Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【164】「袴田事件」クラウドファンディング&8.22WEBセミナー

◆54年前の今日、袴田巖さんは自由を奪われました

今から54年前の1966年8月18日、袴田巖さんが逮捕されました。暑い盛りの中、連日10時間を超える拷問のような取調べを受けた袴田さんは、やってもいない強盗殺人を自白させられてしまいます。

現在、袴田さんの弁護団は何としても再審・無罪を勝ち取るために、そして拘置所への再収監を許さないために、最高裁で闘っています。

絶対に負けられない闘いを支援するため、クラウドファンディングも立ち上がりました。目標額は1000万円、ぜひご協力ください!!

readyfor.jp

◆要請には相変わらずダンマリの最高裁

今日の昼には、最高裁への要請を実施。「袴田巖さんの再審を求める会」、「日本国民救援会」、「日本プロボクシング協会」から、有志が参加しました。

通常要請に入れる人数は17人ですが、新型コロナ感染対策のため今回は10人に制限。私もギリギリ入ることができました。袴田さんの審理を行っているのは「第三小法廷」。昨年11月に、守大助さんの再審請求を棄却した同じ法廷です。これは二度とオカしな決定を出させないよう、念を押さなければなりません。

入口で手指を消毒し、ロッカーに荷物をあずけ、迷路のような通路を通って案内された会議室では、1人の男性事務職員が対応してくれました。

2377筆の署名を渡し、1人一人が熱のこもった要請を行いましたが、職員はニコニコしながらメモを取るだけ。担当の調査官は誰なのか? 審理の進捗状況はどうなっているのか? といった質問にはノーコメントを貫きました。対応は相変わらずの最高裁クオリティです。

最高裁の対応について感じたことは、こちらに詳しく書きました)

【129】“回答は差し控えます” 絶望の最高裁判所 - Free大助!ノーモア冤罪!

【103】沈黙の最高裁〜「大崎事件」弁護団激励行動に参加して〜 - Free大助!ノーモア冤罪!

しかしだからと言って、私たちがあきらめて沈黙してしまったら、日本の司法はもっと悪くなるでしょう。とにかく声を上げ続けるしかありません。

ちなみに最高裁要請と同じ時間帯に、地元の静岡でも宣伝や静岡県警への抗議活動が行われました。

要請に先立ち、最高裁前でマイクを持って宣伝活動も行いました。

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 ◆土曜日はウェブセミナーで、もっと袴田事件を知ってください

今週末には、ウェブセミナーも予定されています。Youtubeにアクセスしてどなたでもご覧いただけます。 

 

【第3回WEBセミナー】事件から54年―再審法を改正して無実の死刑囚・袴田巖
さんを救おう
■お話し
 袴田秀子さん(巖さん実姉)
 小川秀世弁護士(再審弁護団事務局長)
■8月22日(土)14時から15時半
■アクセス
https://youtu.be/9o9I1kAohW0
YoutubeライブによるWEBセミナーです。


秀子さんはもちろん、小川秀世弁護士の出演もとても楽しみです。袴田さんが釈放される前年の2013年、あるシンポジウムで小川弁護士の講演を聴いたことがあります。情熱の塊のような弁護士さんという印象で、袴田さんをデッチ上げた警察や検察に対して、心から憤っている様子がストレートに伝わってきました。

ぜひアクセスして、ご視聴ください!!

 このセミナーは「再審法改正をめざす市民の会」第3回目のウェブセミナーとして行われます。終了した第1回目、第2回目も、下記からご覧いただけます。

(第1回目の「湖東記念病院事件」はこちら)

https://www.youtube.com/watch?v=BSSYaMe80So

(第2回目の「大崎事件」はこちら)

https://www.youtube.com/watch?v=RVPwShcTS1w

 

ウェブセミナー告知のスクリーンショット。袴田秀子さんの顔にリマインダーが掛かってしまっています。申し訳ございません…。

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【163】冤罪を生まないために医療現場ができること(おこがましいタイトルですが…)

◆「あずみの里」無罪確定&「乳腺外科医師」の闘いは最高裁

先日このブログでも紹介した「あずみの里業務上過失致死事件」の逆転無罪判決。

【160】良かった!!「あずみの里」逆転無罪 - Free大助!ノーモア冤罪!

昨日(8月11日)、検察は最高裁への上告を断念しました。これにより、晴れて無罪が確定することになります。本当に良かった!!と思います。

にしても、こうしたニュースを耳にするたびに “検察が断念” という表現がひっかかります。“断念” には “不本意ながら” というニュアンスが含まれます。辞書で 調べても、このように書かれています。

自分の希望などを、きっぱりとあきらめること。(例)「進学を断念する」(goo辞書より)

本来であれば検察は進んで謝罪をし、二度と同じ過ちを繰り返さないよう反省すべき。しかしやはり “断念” というのが本音でしょう。  検察の在り方を正すのは、まだまだ時間がかかりそうです。

一方の「乳腺外科医師冤罪事件」は、東京高裁の逆転有罪(7月13日)から間もなく1ヵ月。闘いは最高裁に移りました。

【158】乳腺外科医裁判 “科学的厳密性に議論の余地” があっても逆転有罪 - Free大助!ノーモア冤罪!

仮に最高裁で無実を訴える声が門前払いにされてしまったら、2年間の刑務所生活を強いられることになります。医師免許も取り消されてしまい、規則によって10年間は再び資格を取ることができないといいます。

まさに医師生命をかけた闘い、絶対に有罪を覆すしかありません。

◆“それでも外科医師が犯人だ”という声に答えてみる

日本医師会」が抗議の声を上げるほど、冤罪であることが明白なこの事件。

【159】医療関係者も激怒!! 乳腺外科医裁判、逆転有罪から2週間 - Free大助!ノーモア冤罪!

しかしネットなどでは、外科医師を犯人視する書き込みを見かけます。一部メディアの悪意に満ちた報道が元ネタになっているようです。私もこれらの記事に目を通しましたが、主に以下の2つのポイントから、犯人視しています。

  • ① 外科医師が患者の上半身を撮影した画像がある。
  • ② 警察はDNA鑑定の資料を破棄していない。

これらについて、法廷での外科医師本人の証言や弁護団の報告などをもとに、反証したいと思います。

◆撮影は通常の医療行為

まず①について。写真撮影を行ったのは事実です。胸の手術前・手術後を比較するためで、外科医師として当たり前の医療行為を行ったに過ぎません。

使用したのは病院のカメラで、撮影した画像データは電子カルテに取り込んだ後に消去。撮影の際に顔が映り込んでしまいましたが、カルテに取り込む際にトリミングしました。

この “顔が映り込んだ” という事実が一人歩きし、アヤシい印象を持たれてしまったようです。さらに画像データを自宅に持ち逃げした…という話も拡散されたようですが、これは事実無根。警察は外科医師の携帯電話や自宅のパソコンを押収しましたが、何も出てこなかったといいます。こうしたデマは、冤罪に付きモノです。

◆手洗いは犯罪事実に関係ナシだが

②について “外科医師=犯人” という人たちの主張は、以下のようなもの。

「警察は鑑定資料(外科医師の唾液)を採取するため、女性の胸をガーゼで拭った。このガーゼの残り半分は保管されているので、“資料を破棄した” とは言えない」

これはだからどうした?というレベルの言いがかりに過ぎません。そもそもの前提として……。

  •  実際に鑑定に使った部分のガーゼは破棄されている。
  • ガーゼから採ったとされるDNA抽出液も破棄されている。
  • 鑑定を記録したワークシートが都合良く改ざんされた疑いが強い。(鉛筆で書かれ、消しゴムで上書きした跡が複数ある)
  • DNAが出たことを証明するデータが提出されていない。

“これが犯人の証拠だ!!” と主張した当該部分を捨ててしまったわけですから、後になって半分が残っていると騒いでも意味はありません。

仮に残り半分のガーゼが重要な証拠になるのであれば、検察は真っ先に再鑑定を行っているハズ。しかしそんなハナシも聴きません。

法廷での外科医師の態度がヘンだったとあげつらう声もあります。しかし法廷というのは、日常とは異なるアブノーマルな空間。裁判官に見下ろされ、傍聴人の視線を背中に感じながら、検察官や弁護人の質問に答えなければならないのは、モノ凄いプレッシャーでしょう。

たとえ無実でも、緊張して態度がおかしくなるのは正常なことでないかと思います。

◆患者さんへの思いやりが冤罪をふせぐ

外科医師が当日の朝から手を洗わず、マスクも着けていなかったことを非難する声もあります。事件に直接関係ないことですが、突っ込まれる口実になってしまったと思います。 これについては、私も手洗いはすべきだったと思います。衛生面においても、エチケットという意味でも。

 裁判で最大の論点となった「せん妄」については、2019年2月の無罪判決の直後に弁護団と支援者の医師がこんなコメントを発信しました。

「海外では術後せん妄のガイドラインがある国が多いが、日本では医師の間では常識として共有されながら、症例報告が全くない。『せん妄が起こり得る』というガイダンスも患者に行われていない。述後せん妄対策がなされていなかったことが(訴訟に)大きく関係している」(高野隆・主任弁護人)

「術後せん妄の対応は現場の医師のさじ加減で行ってきたが(中略)医療界も術後管理に対してガイドラインをもう少しきっちり研究していかなければならないと思う」(佐藤一樹・東京保険医協会理事)

(m3.com 2019年2月20日配信記事より)

その通りだと思います。もし手術前に患者さんに “せん妄による幻覚で怖い想いをするかもしれない” とシッカリ説明していれば、そもそも事件にならなかったかもしれません。

日本の医師の男女比を調べてみました(厚生労働省『医師・歯科医師・薬剤師統計』より、2018年12月31日現在)。

  • 総数 327,210人
  • 男性:255,452人
  • 女性:71,758 人

80%近くを男性医師が占めていることがわかりました。女性医師の比率は約2割と、OECD経済協力開発機構)加盟国の中でも最低レベルだといいます(OECD平均で約45%)。

日本の医療現場では男性医師が女性患者を診ることも必然的に多くなるわけで、当たり前のつもりで行った医療行為が、“わいせつ行為をした”という冤罪を生んでしまうリスクが高い環境だと改めて感じました。やはり何らかの対策は必要じゃないでしょうか。

私は医療については勉強不足でなので言うのはおこがましいのですが、医師の間での常識と一般社会の常識に、少しズレがあるのではないかという印象です。

このズレを自覚し、患者さんを思いやってケアすることが、医療現場の冤罪防止につながるのかと思います。

医療従事者イメージ(イラスト=フリー素材集いらすとや)。

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【162】滋賀県警はこれからも冤罪を量産し続けます〜関西テレビのレポートから〜

関西テレビが県警のその後を追跡取材

このブログでも何回か紹介してきた「湖東記念病院事件」。今年4月に再審無罪を勝ち取った西山美佳さんが、約6000万円の刑事補償を請求しました。

元看護助手が刑事補償請求 患者死亡で再審無罪 滋賀(時事通信) - Yahoo!ニュース

20代〜30代のほぼ全てという貴重な時間を国家権力に奪われたことに対する補償が、6000万円……。この金額が十分なのか安すぎかは、分かりません。しかし冤罪を作り上げた滋賀県警や検察、裁判所が何のペナルティを受けないのはどうかと思います。彼らの財産を没収して、補償金に充てても良いぐらいです。

とくに冤罪を生み出した原因の究明も、捜査資料の公表も拒み続ける滋賀県警の態度は問題です。このことについて、関西テレビが追跡取材を行いました。

(こちらです)

news.yahoo.co.jp

全文は上記リンクをご覧いただくとして、とくに重要と感じた部分を抜粋してみます。(赤字部分は私が付けました)

関西テレビは今回の“事件”について、どういう調査・検証を行ったのか、滋賀県警に情報公開請求を行った。 その結果、開示されたのが…

警察庁の報告について(湖東記念病院再審)(決済日2019年8月1日のもの) ●2019年8月2日付報告書

●2019年8月30日付報告書

警察庁刑事企画課への報告について(決済日2019年9月19日のもの)

●事実対比表(再審第一回公判に関係するもの)

●事実対比表・判決後(判決後に関係するもの)

という表題が付いた6つの公文書である。

大きく分けると、 警察庁への報告書が2つ 刑事企画課長の「個人メモ」とされる2つの報告書 やり直しの裁判と当時の裁判での事実認定に関する対比表が2つ 合計41ページである。

 

さらに、滋賀県の情報公開条例を根拠に、特定の個人を識別する情報だけではなく、関係者の供述内容、当時の捜査に関する判断などについても、「公にすることで将来の捜査に支障が生じ、公共の安全の秩序の維持に支障を及ぼす恐れがある」などとして、ほぼ全てが「黒塗り」であった。

開示された41ページの大部分が「黒塗り」だったことを取材スタッフが県警に問いただすと、捜査の検証は行わないと開き直ったといいます。

そして滋賀県警の本部長が、こんな見解を述べたことも報じています。

2020年7月3日の滋賀県議会で、県警トップの滝澤依子本部長に今回の再審無罪に関して議員から質問があった。

判決についての評価は差し控えますが、県警察においてはご指摘いただいたような、不適切な取調べ、あるいは恣意的な証拠開示、予断に基づいた死因鑑定といった事実は、確認されておりません

要するに滋賀県警は、捜査に問題はなかったと開き直っているわけです。これは“今後も引き続き冤罪をつくる”と宣言したに等しいことだと思います。これが警察という組織の一面だということを、私たちは認識しておいた方が良さそうです。

さらに刑事司法の専門家の、こんなコメントも紹介しています。

 

滋賀県警の一連の対応について、冤罪問題の研究をしている甲南大学の笹倉香奈教授(刑事訴訟法)は、「取り調べや死因の問題など、どの面をとっても検証をしないというのは、あまりにも乱暴。ましてや『捜査に問題がない』というのも、三者による検証委員会などを立ち上げて調べた結果ならわかるが、自分たちで調べた結果というのは一般社会では信じられないこと。“説明責任”という考え方からは、かけ離れている」と強く非難する。

また、滋賀県警が公開した文書の大半が黒塗りだったことについても、「公文書は税金で作成しているものであって、公共財。“捜査の秘密”を守っているなら、必要最小限だけ隠せばいいと思うが、ほぼ全て隠すことはありえない。できる限りのことを明らかにするのではなく、『できる限り明らかにしない』のが今の滋賀県警の姿勢。それが冤罪被害者からどう見えるのか、社会の人が納得するのかを考えてほしい」とも指摘している。

 笹倉教授の姿は再審や冤罪事件の集会で見かける機会も多く「日本版イノセンス・プロジェクト」の推進者の1人でもあります。

イノセンス・プロジェクトの活動については、こちらに書きました)

daisuke0428.hatenablog.com

◆しつこいようですが、あのハナシについて再度指摘

最後にもう一言。この関西テレビの記事からは、ある重要な事実が欠落しています。それは下記の記述です。

西山さんの取調べは、滋賀県警の男性警察官が担当していた。この警察官は身の上話などを熱心に聞き、コンプレックスを抱えていた西山さんを励ましてくれたといい、西山さんは次第に好意を寄せるようになる。そして、警察官の関心を惹くために、「チューブを故意に外した」と“ウソの自白”をしてしまうのである。

この男性警察官=山本誠刑事は、最初から優しい態度で西山さんに接していたワケではありません。最初は亡くなった患者さんの写真を見せつけて「何も思わないのか」と恫喝したり、「なめたらあかんぞ」とイスを蹴飛ばしたり、暴力的な取調べを行ったといいます(『冤罪白書2019』西山さんの手記より)。

そして意に沿った自白を始めると、この記事に書かれているように急に優しくなったのです。山本刑事は西山さんが軽度の知的障害がある供述弱者であることを利用し、アメとムチを使い分けて自白を強要し、冤罪をデッチ上げたのです。

 インターネット上などでは、いまだに“刑事に惚れた西山さんが悪い”などと中傷する声が見られます。これが誤解であることは、このブログでも繰り返し書いてきました。しつこいようですが、再度指摘しておきます。

また、記事は滋賀県警がつくりあげたもうひとつの冤罪「日野町事件」についても触れています。こちらについては、改めて掘り下げて紹介したいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

再審無罪確定以降の「湖東記念病院事件」について書いた過去ブログも、こちらにまとめました。

daisuke0428.hatenablog.com

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【161】守大助さんからのメッセージ

◆22人の裁判官こそ裁判にかけられるべき!!〜切実な叫び

7月最終日になりました。千葉刑務所の守大助さんから、全国各地の支援者へメッセージが届きましたので、紹介します。

  • 書中お見舞い申し上げます。

    今年は新型コロナが終息しない夏になるようです。

    皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

    これから暑さが厳しくなってまいります。

    熱中症などには十分に注意されてお過ごしください。

    このたびの大雨で各地に被害が出ておりますが、大丈夫ですか。新型コロナによって自粛が続いている中でも、支援活動してくださり有り難うございます。私を心配してくださる、温かく力強いお便りに!毎回励まされ、がんばって生活しています。

    7月9日で、強制留学(※1)も12年。なぜ無実の私が!社会から隔離されなければならないのか! もう19年も塀の外に出てません裁判長らには真実を分かってもらえると信じて!訴え闘ってきました。

    これまでの裁判長らには裏切りられ続けました。確定審の畑中裁判長(※2)、確定させた最高裁藤田裁判長(※3)は仙台にいます。

    彼らは無実の叫びを!医学・科学を!どう聞いていたのか? 公正な判断・裁判をしなかった22人の裁判長(※4)らが裁判にかけられるべきだ! 

    私は筋弛緩剤を混入していないし、患者さんを苦しめたり殺めたりしていません。公正な裁判をしてほしい!

    第二次(再審)仙台地裁で必ず真実が照らされると信じて、全力で闘い続けます。今後も皆さんのお力を貸してください。

    2020年7月 無実の守大助

    • ※1 2008年に千葉刑務所に収監されて12年になる、という意味。大助さんは刑務所生活を“強制留学”と表現しています。
    • ※2 畑中英明・元仙台地裁裁判官。2004年3月30日「無期懲役」の判決を下した。

      ※3 藤田宙靖(ときやす)・元最高裁裁判官。2008年2月25日「無期懲役」を確定させた。裁判官になる前は東北大学法学部長、名誉教授などを歴任。

      ※4 これまで「北陵クリニック」の判決に関わった裁判官(メッセージでは裁判長と表記)の総数。内訳は以下の通り。

      • 第一審(仙台地裁/2004年):3人
      • 控訴審(仙台高裁/2006年):3人
      • 上告審(最高裁/2008年):5人
      • 再審請求審(仙台地裁/2014年):3人
      • 即時抗告審(仙台高裁/2018年):3人
      • 特別抗告審(最高裁/2019年):5人

        

 このブログでも繰り返し書いてきた通り、冤罪であることがほぼ間違いない「北陵クリニック事件」。しかし関わった22人の裁判官全員がマトモな審理をせずに「有罪」を維持してきました。“裁判官こそが裁判にかけられるべきだ!”という叫び、もっともです。

来年の1月で大助さんが自由を奪われて20年。そして4月には50歳の誕生日を迎えます。第二次再審で、無罪を勝ち取るしかありません。

 

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【160】良かった!!「あずみの里」逆転無罪

◆東京高裁で、今度は「逆転無罪」!!

本日は、嬉しいニュースがありました。「あずみの里業務上過失致死事件」で、東京高裁が無罪判決を言い渡しました。事件のはじまりは2013年、長野県の特別養護老人ホーム「あずみの里」で、入居者の女性がおやつのドーナッツを食べた直後に意識を失ったことでした。

病院に搬送された女性は意識が戻らないまま、1ヵ月後に死亡。准看護職師の山口けさえさんが注意を怠ったとして警察の取調べを受け、裁判で業務上過失致死に問われました。

そして一審の長野地裁では「罰金20万円」の有罪判決だったのが、本日の東京高裁で逆転無罪を勝ち取ることができました。2週間前には同じ東京高裁で「乳腺外科医師事件」の「逆転有罪」というトンデモない判決が出たばかり。無罪になって本当に良かったです。

介護関係者が一体となって支援活動を展開してきたことも、裁判を勝利に導けた秘訣だったかもしれません。とくに分かりやすい情報発信は、守大助さんの支援者としても、見習わなければと思います。

たとえばこちらの動画。事件の概要、冤罪のポイント、裁判で何が争われてきたのか?などが、とてもわかりやすくまとめられています。ぜひご覧ください!!

www.youtube.com

◆専門家の意見を聞くまでもなく「無罪」

争点のひとつが、女性が亡くなった原因でした。警察と検察は、最初からドーナツを喉につまらせた窒息死と決めつけていました。しかし医師が脳のCTを調べると窒息はしておらず、脳梗塞だったことが明らかになりました。

そもそもドーナツが気道を塞いだ形跡はなく、警察は亡くなった女性の司法解剖すら行わなかったといいます。守大助さんの「北陵クリニック事件」をはじめとする多くの冤罪事件と同じく、基本的な裏付け捜査さえ行わずに事件をデッチ上げたのです。

この事件も「北陵クリニック事件」や「乳腺外科医師冤罪事件」と同じく「日本国民救援会」が支援しており、医療福祉施設で起こった冤罪事件ということもあり、守大助さんの支援者仲間も裁判の行方を固唾をのんで見守っていました。

実は本日の無罪判決が出る寸前まで、悲観的な予想も少なくありませんでした。というのも、先述した「死因は脳梗塞」とする専門医の意見書を、東京高裁が証拠採用しなかったからです。

これまでの裁判の傾向として、無実を示す重要な証拠が採用されなかった場合、圧倒的に有罪になるケースが多くなっています(当たり前ですが)。

“専門家の意見を無視して有罪にするという悪しき伝統を、またしても繰り返すのか……?”と、怒りをあらわにする支援者もいました。しかしフタを開けてみると無罪!!

証拠採用されなかった理由については、ジャーナリストの江川紹子さんが明らかにしています。

医師の意見書を証拠を採用するには、(医師の)証人尋問などを行い、山口さんをさらに長く被告人の席にとどめることになる。高裁は、「(これ以上)時間を費やすのは相当でなく、速やかに原判決を破棄すべきである」とした。

 要するに、Kさん(亡くなった女性)の死因を検討するまでもなく、山口さんは無罪、という判断だ。

(Yahooニュースより)

 (記事の全文はこちらから)

news.yahoo.co.jp

山口さんを思いやって、あえて証拠採用しなかったということでしょう。しかし裁判を受ける側からすると、判決を聞くまでは気が気ではありません。少しでも早く安心を届けるためにも、ちゃんと証拠採用をした上で証人尋問を省くといった対応はできなかったのかなと思います。弁護団も証拠を出すために、労力をかけたでしょうし。

裁判所はそのぐらいのコトをしても、罰は当たらないと思います。

東京高裁前で、無罪判決を喜ぶ支援者たち。「国民救援会」、「民医連」など、さまざまな支援団体のノボリがはためく。(Yahooニュース、江川紹子さんの記事より)

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【159】医療関係者も激怒!! 乳腺外科医裁判、逆転有罪から2週間

◆これでは痴漢冤罪の暗黒時代に逆戻り

前回のブログで紹介した「乳腺外科医師冤罪事件」の逆転有罪から、間もなく2週間。新型コロナの脅威が続くなか、久々に何人かの冤罪支援仲間と顔を合わせました。

皆さんともに “本当に許せない判決だ!! これでは“20年前の痴漢冤罪の時代に逆戻りだ!!” と、怒りをあらわにしていました。本当にその通りだと思います。

痴漢冤罪が頻発した1990年代後半〜2000年代前半、よく裁判所はこんな理屈で有罪判決を下していました(もちろんマトモな無罪判決が出たケースもありましたが)

“被告人が痴漢行為を行ったことを証明する証拠はない(※)が、被害を訴える女性の証言が具体的かつ詳細だから、女性の言い分は信用できる”

※痴漢行為を行えば必ず検出されるはずのスカートの繊維やDNAが出ていないこと、など。

今回の逆転有罪も、まさにそうでした。警察の鑑定のデタラメさを “科学的厳密性に議論の余地がある” と認めながらも、女性の訴えが信用できるという理屈で無罪を取り消して有罪にしてしまいました。まさに、20年前の悪夢の再来です。

◆「日本医師会」会長も“体が震えるほどの怒り”

さすがにこんなコトは許しておけないと、医療関係者からも判決を批判する声が上がっています。判決から2日後の7月15日、「日本医師会」が怒りを表明しました。

準強制わいせつ罪に問われ、2020年7月13日の控訴審で懲役2年の有罪判決が出た柳原病院(東京都足立区)の非常勤外科医に対する訴訟を巡り、日本医師会会長の中川俊男氏は7月15日の会見で「体が震えるほどの怒りを覚えた。日本医師会は判決が極めて遺憾であることを明確に申し上げ、今後全力で支援する」と表明した。

(中略)

会見で副会長の今村聡氏は「科捜研のDNA判定ではデータを鉛筆で書いて消しゴムで消す、DNAの抽出液を廃棄するなど、通常の検査で考えられない方法がとられている。再現性の乏しい、ずさんと言わざるを得ない検査だ。それにもかかわらず検査の信用性を肯定する判決は世間の常識から大きく乖離している」と指摘し、「このような判決が確定することになれば、全身麻酔下での手術を安心して実施することは困難となる。医師を代表する団体として今回の有罪判決には強く抗議する」と述べた。

以上「日経メディカル」(7月16日)より引用しました。全文はこちらです。 

medical.nikkeibp.co.jp

日本医師会」は1916年に設立され、会員数は約17万2000人(2019年12月1日現在)。 2019年2月に東京地裁で無罪判決が出た直後には、この判決を支持すると表明していました。

◆「東京保険医協会」の声明

7月17日には「東京保険医協会」が声明を発表しました。

〈全文はこちら〉

www.hokeni.org

「東京保険医協会」とは主に都内の開業医が加入する団体で、会員数は5612人(2018年4月現在)。外科医師の裁判支援も行ってきました。

声明文の全文は上記リンクをご覧いただくとして、ごく簡単にまとめると以下のようなポイントを批判しています。

  • 1.問題だらけの警察科捜研の鑑定を容認した。
  • 2.医学的エビデンスにもとづいた専門医でなく、素人の証言を採用した。
  • 3.カルテに「不安言動」と書かれているものの「せん妄」と明記していないから、せん妄ではないとした。
  • 4.「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則を無視した。

そして結論として、このように述べています。少し長くなりますが引用します。

現在、世界的COVID-19の感染拡大によって、一般国民であっても会話時の飛沫の動態や、PCR検査の評価方法や、各検査間の感度や特異度の相違などの医学的基礎知識が高まり、サイエンスリテラシーやメディカルリテラシーのレベルが上がっている。そのような背景において、「検証可能性の確保が科学的厳密さの上で重要であるとしても、これがないことが直ちに本件鑑定書の証明力を減じることにはならないというべきである。」と嘯く傲慢な姿勢は、医師や医療者だけでなく一般国民からも批判を浴びている。誰が読んでも、常識から大きく乖離した冤罪判決である。

◆ストップ冤罪に党派は関係ナシ

こうして2つの医療団体が抗議の声を上げたわけですが「日本医師会」は自民党の支持母体として知られています。そして一方の「東京保険医協会」は、日本共産党と比較的親密と言われています。

党派や政治的な思想信条に関係なく、医療関係者として今回の判決には黙っていられないということでしょう。闘いは最高裁へ、医療現場の声が無罪を勝ち取る力になってほしいと願っています。もちろん冤罪支援者として、私たちも声をあげ続けます。

 

 

 

 

【158】乳腺外科医裁判 “科学的厳密性に議論の余地” があっても逆転有罪

◆こんなコトで無罪判決を取り消して良いのか?

昨年の2月、このブログで紹介した「乳腺外科医師冤罪事件」。

すでに報道でご存知と思いますが、本日東京高裁は一審の無罪判決(2019年2月20日東京地裁)を破棄。「懲役2年」という逆転有罪判決を言い渡しました。

daisuke0428.hatenablog.com

この事件、守大助さんの「北陵クリニック事件」と同じく、人権団体「日本国民救援会」が支援しています。私は傍聴に行かれませんでしたが、実際に行った支援者仲間は実刑だよ。無実の人が」と絶句したといいます。

この事件、他にもいくつか「北陵クリニック事件」と似通った点があります。

  • 医療機関を舞台にした事件である
  • ②元々存在しない事件がデッチ上げられた疑いが大きい
  • ③肝心の証拠であるDNA抽出液が破棄されて存在しない
  • ④鑑定数値を記入したワークシートが改ざんされた形跡があるなど、医師を犯人にデッチ上げるため証拠がつくられた疑いがある

一審の東京地裁は、とくに③と④に対して「検査者としての誠実性に疑念がある」と断罪し、無罪判決を下しました。

ところが本日の東京高裁は…。

アミラーゼ鑑定とDNA定量検査についても、本判決では科学的厳密性には議論の余地があるとしつつも、女性の証言の信用性を補強できるとした。

(日経メディカルオンライン【速報】より)

「科学的厳密性に議論の余地がある」ならば“疑わしきは被告人の利益に”という刑事裁判の大原則にもとづいて、無罪にしなければなりません。

しかし東京高裁は“証拠は曖昧だけど、被害を訴える女性の証言が信用できる…”という理由で有罪にしてしまいました。こんな程度のことで無罪判決を取り消すなど、トンでもない暴挙です。

“疑わしきは被告人の利益に”とは?についてはこちらに書きました)

【36】無実の人は無罪に!〜疑わしきは被告人の利益って?〜 - Free大助!ノーモア冤罪!

◆専門家の意見を無視して懲役2年!!

今回の裁判で最大の争点は、被害を訴える女性の「胸を舐めるなどのわいせつ行為をされた」という証言が信用できるか?です。

外科医師と弁護団は、すべては麻酔手術の「せん妄※による幻覚」であると主張しています。

※せん妄=薬物の影響などによる、一時的な意識障害や認知機能の障害で、錯覚や幻覚をともなう。

そもそも外科医師が犯行を行った事実自体が存在しない。女性は幻覚によって被害を受けたように錯覚しているだけ、というわけです。

ある意味、苦しい想いをしてしまった女性も被害者。決して悪意を持って無実の外科医師を陥れたのではないことは、押さえておきたいポイントです。

弁護側は「せん妄」を研究している精神科医や麻酔科医に証人になってもらいました。そしていずれの証人も、女性は典型的な「せん妄による幻覚」である可能性が高いと証言しました。

一方、検察側証人に立った井原裕医師(獨協医科大学埼玉医療センター)は「せん妄であっても幻覚の可能性はない」と、これを否定。この井原医師、自ら「私はせん妄の専門家ではない」と宣言するほどの“素人”だそうです。

つまり裁判所は専門家である弁護側証人でなく、素人である検察側証人の言うことを採用し、有罪にしたのです。こんな裁判が続くかぎり、これからも冤罪が量産され続けるでしょう。

裁判所がこんな体たらくなので、検察もやりたい放題。“素人”の証人を呼んで、無罪判決をくつがえそうなどという蛮行を、平気で行えるのでしょう。

ではなぜ、裁判所は意味不明な判決を下すのか?興味深いツイートを見つけました。

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袴田事件」の弁護士さんの言葉だけあって、とても説得力があります。もはや日本は法治国家などと呼べる状況でなく、公正な裁判など望めません。“裁判官なら何をやっても許されるという”無法地帯が、裁判所の実態のようです。

繰り返しますが、今回の判決は「懲役2年の実刑」です。

外科医師と弁護団最高裁に上告して闘う意向ですが、もし刑が確定してしまったら、執行猶予ナシで刑務所に送られてしまうのです(もちろん執行猶予が付けば有罪にしてOKというワケじゃありませんが)

これが日本の司法の現実。このことを私たちは、今一度認識しておくべきでしょう。

最後に本日の判決を報じた「日経メディカルオンライン」から、弁護団のコメントを紹介します。

「我々は怒りを通り越して、どうしていいか分からない。一審であれだけ議論して、今回の科捜研の手法は信頼性に欠けるものだという結論が出たのに、データは全て捨てても証拠として認められるという判決が出るとは思っていなかった。

科捜研の技官に、『データはないがあなたのDNAが出た』と言われたら終わりということか。今後も、次々にえん罪が生まれるだろう」

 弁護団と支援者は、外科医師の身長やベッドの位置関係から、そもそも犯行など不可能なことも実証。『乳腺外科医師えん罪事件』(外科医師を守る会)パンフレットより。

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