Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【159】医療関係者も激怒!! 乳腺外科医裁判、逆転有罪から2週間

◆これでは痴漢冤罪の暗黒時代に逆戻り

前回のブログで紹介した「乳腺外科医師冤罪事件」の逆転有罪から、間もなく2週間。新型コロナの脅威が続くなか、久々に何人かの冤罪支援仲間と顔を合わせました。

皆さんともに “本当に許せない判決だ!! これでは“20年前の痴漢冤罪の時代に逆戻りだ!!” と、怒りをあらわにしていました。本当にその通りだと思います。

痴漢冤罪が頻発した1990年代後半〜2000年代前半、よく裁判所はこんな理屈で有罪判決を下していました(もちろんマトモな無罪判決が出たケースもありましたが)

“被告人が痴漢行為を行ったことを証明する証拠はない(※)が、被害を訴える女性の証言が具体的かつ詳細だから、女性の言い分は信用できる”

※痴漢行為を行えば必ず検出されるはずのスカートの繊維やDNAが出ていないこと、など。

今回の逆転有罪も、まさにそうでした。警察の鑑定のデタラメさを “科学的厳密性に議論の余地がある” と認めながらも、女性の訴えが信用できるという理屈で無罪を取り消して有罪にしてしまいました。まさに、20年前の悪夢の再来です。

◆「日本医師会」会長も“体が震えるほどの怒り”

さすがにこんなコトは許しておけないと、医療関係者からも判決を批判する声が上がっています。判決から2日後の7月15日、「日本医師会」が怒りを表明しました。

準強制わいせつ罪に問われ、2020年7月13日の控訴審で懲役2年の有罪判決が出た柳原病院(東京都足立区)の非常勤外科医に対する訴訟を巡り、日本医師会会長の中川俊男氏は7月15日の会見で「体が震えるほどの怒りを覚えた。日本医師会は判決が極めて遺憾であることを明確に申し上げ、今後全力で支援する」と表明した。

(中略)

会見で副会長の今村聡氏は「科捜研のDNA判定ではデータを鉛筆で書いて消しゴムで消す、DNAの抽出液を廃棄するなど、通常の検査で考えられない方法がとられている。再現性の乏しい、ずさんと言わざるを得ない検査だ。それにもかかわらず検査の信用性を肯定する判決は世間の常識から大きく乖離している」と指摘し、「このような判決が確定することになれば、全身麻酔下での手術を安心して実施することは困難となる。医師を代表する団体として今回の有罪判決には強く抗議する」と述べた。

以上「日経メディカル」(7月16日)より引用しました。全文はこちらです。 

medical.nikkeibp.co.jp

日本医師会」は1916年に設立され、会員数は約17万2000人(2019年12月1日現在)。 2019年2月に東京地裁で無罪判決が出た直後には、この判決を支持すると表明していました。

◆「東京保険医協会」の声明

7月17日には「東京保険医協会」が声明を発表しました。

〈全文はこちら〉

www.hokeni.org

「東京保険医協会」とは主に都内の開業医が加入する団体で、会員数は5612人(2018年4月現在)。外科医師の裁判支援も行ってきました。

声明文の全文は上記リンクをご覧いただくとして、ごく簡単にまとめると以下のようなポイントを批判しています。

  • 1.問題だらけの警察科捜研の鑑定を容認した。
  • 2.医学的エビデンスにもとづいた専門医でなく、素人の証言を採用した。
  • 3.カルテに「不安言動」と書かれているものの「せん妄」と明記していないから、せん妄ではないとした。
  • 4.「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則を無視した。

そして結論として、このように述べています。少し長くなりますが引用します。

現在、世界的COVID-19の感染拡大によって、一般国民であっても会話時の飛沫の動態や、PCR検査の評価方法や、各検査間の感度や特異度の相違などの医学的基礎知識が高まり、サイエンスリテラシーやメディカルリテラシーのレベルが上がっている。そのような背景において、「検証可能性の確保が科学的厳密さの上で重要であるとしても、これがないことが直ちに本件鑑定書の証明力を減じることにはならないというべきである。」と嘯く傲慢な姿勢は、医師や医療者だけでなく一般国民からも批判を浴びている。誰が読んでも、常識から大きく乖離した冤罪判決である。

◆ストップ冤罪に党派は関係ナシ

こうして2つの医療団体が抗議の声を上げたわけですが「日本医師会」は自民党の支持母体として知られています。そして一方の「東京保険医協会」は、日本共産党と比較的親密と言われています。

党派や政治的な思想信条に関係なく、医療関係者として今回の判決には黙っていられないということでしょう。闘いは最高裁へ、医療現場の声が無罪を勝ち取る力になってほしいと願っています。もちろん冤罪支援者として、私たちも声をあげ続けます。