会」は、法務省宛に要請書を提出しました。

提出日は4月27日と少し前ですが、全文を紹介します。

※読みやすくするため、原文に適宜改行を入れています。

 新型コロナウイルス感染拡大の下での被告人、受刑者等の生命と健康の確保及び 基本的権利の保障(とりわけ家族、支援者の面会制限の是正処置)を求める要請書

法務大臣 森まさこ 様

矯正局長 大橋 哲 様

                    2020年4月27日

                    日本国民救援会中央本部

                    再審・えん罪事件全国連絡会

法務省は、政府の「新型コロナウイルス感染対策・緊急事態宣言」を受け、当初「宣言」の 対象区域となる38カ所の施設において、勾留されている被告人や受刑者の弁護人以外との面 会を制限しました。

報道によれば、現在13都道府県71カ所で同様の制限を行っています。 私たちの団体には、刑務所、拘置所に収監されている当事者や家族、支援者から新型コロナ ウイルス感染への不安と、面会制限によって外部交通が一方的に遮断されたことに対する抗議 の意見が寄せられています。

1、政府は、感染拡大の発生を防止するためには、いわゆる「三つの密」(密閉空間・密集場 所・密接場面)の回避が重要だとし、その徹底を呼びかけています。

刑事施設や留置施設は、「法務省新型コロナウイルス感染症対策基本的対処方針」でも指摘 しているように、「三つの密」の条件が揃った最もリスクの高い施設です。実際に、大阪拘置 所での職員の感染、東京拘置所での入所者の感染、さらには警視庁渋谷警察署で被疑者の集団 感染が報道されています。

感染防止のためには、外部と遮断するだけでは不十分であり、適切な保健医療にもとづく対策が緊急に求められています。そのような危険な状況の最中に東京拘 置所においては、未決の時はマスクの着用が認められていたにもかかわらず、既決の受刑者に なったらマスクの着用が禁止され、それに代わる感染防止の対策が示されないという、まった く感染防止とは真逆な処遇が行われている実態が報告されています。

2、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止措置を講ずる必要があることに異論はありませ ん。しかし、感染拡大防止のための合理的な限度を超えた規制により、被収容者の人権が制約 されることは許されません。

WHOは、3月15日『刑務所その他拘禁施設における新型コロナウイルスの対応、予防及 び統制に関する暫定ガイダンス』を出して、新型コロナウイルス感染拡大の防止が、「国連被 拘禁者処遇最低基準規則(ネルソンマンデラ・ルールズ)に含まれるあらゆる基本的な保障を 遵守することをないがしろにする根拠や口実として使われてはならない」と警告を発していま す。

そして、「刑務所その他拘禁施設にいる人たちは、その法的地位に基づく差別なしに、外 部の社会において適用されると同等の水準の保健医療を享受できるものでなければならない」 「家族とのコンタクト手段が、限られた期間について例外的な場合に制限される場合があると しても、完全にこれを禁止することはできない」ことも強調されています。

これを受けて、3月20日には欧州評議会の拷問防止委員会(CPT)が、この問題で「声明」 を出しました。「声明」では、「パンデミックの期間中における拘禁された人の基本的権利は、 全面的に尊重されなければならない」とし、家族などと面会制限を行うにあたっては、他のコ ミュニケーションの代替手段(電話、インターネット等)へのアクセスを増やして外部交通権 を保障することを求めています。

さらに、4月7日には拷問防止小委員会(SPT)は、締約国に対してコロナウイルス感染症 に関する具体的な対応策について「助言」を公表しました。

3、隣国の台湾や韓国では電話などによる代替手段が保障されています。例えば、台湾におい ては、特別接見(直接接触できる接見、つまりハグしたりすることができる形)は制限されま したが、ガラス窓を通じた通話機による一般面会は通常通り行われています。

面会の際には、 事前に体温が測られ、マスクをつけるという条件を遵守する場合には、接見を許可しています。 むしろ、マスクの着用は面会で条件とされて、受刑者にはマスクが毎週1個配られているそう です。

韓国では、電話による外部交通権は広く認められています。現に日本から受刑者移送条約に よって韓国に移送となった受刑者と日本の支援者が国際電話を通じての安否確認を認められ た実例もあります。

4、以上の理由により、法務大臣においては、新型コロナウイルス感染拡大に対する被告人、 受刑者等の生命と健康の確保と家族や支援者との面会制限について、下記の処置(■是正を求 める当面の緊急要請事項)をとることを強く要請します。

■是正を求める当面の緊急要請事項

1、刑事施設等の収容者とそこで働く職員の命と健康を守るために 「法務省新型コロナウイルス感染症対策基本的対処方針」では、「収容施設の特性を踏まえ た新型コロナウイルス感染症対策に係るガイドラインの策定」を行うとしています。

「ガイド ライン」の策定にあたっては、WHOや国連人権高等弁務官事務所の「暫定ガイダンス」や拷 問防止小委員会の「コロナウイルス感染症の世界的流行(COVID-19)に関する締約国および 国内防止機関に宛てた小委員会の助言」に基づいて早急に策定し、感染防止を徹底することが 必要です。

刑事施設内での感染防止を実現するためには、職員の感染防止だけでは足りず、以下にあげ る被収容者の感染防止策を直ちに行う必要があります。
①被収容者の正確な感染状況を知るうえで速やかに PCR 検査を実施すること。その検査結 果及び刑事収容施設等の感染状況を逐一公表すること。 ②全被収容者へマスクを配布し、着用を認め、促すこと。
③食事前の手洗い、定期的な施設の消毒の実施等、衛生管理を徹底すること。
④「三つの密」(密閉空間・密集場所・密接場面)の状況での刑務作業を中止すること。
⑤万一、被収容者が感染した場合は、また感染が疑われる場合は、外部の社会において適用 されると同等の水準の医療を行うこと。

2、面会制限、外部交通権の確保について

①面会制限の問題については、これまで面会が認められていた家族及び支援者など本人を支 えてきた人について、電話、インターネットなどによるアクセスを保障すること。

刑事収容施設法は、第 146 条において、一定の場合、受刑者に電話使用を認めています。 にもかかわらず種々の限定条件により、実務上はほとんど活用されていません。

面会の制 約による影響は、すべての被収容者に及ぶのですから、電話を代替手段として活用できる 機会、通話対象などを拡張すべきです。

②アクリル板越しで会話する現行の面会制度は、通常の人と人との接触形態と比較しても、 危険度がとりわけ高いとは考えられません。

事前の検温やマスク着用を義務化するなどの感染防止措置をとるならば、安全性を担保しながら面会を実施することは可能であり、そ のようにすべきです。

現に一部の施設では、弁護士との接見をテーブルの上にアクリル板 の衝立を立てて、面会を行っているとの報告もあります。 万一、感染の危険があるというなら、台湾のように事前の検温やマスク着用の上で、ア クリル板越しに通話機又はその他の感染防止措置を施した上での面会を認めることとすべ きです。

3、すべての被収容者へ感染症対策について周知徹底すること

すべての被収容者の不安を解消し、職員による感染症対策を徹底するために、現況やとら れる措置およびその影響などについて、日本語を理解しない被収容者にも周知徹底を図るために、被収容者が理解するできるだけ多くの言語に翻訳されて、配布または回覧・展示など の方法を講じることを求めます。

4、関連する省庁、裁判所との連携した取り組み

①警察の留置施設は、逮捕後の短い留置のための施設という理由で、医師が配置されておら ず医療機器もない状況で、「三つの密」が回避できていない。

現に渋谷署で留置されてい る人の集団感染が発生しており、東京拘置所でも新たな入所者の感染が確認されている。 警察庁と連携を強めて感染防止策をとるとともに、できるだけ身柄拘束をせず在宅での捜 査を行うこと。 ②検察庁はできる限り被疑者・被告人の身柄拘束の請求をやめること。裁判所が保釈を決定 した場合にはそれに従うこと。

③政府が予定している国民への給付金について、すべての収容者について確実に給付される よう総務省と調整すること。

「再審・えん罪事件全国連絡会」のHPでは、要請書のほかWHOの見解などもご覧いただけます。
www.saishin-enzai.net

千葉刑務所の門。いつも面会に行く時は、ここをくぐります。

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