【42】守大助さん再審、闘いは最高裁へ②
冤罪で一番ワルいのは何処(誰)か?
私はズサンな捜査や証拠の捏造を行う警察か、
無実の証拠を隠す検察だと思っていました。
でも冤罪と闘う当事者は、
“裁判所がワルい”と口を揃えます。
守大助さんは面会で切実に訴えました。
“警察や検察は仕方ない(これも困るんですが…)。
でも裁判所はもっとシッカリして欲しい”。
大助さんの弁護団長・阿部泰雄弁護士も、
“裁判所さえシッカリすれば、
警察も検察もワルいコトはできなくなる”
とつぶやいていました。
さらに他の冤罪事件の被害者の皆さんも、
同様に語っているのを聴いたことがあります。
さて前回【41】の続きです。
弁護団が再審請求で主張したポイント②と③を、
仙台高等裁判所がどんな理由(屁理屈)で門前払いしたか?
その決定要旨を読んで “確かに裁判所が最悪だ” と、
私も納得できました。
ポイント②“被害者” の病状は筋弛緩剤によるものではない
これは5人の患者さんのうち、
今ひとつ原因が分からなかったA子さん(当時11歳)の急変は、
「ミトコンドリア病」によるというもの。
『総合診療医者ドクターG』(NHK)でもおなじみの、
池田正行医師(元・長崎大学大学院教授/現・法務省矯正医官)が、
再審請求にあたり詳細な意見書を提出しています。
「ミトコンドリア病」というのはその名の通り、
細胞内の微小器官・ミトコンドリアの異常による病気。
現在は国の難病に指定されていますが、
事件のあった当時は一般的に知られていなかったため、
“原因不明の急性脳症” と診断されていました。
しかし改めてA子さんのカルテに記された一連の症状を検証すると、
(腹痛、嘔吐、視力障害、けいれん、呼吸低下、心停止など)
すべてミトコンドリア病で説明できることが明らかに。
池田先生は怒りを込めて、こう告発します。
“A子さんも北陵クリニック事件の犠牲者だ。
“筋弛緩剤中毒” という誤診を、
検察や裁判所が認めないために、
A子さんはミトコンドリア病の治療を受けられず、
15年以上も放置されている。
これは人権蹂躙以外の何者でもない!”
池田医師の証人尋問を行うよう、
再三にわたって要請してきました。
医療のプロの意見を聴いて判断してくれ…と、
至ってマトモお願いをしているのですが、
裁判所はこれを門前払いし続けた挙げ句に、
再審請求を棄却しました。
決定要旨には、棄却の理由が2つほどあげられています。
ごく簡単に説明すると…
1)A子の症状が筋弛緩剤の効果と矛盾しないことは、
すでに東北大学大学院教授・橋本保彦の証言で明らかになっている。
2)A子の試料から筋弛緩剤の成分が検出されたという、
客観的な事実が存在する。
よって大助さんが犯人ということで決着が付いているから、
今更再審を認める理由がない…
大体こんな感じのことを言っています。
1)の橋本証言とは…?
大助さんの裁判が始まったばかりの頃(一審の仙台地裁)、
検察サイド(つまり大助さんを犯人にデッチ上げたい側)の証人として、
橋本保彦という麻酔科の先生が、法廷でこんな証言をしました。
“A子の症状は筋弛緩剤と矛盾しないと思う” 。
それだけです。
橋本先生は筋弛緩剤の権威ではなく、
論文を発表しているワケでもなく、
ただ“自分はこう思う”と発言しただけです。
よくある冤罪事件のパターンとして、
医学的・化学的な証拠の攻防になると、
必ずと言っていいほど、
検察側の “御用学者” が現れて、
それらしいデタラメを述べたりします。
しかし大助さんのケースでは、
橋本先生に追従する “御用学者” は誰も出てきません。
あまりにデタラメなので、誰も引き受けないんでしょう。
2)の鑑定が鑑定とすら呼べないシロモノであることは、
このブログの【41】や【37】で指摘した通りです。
つまり裁判所は、
何ら正当な理由を示さずに、
無実を訴える大助さんの声を退けたのです。
しかも4年もかけて…。
こんな薄っぺらい棄却決定を出すのに、
何故こんなに時間がかかったのでしょうか?
その間、大助さんは4つ歳を重ねてしまいました。
一人の人間の人生を、何だと思っているのでしょうか(怒)。
あっそうだ…
ポイント③大助さんの自白はウソを強要されたものである
はどうなったかって?
これについては、完全に無視されました。
というわけで、
裁判所がスルーした自白のメカニズムについては、
改めて書きたいと思います。
無実の人が何故、身に覚えのない罪を自白するのか?
おそらく皆さんが一番不思議に思うポイントだと思いますので。
引き続き宜しくお願いいたします。
棄却という仙台高裁の暴挙を受け、記者会見する弁護団。
阿部泰雄弁護士(右から2人目)は“完全な開き直りの決定、
科学に対する挑戦”と決定を批判。(写真/守大助さんを守る宮城の会)
大助さんの弁護団は