Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【112】「大崎事件」最高裁決定に対する各団体の声明

◆4団体が一斉に抗議声明

前回に続いて「大崎事件」について書きます。

今回は最高裁の決定を受けて、4つの団体が発表した声明を見ていきます。冤罪事件の最高裁決定で、これだけの団体が一斉に抗議の声を上げるのは珍しいことだと思います。それだけ今回の決定が異常だったということでしょう。

ではどこがどう異常なのか? 各団体の声明の一部を抜粋して、読み解いてみます。

※あくまでも法律の専門家でないシロウトの解釈です。

 ●1.日本弁護士連合会(日弁連

最高裁判所第一小法廷は、検察官の特別抗告には理由がないとしたにもかかわらず、請求を棄却するという前例のない本決定を行ったのである。  

本決定は、原々審及び原審が丁寧な事実認定を行って再審開始を認めたにもかかわらず、書面審理のみで結論を覆したものであり、無辜の救済の理念や「疑わしい時は被告人の利益に」と明言した白鳥・財田川決定を骨抜きにするものと言わざるを得ない。少なくとも、最高裁判所第一小法廷は、検察官の特別抗告に理由がないとしたのであるから、再審開始決定を確定させた上で、事実認定の審理については再審公判の裁判所に委ねるべきであった。

〈私から一言〉

最高裁は、検察の特別抗告を受け入れて再審を取り消したワケではありません。むしろその逆で “抗告理由に当たらない” と退けています。そうなったら普通は、再審開始…となるハズ。実際に「松橋事件」と「湖東記念病院事件」ではこのフレーズで検察の言いがかりを一蹴し、再審開始となりました。

事実認定の審理については〜” というフレーズについて、少し解説を。基本的に “冤罪かどうか” といった事実調べは地裁・高裁で行い、最高裁は以下の2つを審理するとされています。

  • 1.憲法解釈の誤りがあるか
  • 2.法律に定められた重大な訴訟手続の違反事由があるか

ところが最高裁は、原々審(鹿児島地裁)、原審(福岡高裁宮崎支部)が丁寧に調べて “これは冤罪の可能性大だ!” と出した再審開始決定を、薄っぺらな書面審理だけで取り消しました。

その内容はというと、再審開始の柱になった法医学鑑定(吉田鑑定)を重箱の隅をツツくような屁理屈で批判しただけ…。“憲法解釈” や “重大な訴訟手続の違反” は関係ありません 。

だから日弁連は  “再審開始決定を確定させた上で、事実認定の審理については再審公判の裁判所に委ねるべきであった。” と言っているのです。まったくその通りです。

〈全文はこちら〉

日本弁護士連合会:「大崎事件」第三次再審請求棄却決定に対する会長声明

●2.日本国民救援会

警察などによって強要された「自白」が、いかに多くの冤罪を生んできたか。今回、最高裁は、吉田 鑑定を否定したうえで、共犯者とされた男性 3 人とその家族の「自白・供述」が、相互に支え合い、信 用できるとした。しかし4人の「自白・供述」は何度も変遷し、凶器とされるタオルさえ特定されず、 客観的証拠の裏付けも乏しいものである。多くの冤罪事件で、警察などの取調べによって、相互に矛盾 なく都合よく、供述が誘導されて調書が作られ、共犯者とされる「引き込み供述」の危険性に、なぜ最 高裁は目をつむるのか。

〈私から一言〉

最高裁は「吉田鑑定」を不当におとしめた以外にもうひとつ、余計なコトをやらかしました。それが共犯者とされた3人の自白を  “信用できる” と、認定したこと。

警察の苛烈な取調べによる自白は、冤罪の温床として事あるごとに指摘されてきました。しかし裁判所はその実態をスルーし “自白は具体的かつ詳細で信用できる” などというアホな理屈をこねて、冤罪を量産してきました。

この声明は、数多くの冤罪支援に取り組んできた「国民救援会」らしい指摘だと思います。最高裁の裁判官も一度警察の取調べを受けてみろ!!と、声を大にして言いたいです。

〈全文はこちら〉

日本国民救援会 ※トップページよりPDFファイルをご覧になれます。 

●3.えん罪救済センター(イノセンスプロジェクト・ジャパン)

高裁決定から本決定にいたるまでに1年余りが経過していたが、最高裁は弁護人の意見を聞く機会を設けたことすら一度もなかった。法律審たる最高裁が高裁に差し戻すこともなく、書面審理のみで請求人に有利な判断を自ら取り消すということには、手続保障の観点から重大な問題がある。

〈中略〉

再審制度は、誤って有罪を言い渡されてしまった無辜の救済のためにある。1975年の白鳥決定は「疑わしいときは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則が再審請求段階にも適用されると判示した。本決定は白鳥決定の精神とは相容れない。本決定のような判断が許されるならば、日本の刑事司法にはもはや実効的に機能する事後的なえん罪救済のシステムが存在しないということにもなりかねない。

 

〈私から一言〉

この約1年半の間、鴨志田祐美・事務局長をはじめ「大崎事件」の弁護団は鹿児島から度々足を運び、最高裁に一刻も早い再審開始決定を要請してきました。しかし最高裁の対応は常に素っ気ないモノでした。

〈その時の様子はこちら〉

【103】沈黙の最高裁〜「大崎事件」弁護団激励行動に参加して〜 - Free大助!ノーモア冤罪!

そして最高裁は本当に “弁護人の意見を聞く機会を設けたことすら一度もなく” まるで不意打ちのように無実を訴える切実な声を退けました。忙しくて聞いてるヒマなんてない…とでも言いたいのでしょうか。だったら何のための最高裁なのか? そもそもの存在理由が問われます。

“疑わしきは被告人の利益に” については、簡単ですが以前も書きました。

【36】無実の人は無罪に!〜疑わしきは被告人の利益って?〜 - Free大助!ノーモア冤罪!

最高裁は刑事裁判の大原則を自ら破りました。今回の決定をもって “日本の司法は死んだ”  と言われる理由はここにあります。本当に “司法の自殺行為” です。

海外の冤罪事情に精通した「えん罪救済センター」の目からしても、日本の司法の異常さは突出していることでしょう。

 〈全文はこちら〉

2019年7月 1日「大崎事件」最高裁決定に対する抗議声明 - えん罪救済センター

●4.再審法改正をめざす市民の会

検察の特別抗告申立てから1年3ヶ月にもわたり、病床で再審を待ちわびる原口さんの願いに冷たい沈黙で答えてきた最高裁は、そのあげくに一片の決定書で彼女の人生で最後の切実な願いを踏みにじった。裁判に対する素朴な信頼を真っ向から裏切り、司法そのものへの不信感を醸成しているのは、最高裁自身といわざるを得ない。

 これが、下級審に対し、再審を必要以上にためらわせる抑圧となることが危惧される。また検察に対しても「理由があろうとなかろうと抗告を繰り返せば最高裁が助け舟を出してくる」との誤ったメッセージを与えかねない。そのとき、危機に瀕するのが「無辜のすみやかな救済」という再審の根幹の理念にほかならない。

〈私から一言〉 

この声明のポイントは、赤字にしたヵ所に尽きると思います。裁判所はただでさえ、再審に対して消極的です。その原因として、以下のような理由があげられます。

  • 再審開始決定を出すのは、先輩裁判官が確定させた有罪を覆すので勇気がいる
  • 再審開始決定を出しても裁判官として出世にプラスにならい

まさにこうした逆境をはねのけた、勇気と良心を持った裁判官によって再審開始決定は出されるワケです。

それを今回みたいに最高裁が踏みにじったら、下級審(地裁、高裁)の裁判官はどう思うでしょうか?  “やっぱり再審なんかやってもしょうがない。や〜めた” というコトになりかねません。

〈全文はこちら〉

緊急声明 | 再審法改正をめざす市民の会

◆まとめ〜“おい、小池!”こんな裁判官、ご退場ねがいます〜

日本の刑事裁判史上、再審は長らく “開かずの門” と言われてきました。でも2010年代に入ると「足利事件」「布川事件」「東電女子社員殺人事件」「東住吉事件」「松橋事件」と、かつてないペースで再審無罪が続いています。

数々の冤罪を量産してきた日本の司法は、ようやく良い方向に動き出そうとしているのです。今回の最高裁の「大崎事件」に対する仕打ちは、こうした動きを止めようとする蛮行に他なりません。

このアホバカ決定をした裁判官は以下の5人。責任を問い、辞めさせる運動も必要だと思います。

裁判官・小池裕さんの写真と「裁判官としての心構え」も最高裁HPより拝借の上、紹介しておきます。

蛇足ながら…むかし徳島県警の指名手配ポスターで “おい、小池!” というのがあったのを思い出しました。こっちの小池さんにも、同じ言葉をかけたいと思います。

 

f:id:daisuke0428:20190704124208j:plain

f:id:daisuke0428:20190704124652p:plain

f:id:daisuke0428:20190704124710p:plain