Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【111】「大崎事件」再審取消の裏にある許せないハナシ

◆今度こそ本当に、日本の司法は死んだ…

やはり今回は “あのコト” について書かざるを得ません。何かというと6月25日、最高裁が「大崎事件」の再審開始決定を取り消したコトです。

これまでも裁判所がオカしな決定を出すごとに “日本の司法は死んだ” というフレーズが繰り返されてきました。もう何回死んでいるんだ…とツッコミを入れたくなりますが、今回の最高裁決定はとくに醜悪。

今度こそ本当に、日本の司法は昇天…でなく地獄の底に落ちてしまいました。

地方裁判所高等裁判所は丁寧な審理をして  “冤罪の可能性大!” との心証を持ちました。そして原口アヤ子さんが高齢なことも考慮して、これまででは考えられないスピードで再審開始を決定しました。

それを最高裁“これらを取り消さなければ著しく正義に反する” とまで述べて、無実を訴える声を門前払いしました。しかも審理に関わった5人の裁判官全員一致で…。1人も反対意見を出さなかったのは、かなりの異常事態です。

すでに決定文は、最高裁のHPに公開されています。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88759

 

今回の最高裁の決定に対しては「日弁連」「日本国民救援会」などが一斉に講義声明を出し、新聞各紙も社説で批判しています。そのひとつ「再審法改正をめざす市民の会」の抗議声明のリンクを張っておきます。

https://retrial-law.wixsite.com/mysite/blank

 

判決ののヒドさについてはこれらの声明などで述べられているので、今回は裏で暗躍した検察の蛮行・愚行について書いてみます。

◆取消決定の前日に上京していた鴨志田弁護団事務局長

「大崎事件」の再審開始が取り消されたまさに前日の6月24日。鴨志田祐美・弁護団事務局長が、最高裁に一刻も早い再審開始を要請すべく鹿児島から上京しました。

 要請終了後の報告会では主に再審を妨害する検察についてのお話を聴きましたが、その内容があまりにも衝撃的。当ブログではこれまでも再三にわたって検察を批判してきましたが、ここまでムゴいコトをするのか!と改めて憤りを覚えました。鴨志田弁護士のお話から、とくに衝撃を受けた部分を紹介します。写真の下に続きます…。

(文章は録音をもとに作成・編集していますので、文責は当方にあります)

報告会での鴨志田祐美弁護士。

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◆まさか「元号」までまたぐことになるとは

地裁・高裁が全速力でつないだ再審開始のバトンは最高裁の手にある。しかし「松橋(まつばせ)事件」の再審が確定し大崎もそろそろ…と思っていたが、最高裁は沈黙を続けている。まさか年をまたぎ、元号までまたぐことになるとは予想していなかった。

最高検察庁の「意見書」

そろそろ再審開始決定が出るか…と期待していた矢先の今年1月17日、最高検が突然「意見書」を提出してきた。その中身は、「吉田鑑定」(※)の信用性を問うものだったが、科学的・医学的根拠を無視したヒドいものだった。しかも意見書が書かれた日付は昨年の8月8日だった。

 ※吉田鑑定=被害者の死因は絞殺によるものでなく、事故死であるとする鑑定。福岡高裁宮崎支部が新証拠として認め、再審開始決定の柱になった。

◆なぜこのタイミングで「意見書」が?

昨年8月の意見書が何故1月になって出されたのか? この意見書を出したカワハラという検事(後述)は翌1月18日に法務省に異動になった。あまりにもヒドい意見書だったので出せず躊躇していたが、後から検察内で“なぜあの時、何もしなかったのか”と非難されるのを避けるために、異動前日になって慌てて出したのではないか?

「松橋事件」の特別抗告も棄却され、検察として“これ以上メンツを潰されるわけには行かない”という想いもあったのだろう。

◆コピペの文書で特別抗告を乱発する検察

「大崎事件」「湖東記念病院事件」「松橋事件」。検察が同時期に最高裁に3回もの「特別抗告」を行ったのは、前例のない異常事態。3事件の抗告文書を取り寄せて調べたところ、個々の事件に関する記述以外は大部分が同じ文書の使い回しだった。検察はコピーペーストした文書で、“脊髄反射的” に特別抗告を繰り返している。

◆“公益” でなく “庁益” の代表として再審を妨害

検察官の抗告=「再審妨害」のヒドさは、まだ社会に知られていない。本来検察は “公益の代表者” であるべきなのに “庁益の代表者” として検察庁のメンツを守ることしか考えていないのか。

これを止めさせるには法改正しかない。具体的には刑事訴訟法から、検察官の抗告を認めている「第450条」を削除するだけで良い。法改正のためには、検察がいかにヒドいことをやっているのかを多くの人に知ってもらい、世論を盛り上げることが大切だ。

 

以上です。

お話に出てきた「湖東記念病院事件」「松橋事件」については、こちらに書きました。

【104】やったぞ!!湖東記念病院事件、再審開始 - Free大助!ノーモア冤罪!

【105】「松橋事件」再審無罪、あまりにも遅すぎた春… - Free大助!ノーモア冤罪!

「大崎事件」の概要と、前回の最高裁要請の様子はこちら。

【103】沈黙の最高裁〜「大崎事件」弁護団激励行動に参加して〜 - Free大助!ノーモア冤罪!

さて、意見書を出した「カワハラ」なる検事ですが、検索してみると「川原隆司」という最高検の検事が、1月18日付で法務省大臣官房長」に、とありました。

この「大臣官房長」という役職、それなりの出世コースのようです。過去には特捜検事としてロッキード事件を担当した掘田力(つとむ)さん(現在は弁護士)などもいました。今後、川原隆司さんがどうなっていくのか、注目です!!

検察の蛮行がなかなか世の中に知られないのは、マスメディアの責任も大きいと思います。どんなに再審妨害を行っても「検察の抗告により…」とサラッとしか報道されず、その中身がいかに許せないモノであるかまでは掘り下げられません。

たとえば「袴田事件」で最高検は、袴田巖さんを “再収監しろ=死刑台に連れ戻せ” という意見書を平然と出しています。これが検察という連中の正体…。“司法試験をパスした、正義を守るエリート集団” などと、間違っても思ってはいけません。

メディアにも働きかけて、冤罪撲滅をもっと大きなムーブメントにするために「守大助さん東京の会」も頑張ります!! 

◆仮に再審が決まっても嬉しくない

最後に鴨志田弁護士は “近いうちに、原口アヤ子さんの再審開始が確定すると信じている。しかしそうなっても嬉しくない。この失われた40年をどうしてくれるのか…という憤りの方が強い” と締めくくりました。その翌日に、まさかの取消決定。

アヤ子さんが最初に再審請求(第一次)したのは1995年で、2002年に鹿児島地裁で再審開始決定を勝ち取っています。本来はそこで終わり、平穏な暮らしに戻れていたハズ。しかし検察が抗告を繰り返したため、現在まで闘いを余儀なくされています。

弁護団最高裁に提出した「上申書」には、再審請求を行った60代から90代になった現在までのアヤ子さんの写真も添付されました。1人の人間のかけがえのない時間を、検察と最高裁は一体何だと思っているのか…。

最初に再審請求を申し立てた頃の原口アヤ子さんは早口の鹿児島弁が印象的な、元気一杯な女性だったそう。現在は施設で寝たきりになりながらも、無実を訴え続けている。写真は『テレメンタリー2019/再審漂流 証拠隠しとやまぬ抗告』(テレビ朝日)よりキャプチャー。

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