【130】速報「今市事件」上告棄却&抗議声明
最高裁判所(第2小法廷)は、冤罪であることが強く疑われている(というか冤罪そのもの)「今市事件(いまいちじけん)」の上告を棄却しました。
これにより、身に覚えのない女児殺しの濡れ衣を着せられ、約6年にわたって無実を訴えてきた勝又拓哉(かつまたたくや)さんの「無期懲役」が確定してしまいました。
現在、拓哉さんは東京拘置所にいますが、近いうちにどこかの刑務所(守大助さんと同じ千葉刑務所の可能性も)に移されることになります。
事件については、以前にも書きました。
【69】今市事件、裁判崩壊さらに進む - Free大助!ノーモア冤罪!
今回は取り急ぎ、支援団体の「日本国民救援会」と「勝又拓哉さんを守る会」が連名で発表した抗議声明を全文、紹介します。
【声明・今市事件】最高裁判所の不当決定に強く抗議する
2020年3月4日付で最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)は、今市事件の被告人である勝又拓哉さんが殺人罪に問われた今市事件について、上告棄却の決定をした。
私たちは、国民の常識とはかけ離れた信じがたい暴挙をした東京高裁の判断を最高裁判所が正さなかったことに強く抗議する。
今市事件は、2005年12月1日午後2時38分ころ、栃木県今市市(現在の日光市)の小学1年生の女児が行方不明となり、翌日、茨城県の山林で遺体となって発見された事件である。捜査機関は、事件発生から約8年が経過しても解決できない状態を打開する賭けに出るかのように、2014年1月29日、勝又さんの身柄の確保のため、商標法違反で別件逮捕した。商標法違反の起訴後は、身柄拘束を利用し、今市事件の取り調べをした。
勝又さんは、同年6月3日、殺人罪で再逮捕され、その後自白し、宇都宮地検は、同月24日、勝又さんが「2005年12月2日午前4時ころ」「茨城県常陸大宮市三美字泉沢1727番65所在の山林西側山道」で殺害したと訴因を特定し、殺人罪で起訴した。
2018年8月、東京高裁は勝又さんに対し、第1審裁判員裁判の「無期懲役」判決を破棄した上で、再度「無期懲役」判決を出したが、特に、次の3点において、容認できないものであった。
- 1 弁護人が提出した鑑定意見等や法医学者の証人尋問で自白と客観的事実との矛盾が明らかにされると、起訴状記載の「殺害日時・場所」では有罪認定できないことから、東京高裁は、「殺害日時・場所」の幅を広げる訴因変更を検察官に促した。東京高裁の訴訟指揮は、著しく公平性を欠くとともに、市民の常識を裁判に活かすために導入された裁判員裁判の審理を無視し、公正な裁判を受ける権利を侵害するものであった。
- 2 東京高裁は、勝又さんの犯行を否定する証拠がありながら、犯人と認定した。捜査側は、勝又さんが女児に対してわいせつ行為をしたとのストーリーを描いたが、わいせつ行為の痕跡が出てくることはなかった。女児の遺体や頭部に貼られた粘着テープからは、勝又さんのDNAは検出されず、第三者のDNAが検出された。ところが、検察側の「コンタミネーション(汚染)」とか「犯人のDNAは出ないこともある」という主張を鵜呑みにして、東京高裁は第三者の犯行可能性を否定した。
- 3 東京高裁は、勝又さんが母親に対して「自分で引き起こした事件」「めいわくをかけてしまい、本当にごめんなさい。」と書いた手紙を有罪認定の決め手とした。第1審では、「自分が引き起こした事件」が「何を指すのかは必ずしも明確とは言えず、犯人性を直接的に基礎づける事情とはなりえない」と判断していたにもかかわらず、裁判員裁判の判断を無視し「殺害を自白したもの」と断定し、有罪の決め手にした。
東京高裁は、有罪判決の決め手となった「自白」の信用性が崩れ、状況証拠のみでは有罪認定できないと判断されていたのであるから、「疑わしいときは被告人の利益に」とした刑事裁判の鉄則に基づき無罪とすべきだった。それにもかかわらず、情況証拠の証明力をかさ上げし、追加された訴因に基づき自判したのである。最高裁判所は、東京高裁の誤った判断を正さず、国民の人権と自由を守るという期待される職責を放棄した。よって、私たちは、上告棄却という不当決定をした最高裁判所に対して、強く抗議する。
2020年3月6日
えん罪今市事件・勝又拓哉さんを守る会
日本国民救援会栃木県本部
日本国民救援会中央本部
このまま黙っているワケにはいきません。最高裁に抗議のハガキもお願いします! 凄くアナログな方法ですが、裁判官に確実に届きます。
【抗議先】
最高裁第2小法廷 三浦 守裁判長
(電文例)「今市事件の不当決定に満身の怒りを込めて抗議する」
この人が三浦守です。写真の下に本人が語った「裁判官としての心構え」も紹介しておきます(最高裁HPより)。
「中立・公正の立場から紛争の適正妥当な解決を図るという司法の役割を果たすため,与えられた職務に対し,誠心誠意全力で取り組みたいと考えています。近年,社会が急速に変化する中で,社会における権利利益のあり様も複雑化し,価値観も多様化していますが,様々な視点から十分な審理・判断を行うことができるよう,自らも研鑽を積みたいと考えています。一つ一つの事件について,常に謙虚に,当事者の意見に耳を傾け,自らの良心に問いかけながら,考えを深めたいと思います。」
棄却を受けて発行された「下野(しもつけ)新聞」電子版号外。