Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【85】守大助さんの父・勝男さんの訴え

守大助さんのお父さん・守勝男さんは、大助さんが逮捕された2001年1月当時、宮城県警の警部補で交通捜査を担当していました。つまり大助さんは、お父さんの勤め先に捕まったのです(交通部と捜査部、所属部署は異なりますが)。勝男さんは息子の無実を信じ、定年まで5年残っていた勤めを全うしました。

当初は確固たる証拠を基に逮捕が行われたと思っていた、という勝男さん。しかし自分なりに関係者を訪ね歩いて情報を集めるにつれて、疑問を抱くようになったと言います。

“一体何を根拠に息子を逮捕したのか?” と捜査幹部を問いつめたところ、“新聞を見ていただければわかるでしょう。最終的には裁判所が判断することです”。と、真摯に捜査に取り組んでいるとは思えない答えが帰ってきたそうです。

 このブログでも度々書いてきましたが、実際に宮城県警の捜査は “真摯” とは程遠いものでした。少し長くなりますが、今一度経過を振り返ってみます。

発端は大助さんが勤務する北陵クリニックで、

患者さんの急変(急に具合が悪くなること)が急増したことでした。1999年までは年間10件程度だったのが、2000年には19件発生しています。

大助さんが准看護士として、クリニックで働きはじめたのは99年の2月。家庭を持つ女性が多かった看護チームの中で、独身で時間の融通が効き、患者さんの評判も良く、医師にも信頼されていた大助さんは夜勤も積極的に引き受け、必然的に点滴などに従事する機会が多くなりました。

事件発生当時マスメディアは、“急変の現場には、必ずと言ってよいほど守大助がいた”などと報じましたが、背景となる事実を無視し、印象だけに頼った悪質な報道としか言いようがありません。

急変が増えた原因もハッキリしています。当時クリニックはウリにしていたFESという先端医療が暗礁に乗り上げ、(FESについては機会があったら改めて書きます)14億円近い負債を抱えていました。リストラによって、薬剤師や救急措置ができる医師も退職していました。

クリニックは赤字を少しでも緩和するため、19床あったベッドを常に満杯にしようと、なりふり構わず患者さんを受け入れ始めます。老人ホームからの終末期の患者さんも多かったといいます。

マトモな医療行為ができない状況で具合の悪い患者さんを受け入れれば、急変が多発するのはアタリマエです。急変の原因も病気や抗生物質の副作用によるものと、担当医師がカルテに明記しています。筋弛緩剤など、まったく関係していないのです。

大助さんが筋弛緩剤を投与した “とされている” 患者さんの1人(45歳の男性)を担当した医師は、テレビ番組のインタビューで、このように答えています。

「急変の原因はミノマイシン抗生物質の一種)の副作用だと、いくら説明しても、警察・検察は“いや、筋弛緩剤だ” の一点張りで、自分の意見を全く聞き入れようとしなかった」

真っ先に尊重すべき専門医の言葉を無視してまで、“守大助=筋弛緩剤の犯人” という結論ありきで捜査していた様子が伺い知れます。

ただし1人だけ、急変の原因がハッキリしない患者さんがいました。2000年10月に緊急入院した、当時小学校6年生のA子さんです。

A子さんは学校で突然気分が悪くなり、腹痛と嘔吐がひどくなったためクリニックを受診。大助さんが立ち会って点滴を始めた5分後ぐらいから、モノが二重に見える、呂律が回らないといった症状が現れ、30分後には意識レベルが低下し心肺停止に。急性脳症により、18年を経た現在も意識が戻らない状態が続いています。

 

現在は急性脳症の正体が「ミトコンドリア病メラス」という難病であることが、ほぼ明らかになっています(国の難病にも指定されています)

しかし2001年当時はこの病気に関する情報がほとんどなく、クリニックでも後に搬送された仙台市立病院でも、原因を突き止められませんでした。

“原因不明の急変があった”。

北陵クリニックのオーナー・半田康延・東北大学教授は、同僚の舟山眞人・法医学教授に相談します。この数年前「大阪愛犬家連続殺人事件」という、筋弛緩剤を使った事件がマスメディアを賑わせました。

 “北陵クリニックでも、筋弛緩剤を使った犯行が行われてるとしたら…”勝手に想像した舟山教授は、宮城県警に報告します。

 “それは大変だ! 点滴に立ち会っていた守大助という准看護師がアヤシイ!奴が犯人に違いない!”と、色めき立った県警は2001年1月6日、大助さんを逮捕。患者さんのカルテを押収したのは、それから10日も後でした。 

舟山教授は決して悪くありません。

警察に情報提供するのは法医学教授として当然です。やはり悪いのは宮城県警。本来ならばまずカルテを取り寄せ、医師に聞き取りを行って、本当に筋弛緩剤による犯罪なのか裏を取る所から始めるのが基本中の基本でしょう。そんな基本的な裏付け捜査さえ行わず逮捕に至った県警の、明らかな “捜査過誤” です。

さらに県警は逮捕をマスコミに大々的に発表。

A子さん以外の急変も次々に大助さんによる犯行と決め付け、連続点滴事件をデッチ上げます。

マスメディアも問題アリです。プロの記者なら、冷静に調べれば県警の発表がアヤシイことはわかるはず…。

にもかかわらず、朝日新聞を筆頭とするマスメディアは県警のリークを鵜呑みにし、センセーショナルな報道合戦が始まります。

ここまで来たら、もう後戻りできません。

自分たちのメンツを守るためにも、守大助=犯人という既成事実をデッチ上げて突っ走るしかありません。

「北陵クリニック事件」というのは、暴走警察と無能なマスメディアが合作で作り上げた、幻の事件だったのです。続いて、守大助さんが受けた取り調べについて書いてみます。

〈次回へ続く〉

10月29日の支援者会議で訴える守勝男さん。右はお母さんの祐子さん。

ヘタな写真で恐縮です。

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