Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【97】強姦えん罪、国賠棄却(怒)裁判所が裁判所を裁くのは無理だった…。 

■“検察も裁判所も悪くない” と開き直って国賠を棄却

ありもしない強姦の犯人とされ、再審無罪となった男性が起こしていた国家賠償請求(国賠)が、大阪地方裁判所で棄却されました。夕方のニュースで報道されたので、怒りを覚えた方も多くいらっしゃるでしょう。私も「怒怒怒怒…」です。

おさらいすると、こんな事件です。2008年、当時65歳だった男性が、同居していた14歳の少女に性的被害を与えたとして逮捕・起訴されました。少女は男性の奥さんの連れ子の子どもで、孫のような存在だったといいます。

逮捕のきっかけは “乱暴された” という、少女の被害届。男性は 一貫して無実を訴えますが、警察、検察、裁判所は “勇気を持って訴え出た少女がウソをつくハズがない” というバカの一つ覚え(冤罪量産の典型的パターン)で少女の言葉を鵜呑みにし、懲役12年の刑が確定してしまいます。

その後、成人した少女が男性の弁護人に“本当は被害を受けていない” と告白。男性は刑務所から再審請求し2015年10月、晴れて無罪に。逮捕から約7年の時間が失われていました。

今回の国賠では冤罪を作り上げた検察や裁判所の責任を問うべく、国と大阪府(後述します)賠償を求めていました。ところが大阪地裁・大島雅弘裁判長は “少女がウソの供述をする動機を見出すことは困難で、検察は通常要求される捜査を怠ったとは言えない” “裁判でも少女がウソを告白したという証拠は提出されていない” と、男性の訴えを門前払い。当時の状況で無実を信じることができなかったのは仕方ない…というわけです。

国賠棄却を伝える夕方のニュース。「報道ランナー」(関西テレビ)より。大島裁判長の心中はいかに…?

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■守大助さんのケースにソックリ!最低限の事実調べもせずに有罪

では本当に有罪は不可抗力だったのでしょうか? 再審を進める中で、驚くべき事実が明らかになりました。

・男性が逮捕された2008年の時点で、“少女は性的被害を受けていない” という産婦人科のカルテが存在していた。

・懲役12年の判決を受けた2009年の時点で、すでに少女が “被害はウソ” と打ち明けていた。

実は弁護人も早くから “カルテがあるはずだから調べて欲しい” “少女に話を聴かせて欲しい” と、裁判所に求めていました。しかし大阪高裁・湯川哲嗣(てつし)裁判長(2016年定年退官)は、これらの訴えを門前払いにして男性を有罪にしました。

どうでしょうか…守大助さんの「北陵クリニック事件」にソックリです。このブログでも繰り返し書いてきましたが、カルテを調べれば、医師に聞き取りを行えば、大助さんの無実はスグ明らかになるでしょう。しかし裁判所は事実調べをカタクナに拒み、大助さんを無期懲役囚として刑務所に閉じ込め続けています。

これが日本の裁判の現実です。

ちなみに湯川哲嗣・元裁判長、発売中の雑誌『冤罪File』に登場しています。驚かれるかもしれませんが、冤罪の専門誌があるのです。誌面では本人に直撃インタビューを試みていますが “ノーコメント” を連発して逃げ回っています。これがその写真です。

冤罪File』2018年冬号・82ページより。この人、ウィキペディアにも出てきます。裁判官を退いた後、国の勲章のひとつである瑞宝重光章」を受章したらしいです。冤罪FIle』の購入は写真下のリンクから!!

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■冤罪を作った警察、検察、裁判所に懺悔させる仕組みづくりを

今回の件で改めて考えさせられるのが、国賠制度そのものの在り方。公正中立なんてタテマエ。そもそも裁判所が裁判所自身や、同じ国の機関である検察を裁くなど無理なハナシです。国賠を提起する先が裁判所という制度自体、見直さなければなりません。

そして先ほども書きましたが “国と大阪府を相手に賠償を求める” って、ヘンじゃありませんか? 裁判所や検察の責任を問うのに、なぜ国や自治体が相手なのか…? それに “国” って誰のことを指すのか?

要するに警察、検察、裁判所は責任を取らなくて良い仕組みになっているのです。萎縮して職務遂行できなくなるのを防ぐため、個人は免責されるという理屈らしいです。これではイイカゲンな捜査も裁判も野放しし放題、冤罪がなくなるハズありません。

もし一般企業で手抜き仕事をして事故や損失を出したら、その担当者は当然ペナルティを受けるでしょう。しかし刑事司法の世界では、このアタリマエが通用しないようです。

いろいろな冤罪の例を見聞きしても、無実の可能性も含めて証拠を精査して、あらゆる角度から審理を尽くして…それでも無実の人を誤って罰してしまった…という例はほとんどありません。

予断と偏見で最初から犯人と決め付け、基本的な裏付け捜査も事実調べも行わず、強引に自白を迫り、時にはウソの証拠をデッチ上げて無実の人を陥れる、というのが冤罪の現実です。

布川事件」で29年を獄中で過ごし、再審無罪を勝ち取った桜井昌司さんは “冤罪を作り上げた当事者に責任を取らせる制度づくりが必要” と言います。

足利事件」で17年を獄中で過ごし、同じく再審無罪となった菅家利和さんも “自分を冤罪に陥れた挙げ句、無実が明らかになっても謝らない刑事を絶対に許せない” と怒りを込めて訴えます。

やはり冤罪救済の第三者機関が必要です。そして冤罪被害を受けた人々への補償費用は湯川哲嗣・元裁判長のような人たちの財産を没収して充てるべきでしょう。(了)