Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【10】シンポジウム『えん罪を生まない捜査手法を考える』に参加して

今回はなぜ、守大助さんが犯人にされてしまったのか?警察の捜査や取調べについて書こうと思っていましたが、予定を変更して6月18日に開催されたシンポジウム「えん罪を生まない捜査手法を考える」の様子を報告します。

とても示唆に富んだ内容で、大助さんの事件への理解を深めるために、ぜひ紹介したいと思いました。

 会場は立命館大学 大阪いばらきキャンパス。国内の法律家や研究者によって昨年発足した「えん罪救済センター」イノセンス・プロジェクト・ジャパン)の主催で、冤罪防止の取り組みにおいて日本のはるか先を行く、イギリスの研究者2人を招いて報告が行われました。

 

1人がロンドン大学のイティエル・ドロー博士(Dr. Itiel Dror)。“人は必ず間違える。たとえ捜査や科学鑑定のプロであっても”という真理を脳科学の研究から明らかにし、ロンドン警視庁やFBIなどで、冤罪を生まないための研修を行っています。

 約1時間の報告のうち、印象に残った部分を2つに絞って紹介します。共通するポイントは “人間の心はカメラではない” こと 。視覚も思考も脳に支配されており、決めつけ、思い込み、先入観といったバイアスがかかることで、白いモノも“黒く”見えてしまい、それが冤罪を生む大きな原因となっているというのです。

 

■謝った検証で死刑になった放火冤罪事件

これはアメリカであった事件。家が家事になり、3人の子どもが焼死した。ちょうど帰宅してきた父親は助けようと、燃えさかる家に入ろうとして消防隊に制止された。

当初は事件性のない事故として処理されたが、火災専門家の “これは放火だ” という意見がガラリと流れを変えた。警察は “父親が火をつけた”という先入観とともに再捜査。

時間が経ち記憶もアヤフヤになりつつある近隣の住民に、“何かアヤしいことがあったハズだ” と聞き込みに回り、父親は一転して、悲劇の主人公から“凶悪殺人犯”に。

無実を訴えるものの死刑が執行されてしまった。

そして現在、火災原因の究明技術の進化によって、この事例は放火でなく事故であることが明らかになっている…。

 

■科学鑑定は“客観”でなく“主観”に左右される

あるサンプルが容疑者のモノと一致するか、100人の科学鑑定家に実験を行った。鑑定に先立ち、うち50人には “鑑定の依頼者は検察庁” 、残り半分には “依頼者は弁護人” という事前情報を伝えたところ、前者は有罪方向、後者は無罪方向と、真逆の結果が出た。まったく同じサンプルであるにもかかわらず…。

つまりプロの鑑定家であっても、事前に仕入れた情報によって “脳が汚染” され(バイアスがかかり)、科学的・客観的な鑑定ができなくなる。

 ある事件で警察の捜査員が指紋鑑定人に充てた申し送り書も紹介されました。そこには “何としても彼を犯人にしなければならない。そのために頼れるのは、貴方(鑑定人)だ” という一文が記されていた…。

そこで現在イギリスの警察では誤認逮捕防止のため、捜査員から鑑定人ににどんな情報をもたらされたか、記録を残すようにしているということです。

 

以上です。どう感じられたでしょうか?ではドロー博士が指摘したポイントを踏まえて、大助さんが犯人にされてしまう過程を追ってみましょう。

(次回へ続く)

 

時にはユーモアを交え、軽妙な語り口で恐るべき事実を明らかにしていくドロー博士。

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