【41】守大助さん再審、闘いは最高裁へ
仙台高等裁判所の再審請求棄却を受け、
3月5日、守大助さんの弁護団は、
最高裁判所に特別抗告。
闘いの舞台は東京になりました。
弁護団は大きく3つの争点で再審を求めてきました。
① “筋弛緩剤が出た” とする警察の鑑定は誤り
② “被害者” の病状は筋弛緩剤によるものではない
③大助さんの自白はウソを強要されたものである
5人の患者さんの試料(尿、血液、点滴液)を鑑定したら、
いずれも筋弛緩剤の成分が検出された…というもの。
当ブログで何度か指摘してきましたが、
下記のようなオカしな点があります。
「受渡簿」が1通も提出されていない。
(刑事裁判では提出されるのが当たり前、何故出さない?)
★科捜研が試料を全量消費した…と言っている。
患者さんによっては数百回〜数千回も鑑定できる量を
押収した “ことになっている” にもかかわらず…。
(警察の「犯罪捜査規範」においても再鑑定が必要な場合に備えて、
試料は残しておくよう明記=捜査のイロハをも無視したルール違反!)
★実験データ、実験ノート等も提出されていない。
(これらが添付されていない鑑定は、そもそも鑑定の体をなしていない)
つまり「鑑定を行ったこと」を客観的に証明するモノがないんです!
さらに…
科捜研が出した鑑定結果の数値も誤っており、
信用に値するモノではない、ということです。
この鑑定論を説明し始めると複雑になるので、
ごく簡単に述べます。
化学の常識では、
筋弛緩剤(未変化体)の成分を
鑑定(質量分析と言います)すると、
m/z279というイオンが検出されます。
これは万国共通の認識です。
しかし科捜研は…
“筋弛緩剤(未変化体)を示すm/z258が検出された”
よって筋弛緩剤の混入が認められた…と主張しています。
“未変化体”というコトバはこの際無視していただいて、
この鑑定のオカシサを上手く例えたブログがあります。
「「おはぎ」を鑑定した結果、きな粉が検出されたため、
この試料は「おはぎ」と認められる」
弁護団は当然反論します。
「「おはぎ」からはあんこが検出されるべきであって、
きな粉が検出された試料は「おはぎ」ではない」
ブログのリンクも張っておきます。ぜひ読んでみてください。
冤罪ファイル その11 「北稜クリニック事件 / 仙台筋弛緩剤えん罪事件」 - 「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン
つまり弁護団は、
“ 根拠となる数値が間違っているのだから、科捜研の鑑定は無効”
という、ごく真っ当な主張をしているわけです。
しかし裁判所は、
“鑑定の装置や条件が異なれば、違う数値が検出されることもある。
だから鑑定は間違っていない”
というトンデモない理屈をデッチ上げて、
大助さんの無実を訴える声を門前払いにました。
考えてみてください。例えば…
A社の電子計算機を屋外で使ったら「1+1=2」と出た。
でもB社の電子計算機を屋内で使うと「1+1=3」と出ることもある。
こんなコトを言ったら、
“バカじゃない(笑)” の一言で片付けられるでしょう。
この “バカ” を真面目に主張しているのが裁判所なのです。
そして恐るべきことにこのバカ鑑定が、
大助さんの有罪・無期懲役の柱となっているのです。
科捜研でこの鑑定を行ったのは、
土橋均(つしはし ひとし)という人です。
現在は大阪医科大学を経て、
名古屋大学に栄転されているようです。
今から7年ほど前には分析器メーカーのHPで、
「分析装置と向き合う心得」
なるインタビューにも答えています。
下に該当ページのリンクとスクリーンショットを張っておきます。
今回は以上です。
②と③については、また次回に説明します。
▼土橋均さんのインタビューはこちらから▼
LCtalk 81号 分析装置と付き合う心得 大阪医科大学 予防・社会医学講座 法医学教室 准教授 土橋 均先生 : 株式会社島津製作所