【146】#検察の不正義に抗議します(1)
◆日本はすでに法治国家じゃない
「検察庁法改正案」、危惧されていた今日(13日)の採決はなくなりました。
この間「#検察庁法改正案に抗議します」のツイートは、900万件を超えたといいます。野党4党(日本共産党、立件民主党、国民民主党、社民党)の党首もツイッターに動画メッセージを投稿し、反対の声を上げました。
「検察には総理大臣をも逮捕できる強力な権力が与えられている。検察の人事に内閣が干渉・介入できるようになれば、日本は法治国家でなくなってしまう」
しかし採決がなくなったことを“法治国家の秩序が守られた”とか“野党と市民が共闘した成果”などと、素直に喜ぶ気にはなれません。
真相は真逆で、こうだからです。
「検察の横暴によって、すでに日本は法治国家でなくなっている」
冤罪支援者として、言わせてください。
- 今回の「検察庁法改正案」が問題なのは、安倍政権が検察を私物化しようとしたから。
- 検察に“干渉・介入”する仕組み自体は、何らかのカタチで作らなければならない。
前回も書きましたが、検察は強大な権限を有しており、日本の司法の実質的な支配者と言っても過言でありません。
(こちらです)
【145】「週刊女性」も警告!!アベ政権の検察私物化がいよいよヤバい - Free大助!ノーモア冤罪!
強大な権限に歯止めがないゆえに検察は横暴のかぎりを尽くし、たくさんの冤罪をつくり、無実の人を苦しめてきました。
したがって検察の横暴をストップさせるためにも、何らかの方法での“干渉・介入”は絶対に必要だと、声を大にして言いたいです。
せっかく検察に注目が集まったので、これを機に検察の不正義を広く知っていただきたいと思います。
◆“公益”でなく“庁益”の代表者に墜ちた検察
「検察庁法」には、検察官は“公益の代表者”と規定されています(第4条)。
では検察官が守るべき公益とは? 冤罪という観点からは、こういうふうに言えると思います。
- 冤罪を作ってしまったら謝罪・反省し、再発防止に努める。
- 冤罪犠牲者に対する補償や名誉回復に努める。
台湾では「イノセンスプロジェクト」と呼ばれる冤罪救済プロジェクトの集会で、検事総長(=検察組織のトップ)が挨拶をしたといいます。韓国でも“公益の代表者”という、正しい使命感を持った検察官が活躍しているといいます。
(韓国の事例についてはこちら)
【141】いま、韓国がスゴい!!日本は“韓流司法改革”を見習おう - Free大助!ノーモア冤罪!
しかし日本の検察の状況は、まったく逆。検察の不正義の中でも、とくに問題なのが以下の3点です。
- ①無実の証拠を隠して裁判に出さない。
- ②裁判所が下した無罪判決に不服を申し立てる。
- ③同じく、再審開始決定に対して不服を申し立てる。
ある刑事弁護士は、検察は公益ではなく、検察庁の“庁益”の代表者になってしまった、と憤ります。
“庁益”は、“間違った正義感・使命感”と言い換えることもできると思います。具体的には、こんな感じです。
“自分たちが一度起訴した以上は、絶対に有罪にする!無罪なんて許さない! あらゆる手段を使って叩き潰す!”
これがいろいろな冤罪事件に対する、検察の対応を見てきた実感です。裁判所も検察を容認するケースが多く、日本の司法は無法地帯と化しています。
◆検察の犯罪①無実の証拠隠しとは?
『それでもボクはやってない』の周防正行監督は、映画を作るにあたって事前取材したとき、①「無実の証拠を隠して裁判に出さない」ことに大変な衝撃を受けたといいます。
事件が起きると、まずは警察が捜査を行って被疑者を逮捕します。捜査で集められた証拠はすべて検察に送られ、検察がほぼ独占して持つことになります。
(検察に送られてない証拠が警察に残っていたというケースも発覚しています)
一口に「証拠」と言っても、いろいろあります。例えば…。
- 犯行に使われた凶器
- 血液型やDNA鑑定
- 目撃証言など
検察はそれらの中から、被告人(裁判になると被疑者→被告人に呼び方が変わります)を有罪にできそうな証拠だけを選別して、裁判に提出するのです。
私たちは、裁判所はすべての証拠を見て判断した上で「有罪・無罪」の判決を出していると思いがちです。しかし実際は、そうではないのです。
これが日本の刑事裁判は有罪率99%以上というカラクリのひとつです。
実際に検察が隠していた証拠が何十年も経って明るみになって、無罪になった例もあります。
(たとえば布川事件)
【109】「布川事件」国賠勝利に想うこと - Free大助!ノーモア冤罪!
【110】明るく楽しい冤罪支援〜布川事件に学ぶ〜 - Free大助!ノーモア冤罪!
警察や検察の活動費用は、私たちの税金でまかなわれています。したがって証拠は私たち共通の財産であって、検察が独占することは決して許されません。
しかし弁護士が“証拠を出して欲しい”と要求しても“見当たらない”とか“出す必要がない”などと、拒否されるケースが後を絶ちません。
◆検察の犯罪②無実判決への不服申立てとは?
これは“控訴”“抗告”“上告”などケースによって呼び方が異なりますが、裁判所が出した無罪判決に対して“有罪にしろ!”と、言いがかりを付けることです。
こうしてせっかく勝ち取った無罪判決が有罪に覆され、無実を叫びながら刑務所への服役を余儀なくされたり例もたくさんあります。
たとえば「名張毒ぶどう酒事件」という、有名な冤罪事件があります。
1961年に三重県で起きたこの事件、1964年に「無罪判決」が出ました。しかしこれに検察が不服を申立て、1969年に「死刑判決」になってしまいました。戦後の刑事裁判で「無罪」が「死刑」に覆ったのは、この事件が唯一だといいます。
そして事件の犯人とされ、死刑囚となりながら無実を訴え続けた奥西勝さんは2015年、89歳で獄死しました。
「名張毒ぶどう酒事件」は、このブログでは一度も紹介していませんが、検索をすれば解説をしたサイトがたくさん出てきます。トンデモない冤罪であること、奥西さんは“検察に殺された”ことがお分かりいただけると思います。
このドキュメンタリー映画を観ると、事件の冤罪性がよくわかります。山本太郎さんが若き日の奥西勝さんを、仲代達矢さんが晩年の奥西さんを演じています。
ちなみに他のほとんどの先進国(日本が先進国と言えるかは微妙ですが)では、無罪判決に対する検察官の不服申立ては、法律で禁じられています。
(次回に続く)
東京、霞ヶ関にある、中央合同庁舎第6号館A棟。ここに最高検察庁、東京高等検察庁、東京地方検察庁が入っている。(写真/毎日新聞)