【76】「司法総行動」で守大助さんの無実、訴えました。
■「司法総行動」とは?
司法は言うまでもなく、私たち市民の幸福や安全・安心を守るためのもの。裁判所、検察、警察が、好き勝手にして良いモノではありません。
10月4日に行われた「司法総行動」は「守大助さん東京の会」の母体となる人権団体・日本国民救援会、弁護士団体の自由法曹団、労働組合組織の全労連などが協力し、日本国憲法が掲げる基本的人権を守った司法の運用を行うよう裁判所、警察庁、法務省などに要請を行うという取り組み。
ちょうど20年目を迎えた今回の行動に、はじめて参加してきました。“昼に最高裁判所前に来てくれ” と言われ、何をするのか理解しないままに駆けつけたところ、宣伝カーの上に乗り、マイクを握って訴えるという大役を任されました。
以下に訴えた内容を紹介します。
北陵クリニック事件の概要についても話しましたので、事件の概要や冤罪のポイントを改めて知りたい!という方もぜひお読みください。
■守大助さんは無実!こんな捜査・裁判が許されるのか!
現在、最高裁判所では、私の知る限り7つの冤罪事件(※)が、再審無罪を求めて闘っています。
※飯塚、恵庭OL、大崎、湖東記念病院、袴田、北陵クリニック、松橋(まつばせ)事件
これだけの数の再審事件が同時に最高裁判所に係属するのは、日本の刑事司法史上、極めて異例の事態です。私はその1つである「北陵クリニック事件」の支援に携わっています。
この事件が起きたのは、今から17年前の2001年1月。宮城県仙台市にあった「北陵クリニック」という医療機関で、患者さんの急変(急に具合が悪くなること)が連続して起こり、准看護士の守大助さんが、5人の患者さんの点滴に筋弛緩剤を入れたとして逮捕されました。
そして裁判で有罪・無期懲役が確定した守大助さんは、千葉刑務所から無実を訴えて現在に至ります。この事件、そもそも筋弛緩剤は一切関係ありません。守大助さんは一滴の筋弛緩剤も入れていません。
5人の患者さんの急変の原因は、いずれも病気や抗生物質の副作用によるものです。担当医師がそのようにハッキリと証言しているのです。
しかし警察(宮城県警)は勝手に“筋弛緩剤を使った犯行”と思い込み、患者さんに接する機会の多かった守大助さんを犯人と決めつけ、逮捕しました。
“恐怖の点滴魔” “子どもやお年寄りの患者ばかりを狙った卑劣な犯行”…。守大助さんが逮捕された直後のセンセーショナルな報道を、覚えていらっしゃる方も多いと思います。
実はこの時点で、警察は患者さんのカルテさえ調べていませんでした。カルテを押収したのは、何と逮捕から10日も後でした。
つまり患者さんの急変が筋弛緩剤によるものなのか、基本的な裏付け捜査も行わず、予断と偏見だけで逮捕に至ったのです。
続いて警察は、鑑定書を提出してきました。“5人の患者の尿、血液、点滴液から筋弛緩剤の成分が検出された” というのです。
しかしこれが、とても “鑑定書” と呼べるような代物ではありません。まず、当然あるべきの実験データが添付されていません。鑑定試料を捜査班から科捜研に渡した際に作成されたハズの、「受渡簿」も提出されていません。
つまり本当に鑑定が行われたのか、客観的に証明するモノが何もないのです。これはあまりにも不自然すぎます。私はこの鑑定は、守大助さんを犯人にデッチ上げるために、警察がねつ造したものであると確信しています。
しかし裁判ではこのアヤシい鑑定が証拠の柱として採用され、守大助さんに有罪・無期懲役という判決が下されました。
逮捕当時29歳だった守大助さんは、自由を奪われたまま47歳になりました。30代から40代半ばまでの貴重な人生の時間を、このようなデタラメな司法によって奪われる…。
そして今日も、いつ出られるかわからない日々を塀の中で過ごしている。その無念さと憤りは、筆舌尽くし難いものでしょう。
■“第二・第三の守大助”は私になるかもしれない
守大助さん以外の冤罪事件も、驚くほど構図が似ています。“コイツがアヤシい” と決めつけ、思い込みで捜査を行う警察。脅迫的な取り調べによる自白強要。一旦起訴したら何としても有罪に持ち込もうと、無実の証拠を隠す検察。
そんな警察や検察の肩を持ち、無実を訴える被告人の声に耳を傾けず、十分な証拠調べも事実認定も行わずに有罪判決を下す裁判所…。
また裁判所が「再審開始決定」という英断を下しても検察が抗告し、再審無罪を勝ち取る機会が引き延ばされる例も少なくありません。
最高裁に係属している再審事件のうち大崎、湖東記念病院、松橋の3事件は、地方裁判所と高等裁判所が再審開始決定を出しながら、つまり2度もの再審開始決定を勝ち取りながら、検察の抗告によって最高裁での闘いを余儀なくされています。
また袴田事件は同じく検察の抗告によって、静岡地裁が出した「再審開始決定」が東京高裁で覆されました。検察の横暴に対して最高裁がどのような判断を下すのか?予断を辞さない局面を迎えています。
そして現在のような状況が続くかぎり、いつ私自身が、第二・第三の守大助さんにならないとも限りません。
これは私たち1人ひとりに突きつけられた問題なのです。今こそ力を結集させて草の根から最高裁判所を動かし、日本の司法を良い方向に変え、健全な国づくりにつなげましょう!
以上で訴えを終わらせていただきます。
宣伝カーの上で。視線の先には最高裁の建物。(写真:T.Yamazaki)
10月4日、