【92】袴田事件・袴田巖さんの再収監を許さないアピール(全文紹介)
12月12日に国会前で行われた「袴田巖さんの再収監を許さないアピール」。
声明文も発表されましたので、全文を紹介します。
「袴田事件」は、1966年に静岡県で一家4人が殺害され、元プロボクサーの袴田巖さん(82歳)の死刑判決がいったん確定した事件です。袴田さんは裁判で一貫して無実を主張しましたが、受け入れられませんでした。
それが2014年3月、静岡地方裁判所は「再審(裁判のやり直し)開始」を認め、袴田さんは約48年ぶりに拘置所から釈放されました。再審開始決定は「無罪」が前提で、決定文には「これ以上の身柄拘束は、耐えがたいほど正義に反する」とまで記されています。
ところが、再審開始決定に対する検察の不服申し立てを受けた東京高等裁判所は、2018年6月、静岡地裁の決定を180度転換し、再審開始決定を取り消しました。つまり、袴田さんには「死刑」が相当だというのです。
わずか4年の間に「無罪」と「死刑」の相反する判断が下される異常事態です。袴田さんの弁護団は、最高裁判所に対して不服申し立てを行い、再審開始を認めるよう求めています。
静岡地裁の決定を覆した東京高裁は、袴田さんをあらためて拘置所に収容すること(再収監)までは認めませんでした。しかし、検察は袴田さんの再収監を認めるよう、最高裁に強く求めています。最高裁の判断によっては、袴田さんはいつ拘置所に逆戻りさせられてもおかしくない、とても危険な状況に置かれています。
注意しなければならないのは、袴田さんが再収監されるということは、死刑の執行を前提とするということです。一度は無罪を前提に釈放された人間が、わずか4年後に「お前はやはり死刑だ」と再収監されるなどということが許されてよいのでしょうか。
もし、そんなことが現実に起これば、弁護団も訴えているとおり、「世界にも例を見ない前近代的、非人道的な事態」です。人命を弄ぶにも等しい行為であり、最高裁だけでなく司法全体に対する国民の信頼を著しく失墜させるに違いありません。
袴田巖さんは無実です。絶対に袴田さんを再収監させないよう、私たちは最高裁をはじめとする司法機関だけでなく、他の関係諸機関にも強く求めていきます。多くの皆様からの賛同を心からお願いします。
Free HAKAMADA!
2018年12月12日
≪呼びかけ人≫(五十音順)
赤堀政夫(島田事件・冤罪被害者) 青木惠子(東住吉事件・冤罪被害者)
纐纈あや(映画監督) 李政美(ミュージシャン)
宇井眞紀子(フォトグラファー) 太田昌国(民族問題研究・編集者)
金聖雄(映画監督) きむきがん(劇団石(トル))
神谷広志(将棋棋士8段) 河野“菌ちゃん”俊二(ミュージシャン)
小室等(ミュージシャン) こむろゆい(ミュージシャン)
陣内直行(プロデューサー) 谷川賢作(ミュージシャン)
ダースレイダー(ラッパー) 趙 博(ミュージシャン)
豊田直巳(フォトジャーナリスト) 中川五郎(ミュージシャン)
新田渉世(日本プロボクシング協会袴田巖支援委員会委員長)
朴 保(ミュージシャン) 松山千春(ミュージシャン)
松元ヒロ(コメディアン) 南椌椌(絵本作家)
免田榮・玉枝(免田事件・冤罪被害者) 森達也(映画監督・作家)
吉村喜彦(作家) 輪島功一(元世界ジュニアミドル級王者)
渡辺均(日本プロボクシング協会協会長)
プロボクサーとして活躍していた頃の袴田巖さん。右は1961年のフィリピン遠征時と言われている。写真は支援団体HPなどより。