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「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【118】「湖東記念病院事件」滋賀県警は無実をわかってて逮捕か(怒)

前回書いた「飯塚事件」。改めて関連する本や新聞記事を読んでいますが、本当に暗澹たる気持ちになっています。警察・検察・裁判所はこんな醜いことをしてまで、無実の人間の命を奪うのか!と、怒りを感じています。

このブログの “主人公” である、守大助さんの「北陵クリニック事件」についても、いろいろ書きたいことがあります。この2事件の続きについては、近いうちに改めて整理してアップします。

西山美香さんの17年は何だったのか!?

さて先週末、西山美香さんの「湖東記念病院事件」について、許せないニュースが飛び込んできました。複数のTVや新聞で報道されていますが、そのなかから「関西テレビ」のリンクを貼っておきます。

【解説】重要証拠を「隠ぺい」か?滋賀県警は西山さんの「12年の服役」に報いる「説明責任」を果たせ(関西テレビ) - Yahoo!ニュース

重要なヵ所を、引用します。

滋賀県警が殺害を否認する重要な捜査書類を、今年7月まで検察に提出していなかったことがわかりました。刑事訴訟法では捜査書類を“速やかに”検察に送ることが定められていますが、滋賀県警がこれに反して有罪立証に不利となる「消極的な証拠」を隠していた疑いがあります。

〈中略〉

裁判所の決定を受け弁護側が検察に証拠の開示を求めたところ、人工呼吸器を故意に外したことを否定する西山さんの手書きの自白調書が逮捕前につくられていたことがわかりました。
 ほかにも「男性患者はたんが詰まったことが原因で死亡した可能性がある」という医師の所見が記された捜査報告書も開示されました。どちらの書類も滋賀県警は検察に提出していませんでした。

もし、滋賀県警が速やかにこれらの書類を検察に送っていたら、起訴の判断に影響を与えたかもしれないような重要な証拠です。

要するに、患者さんが亡くなった原因は、人工呼吸器のチューブを引き抜いた人為的なものでなく、たんが詰まった自然死である可能性が高かった。それを滋賀県警は早い段階から把握していたにもかかわらず、西山さんを逮捕し強引に自白させた。しかも無実の可能性を示す証拠を、検察に送らずに隠していた!!

このブログでもつい最近 “無罪になるからと言ってハッピーエンドだと喜んでばかりいられない” と、書いたばかりでした。 

【116】「湖東記念病院事件」検察“有罪立証断念”の狙いとは? - Free大助!ノーモア冤罪!

 本当に、ハッピーエンドどころではありません。

滋賀県警は「コメントは差し控える」などと開き直っているようですが、捜査の過ちを検証して、以下の2つのポイントを明らかにしろ!と言いたいです。

  • ①なぜ「自然死」でなく「殺人事件」として捜査したのか?
  • ②なぜ、無実を示す証拠を検察に提出しなかったのか?

 とりわけ深刻なのは②です。基本に立ち返って刑事裁判の流れを簡単に説明すると、こんな感じになります。

  • Step1 警察が捜査を行い、集めた「証拠」にもとづいて容疑者を逮捕。
  • Step2 警察が集めた「証拠」は検察に提出される。

 ※「証拠」の中には、容疑者が無実(犯人でない)の可能性を示すものも含まれる。 

  • Step3 検察は「証拠」をもとに「起訴」するか「不起訴」にするかを決める。
  • Step4 「起訴」した場合、容疑者は「被告人」として裁判にかけられる。
  • Step5  裁判所は検察の「起訴内容」と「証拠」をもとに、被告人が「有罪」か「無罪」かを決める。

この5つのステップが正常に機能していれば、冤罪のリスクはかなり軽減されるハズです。しかし実際はそうなっていないため、 冤罪が多発しています。

とくに問題になのが、検察による “証拠隠し”。Step4 の段階で検察が無実の可能性を示す証拠を隠してしまい、裁判に出さないのです。これにより、本来は「無罪」となるべき事案が「有罪」になってしまうわけです。

現在の日本の刑事司法において、これを規制するルールは明文化されていません。よく “検察の手持ち証拠の全面開示を!” と叫ばれるのは、検察の証拠隠しをNGにするルールを作れ!ということを意味しています。

しかし今回明らかになった「湖東記念病院事件」のケースは、それ以前の問題です。警察から検察に提出されているべき証拠が、警察に眠っていたままになっていたのです。しかも今年の7月まで。

もしこれが最初の段階で提出されていたら、西山さんは起訴されることも、裁判にかけられることもなかったかもしれません。西山さんは23歳で逮捕され、37歳まで刑務所に収監され、現在は39歳に。この失われた時間を、滋賀県警はどう償うのか…?

 ◆重要な証拠を警察が隠しているのは“よくあること”

 一口に「証拠」と言っても、いろいろあります。

  • DNAや指紋、血液型といった科学鑑定
  • “怪しい人を見た” という目撃証言
  • 防犯カメラの映像
  • 捜査の過程をまとめた捜査報告書
  • 容疑者や関係者の供述調書など

私は刑事司法の専門家ではないので、もっと正しい分類があるかもしれませんが、大体こんなイメージで間違いないと思います。

 そして今回の「湖東記念病院事件」のように、警察から検察に証拠が提出されないケースがどのぐらいあるのでしょうか? 

調べる術がないので、具体的に “何%ぐらい” と言うことはできませんが、“かなりあるのではないか?” と述べるのは、今村核弁護士。今村弁護士は、冤罪が疑われる事件の弁護を数多く引き受け、多くの無罪判決を勝ち取ってきました。

そう活躍ぶりはNHKでも放送されたので、覚えている方も多いと思います。

www.nhk.or.jp

ちなみに 今年3月まで日本テレビで放送されたドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』も、今村弁護士がモデルになっています。

 ちょうど先週末、今村弁護士の講演を聴く機会がありました。今村弁護士が担当したなかにも、無実の証拠を警察が隠し持っていた事件があったそうです。

そして講演終了後、こうしたケースが多々あるのかを質問したところ、このように答えられました。

 多々あると思います。とくに物証なんかそうですね。保管場所がないのか、警察署に置いたままになっているというのが多々あります。

では法制的にどうなっているのかといいますと、全部の証拠を検察に送付する義務があるかという論点で、検察庁自体が全てを送付する義務があるという解釈をしていない。こうした問題があります。

どうでしょうか? 刑事訴訟法では“すみやかに”送らなければならないとされているルールが、全く守られていない。

本当に恐ろしいですね。こんなことを放置しておいたら「湖東記念病院」のような蛮行が、これからも際限なく繰り返されるでしょう。

「日常に潜む冤罪の危険」をテーマに講演する、今村核弁護士。日本国民救援会・足立支部大会にて。

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