Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【135】「今市事件」④勝又拓哉さんに面会してきました

◆“やっていない”という真実が、再審に向けた最大の武器になる

3月19日(木曜日)、東京拘置所の勝又拓哉さんに面会してきました。無期懲役が確定した拓哉さんは、近いうちに刑務所に収監されます。どこの刑務所になるかはまだ明らかになっていませんが、いずれにせよ、東京で面会できる機会は残り少ないということで行ってきました。

面会室のアクリル板の向こう側に現れた拓哉さんは、逮捕前の写真より少しフックラした感じ。赤いシャツに赤いスエットといういでたちで、髪は長め。陽気なお兄さんという印象でした。

アクリル板ごしに顔を合わせるなり「どうぞ座ってください」と、こちらに椅子をすすめてから、自分も席につきました。

そして “自分は(犯行を)やっていないことが最大の武器になります。だから再審を一からやり直せるんです” と、力強く決意を語ってくれました。

最高裁の上告棄却決定が出た直後はかなり落ち込んだといいますが、今は元気な様子。一刻も早い再審に向けて気持ちを前向きに切り替えたことが、会話からヒシヒシと伝わってきました。

以下、拓哉さんから聴いたことを書いてみます。拘置所は刑務所と同じく、写真撮影や録音は禁止されています。なのでこれから書くことは、私がその場で取ったメモと記憶を元にしています。

◆170通以上の激励の手紙が届いた

最高裁で上告が棄却されてから、170通以上も激励の手紙が届いた。これまで支援してくれた人はもちろん、新聞やテレビで事件を知ったという、まったくはじめての人からの便りも多かった。中には大学生や高校生もいた。

大学生は前々から事件に関心を持ち、冤罪であると確信していたので、まさか最高裁が棄却すると思わなかったと…。

高校生からの手紙もあった。彼(彼女かもしれません…性別未確認)は、東京高裁の第二審から裁判の傍聴に来てくれていたという。やはりまさかの棄却に驚いていると、励ましてくれた」

◆「布川事件」桜井昌司さんの励まし

「冤罪「布川事件」で29年の獄中生活を送った、桜井昌司さんも合いに来てくれた。

“刑務所の暮らしは規則さえ守っていれば悪くはないから、大丈夫だ” とアドバイスをくれた。刑務所は映画で観るような怖い所ではないようなので、少し安心した」

布川事件」と桜井昌司さんについては、以前こちらに書きました。

daisuke0428.hatenablog.com

daisuke0428.hatenablog.com

桜井昌司さんも、ご自身のブログに面会のことを書いています。

blog.goo.ne.jp

◆180ページの判決文をひたすら読む毎日

「今は約180ページからなる東京高裁の判決文(2018年8月)を読み込んでいる。最高裁の棄却決定も東京高裁の判決を踏襲しているので、改めて判決のオカしな点を洗い出しておきたい。

あとは看守から『六法全書』を借りて、法律の勉強もしている。拘置所では30分間の運動が許されているが、その時間も惜しんでひたすら資料を読んでいる。刑務所に行くと勉強にどのぐらい時間が取れるのかわからないので、再審請求に向けて今のうちにできることをやっておきたい」

◆8年におよぶ捜査資料がまったく開示されていない

「被害者の遺体が発見された茨城県の山林には、行ったことがない。警察が現場検証をやる時に、はじめて連れていかれた。

乗っていた車を処分したのは証拠隠滅のためでなく、車検の時期が来たから。あのまま『カリーナED』(排気量2000cc)に乗り続けるとお金がかかるので、車検を機に1500ccの三菱車に買い替えただけのこと。

それにしても警察はなぜボクを犯人にしたのか? 事件発生から逮捕に至るまでの8年間の捜査資料がまったく開示されていない。これらの証拠を警察や検察から開示させることは、再審における重要な取り組みになるだろう」

 以上が、拓哉さんから聴いたお話です。

台湾出身の拓哉さんは、日本語が不自由と聴いていました。でも実際に合ってみると、多少イントネーションにたどたどしさがあるものの、流暢に日本語を話していました。“控訴審”、“上告審”、“証拠開示” といった裁判用語も、当たり前に使いこなしていました。一生懸命に勉強したのでしょう。

それにしても、8年間の捜査資料が開示されていないことに、改めて驚きと怒りを感じました。警察が行った捜査は、とにかく疑問点だらけ。それらの検証をせず、誘導で作り上げられたデタラメの「自白映像」や「手紙」だけで、拓哉さんは有罪・無期懲役にされてしまった…。

こんなことで無実の人間が刑務所に送られてしまうという事実に、愕然とします。拓哉さんの再審がいつになるかはわかりませんが、一刻も早く実現させるしかありません。

捜査や裁判の問題点については、こちらの3本を参照ください。

【131】「今市事件」①勝又拓哉さんが無実と言える理由 - Free大助!ノーモア冤罪!

【132】「今市事件」②有罪ありきの八百長裁判 - Free大助!ノーモア冤罪!

【133】「今市事件」③ それでも“勝又拓哉が怪しい” という誤解に答える - Free大助!ノーモア冤罪!

◆東京拘置所ってこんな所

東京拘置所についても、書いておきたいと思います。昨年はカルロス・ゴーンさんが拘留されるなどニュースではよく耳にしてきましたが、私にとってはじめての訪問となりました。

最寄駅は、東武スカイツリーラインの「小菅駅」。各駅停車で北千住から1駅で到着します。駅前には小さなスーパーが1軒、周囲には喫茶店もなく住宅地が広がっています。

その中でひときわ威容を誇っているのが、拘置所の建物です。

東武スカイツリーライン小菅駅」の高架線上のホームから見える、東京拘置所。建物の周囲と内部は撮影禁止なので、写真はこの1枚だけ。

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面会で入れるのは3人まで。これは刑務所と同じです。今回は「国民救援会」のスタッフ2名と一緒に入りました。しかしいつも訪ねる千葉刑務所と違って、2000年代になって建て替えられた建物は新しく近代的です。

コンクリート打ちっぱなしの受付で手続きを行い、オレンジ色の長椅子が並ぶ病院の待合室のようなロビーで待つこと約10分。やはり病院にあるようなディスプレイに面会番号(私たちは112番でした)が表示され、“10階にお上がりください” という音声案内が流れます。そして面会棟の入口で荷物を預け、ボディチェックを受けた後に、迷路のような廊下を歩いて面会室へ向かいます。

建物内は “チリ1つ落ちていない” という表現がピッタリのクリーンな印象。窓も大きめで外の光も差し込むので、暗い雰囲気はありません。

しかしここに死刑執行場があるのは、まぎれもない事実。 2014年、袴田巖さんはここから釈放されました。2018年にはオウム真理教幹部の死刑が執行されました。近代的な明るい建物に刑場があるというギャップに、かえって不気味な印象を受けました。