Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【43】棄却を受けて、守大助さんメッセージ

仙台高等裁判所の暴挙を受けて、

守大助さんから全国の支援者に、

メッセージが届きました。

全文を紹介します。

 

嶋原裁判長は、

棄却というバカげた決定をしました。

4年間で三者協議は3回、

何をやっていたのでしょう。

無実の訴えを聞かない、

無実の証拠を見ない、

証拠開示・尋問しない。

いったい無実の私は!

どこに訴えればいいのですか。

特別抗告審で勝利するため、

今後も皆さん、

お力を貸して下さい。

 

一雨ごとに暖かさが増してまいります。

皆さんいかがお過ごしですか。

先日の仙台高裁が出した決定に、

何と言えばいいのか。

年度末までに出すと言われてましたが、

それが2/28と。午後3時頃ということで、

私は不当な判断が出ると思っていました。

夕刊、夕方ニュースに不当判決が出ることを、

嶋原裁判長は恐れたため、

あの時間にしたのでしょう。

3月には「袴田」「大崎」が

高裁で開始決定が出る前に本件を棄却した。

土橋鑑定はデタラメ、

土橋証言は偽証。

犯行で使用されたとされている

薬品アンプルからは!

指紋が検出されているというのに、

それが誰の指紋なのか明らかにされていない。

これらを無視して判断することが許されるなら、無実の者は救われないです。

春が来るというのに、

2018年も本当の春は来ませんでした。

絶対に許されない決定です。

皆さんが要請して下さった

「証拠開示・証人尋問」を無視した判断は‼︎

誰が考えても不公平です。

理不尽であること明白です。

最高裁で勝利するため、

私は負けずに闘います。

決定当日、全国から駆けつけて下さり感謝します。私は絶対にやっていません!

両親が元気でいる内に帰りたい。

2018年3月  無実の守大助

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【42】守大助さん再審、闘いは最高裁へ②

冤罪で一番ワルいのは何処(誰)か?

私はズサンな捜査や証拠の捏造を行う警察か、

無実の証拠を隠す検察だと思っていました。

でも冤罪と闘う当事者は、

“裁判所がワルい”と口を揃えます

守大助さんは面会で切実に訴えました。

“警察や検察は仕方ない(これも困るんですが…)。

でも裁判所はもっとシッカリして欲しい”。

 

大助さんの弁護団長・阿部泰雄弁護士も、

“裁判所さえシッカリすれば、

警察も検察もワルいコトはできなくなる”

とつぶやいていました。

 

さらに他の冤罪事件の被害者の皆さんも、

同様に語っているのを聴いたことがあります。

 

さて前回【41】の続きです。

弁護団が再審請求で主張したポイント②と③を、

仙台高等裁判所がどんな理由(屁理屈)で門前払いしたか?

その決定要旨を読んで “確かに裁判所が最悪だ” と、

私も納得できました。

 

ポイント“被害者” の病状は筋弛緩剤によるものではない

 これは5人の患者さんのうち、

今ひとつ原因が分からなかったA子さん(当時11歳)の急変は、

ミトコンドリア病」によるというもの。

『総合診療医者ドクターG』NHKでもおなじみの、

池田正行医師(元・長崎大学大学院教授/現・法務省矯正医官が、

再審請求にあたり詳細な意見書を提出しています。

ミトコンドリア病」というのはその名の通り、

細胞内の微小器官・ミトコンドリアの異常による病気。

現在は国の難病に指定されていますが、

事件のあった当時は一般的に知られていなかったため、

“原因不明の急性脳症” と診断されていました。

しかし改めてA子さんのカルテに記された一連の症状を検証すると、

(腹痛、嘔吐、視力障害、けいれん、呼吸低下、心停止など)

すべてミトコンドリア病で説明できることが明らかに。

池田先生は怒りを込めて、こう告発します。

“A子さんも北陵クリニック事件の犠牲者だ。

“筋弛緩剤中毒” という誤診を、

検察や裁判所が認めないために、

A子さんはミトコンドリア病の治療を受けられず、

15年以上も放置されている。

これは人権蹂躙以外の何者でもない!”

 

弁護団仙台高等裁判所に、

池田医師の証人尋問を行うよう、

再三にわたって要請してきました。

医療のプロの意見を聴いて判断してくれ…と、

至ってマトモお願いをしているのですが、

裁判所はこれを門前払いし続けた挙げ句に、

再審請求を棄却しました。

 

決定要旨には、棄却の理由が2つほどあげられています。

ごく簡単に説明すると…

1)A子の症状が筋弛緩剤の効果と矛盾しないことは、

 すでに東北大学大学院教授・橋本保彦の証言で明らかになっている。

2)A子の試料から筋弛緩剤の成分が検出されたという、

 客観的な事実が存在する。

よって大助さんが犯人ということで決着が付いているから、

今更再審を認める理由がない…

大体こんな感じのことを言っています。

 

1)の橋本証言とは…?

大助さんの裁判が始まったばかりの頃(一審の仙台地裁

検察サイド(つまり大助さんを犯人にデッチ上げたい側)の証人として、

橋本保彦という麻酔科の先生が、法廷でこんな証言をしました。

“A子の症状は筋弛緩剤と矛盾しないと思う” 。

それだけです。

橋本先生は筋弛緩剤の権威ではなく、

論文を発表しているワケでもなく、

ただ“自分はこう思う”と発言しただけです。

 

よくある冤罪事件のパターンとして、

医学的・化学的な証拠の攻防になると、

必ずと言っていいほど、

検察側の “御用学者” が現れて、

それらしいデタラメを述べたりします。

しかし大助さんのケースでは、

橋本先生に追従する “御用学者” は誰も出てきません。

あまりにデタラメなので、誰も引き受けないんでしょう。

 

2)の鑑定が鑑定とすら呼べないシロモノであることは、

このブログの【41】や【37】で指摘した通りです。

 

つまり裁判所は、

何ら正当な理由を示さずに、

無実を訴える大助さんの声を退けたのです。

しかも4年もかけて…。

こんな薄っぺらい棄却決定を出すのに、

何故こんなに時間がかかったのでしょうか?

その間、大助さんは4つ歳を重ねてしまいました。

一人の人間の人生を、何だと思っているのでしょうか(怒)。

 

あっそうだ…

ポイント大助さんの自白はウソを強要されたものである

はどうなったかって?

これについては、完全に無視されました。

というわけで、

裁判所がスルーした自白のメカニズムについては、

改めて書きたいと思います。

無実の人が何故、身に覚えのない罪を自白するのか?

おそらく皆さんが一番不思議に思うポイントだと思いますので。

引き続き宜しくお願いいたします。

 

棄却という仙台高裁の暴挙を受け、記者会見する弁護団

阿部泰雄弁護士(右から2人目)は“完全な開き直りの決定、

科学に対する挑戦”と決定を批判。(写真/守大助さんを守る宮城の会)

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大助さんの弁護団

 

 

【41】守大助さん再審、闘いは最高裁へ

仙台高等裁判所の再審請求棄却を受け、

3月5日、守大助さんの弁護団は、

最高裁判所に特別抗告。

闘いの舞台は東京になりました。

 

弁護団は大きく3つの争点で再審を求めてきました。

“筋弛緩剤が出た” とする警察の鑑定は誤り

“被害者” の病状は筋弛緩剤によるものではない

大助さんの自白はウソを強要されたものである

 

大阪府警科学捜査研究所(以下/科捜研)が、

5人の患者さんの試料(尿、血液、点滴液)を鑑定したら、

いずれも筋弛緩剤の成分が検出された…というもの。

当ブログで何度か指摘してきましたが、

下記のようなオカしな点があります。

 

宮城県警から大阪府警に試料を渡した際に作成したハズの

「受渡簿」が1通も提出されていない。

(刑事裁判では提出されるのが当たり前、何故出さない?)

★科捜研が試料を全量消費した…と言っている。

 患者さんによっては数百回〜数千回も鑑定できる量を

 押収した “ことになっている” にもかかわらず…。

(警察の「犯罪捜査規範」においても再鑑定が必要な場合に備えて、

 試料は残しておくよう明記=捜査のイロハをも無視したルール違反!)
★実験データ、実験ノート等も提出されていない。

(これらが添付されていない鑑定は、そもそも鑑定の体をなしていない)

 

つまり「鑑定を行ったこと」を客観的に証明するモノがないんです!

さらに…

上記のポイントに加えて弁護団が問題としているのは、

科捜研が出した鑑定結果の数値も誤っており、

信用に値するモノではない、ということです。

この鑑定論を説明し始めると複雑になるので、

ごく簡単に述べます。

 

化学の常識では、

筋弛緩剤(未変化体)の成分を

鑑定(質量分析と言います)すると、

m/z279というイオンが検出されます。

 これは万国共通の認識です。

 

しかし科捜研は…

“筋弛緩剤(未変化体)を示すm/z258が検出された”

よって筋弛緩剤の混入が認められた…と主張しています。

“未変化体”というコトバはこの際無視していただいて、

この鑑定のオカシサを上手く例えたブログがあります。

 

「「おはぎ」を鑑定した結果、きな粉が検出されたため、

 この試料は「おはぎ」と認められる」
弁護団は当然反論します。
「「おはぎ」からはあんこが検出されるべきであって、

 きな粉が検出された試料は「おはぎ」ではない」

ブログのリンクも張っておきます。ぜひ読んでみてください。

冤罪ファイル その11 「北稜クリニック事件 / 仙台筋弛緩剤えん罪事件」 - 「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

 

つまり弁護団は、

“ 根拠となる数値が間違っているのだから、科捜研の鑑定は無効”

という、ごく真っ当な主張をしているわけです。

しかし裁判所は、

“鑑定の装置や条件が異なれば、違う数値が検出されることもある。

だから鑑定は間違っていない”

というトンデモない理屈をデッチ上げて、

大助さんの無実を訴える声を門前払いにました。

 

考えてみてください。例えば…

A社の電子計算機を屋外で使ったら「1+1=2」と出た。

でもB社の電子計算機を屋内で使うと「1+1=3」と出ることもある

こんなコトを言ったら、

“バカじゃない(笑)” の一言で片付けられるでしょう。

この “バカ” を真面目に主張しているのが裁判所なのです。

 

そして恐るべきことにこのバカ鑑定が、

大助さんの有罪・無期懲役の柱となっているのです。

科捜研でこの鑑定を行ったのは、

土橋均(つしはし ひとし)という人です。

現在は大阪医科大学を経て、

名古屋大学に栄転されているようです。

今から7年ほど前には分析器メーカーのHPで、

「分析装置と向き合う心得」

なるインタビューにも答えています。

下に該当ページのリンクとスクリーンショットを張っておきます。

今回は以上です。

②と③については、また次回に説明します。

 

 ▼土橋均さんのインタビューはこちらから▼

LCtalk 81号 分析装置と付き合う心得 大阪医科大学 予防・社会医学講座 法医学教室 准教授 土橋 均先生 : 株式会社島津製作所

 

 

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【40】大崎事件、再審開始決定!だが喜ぶのはまだ早い

守大助さんの無実を訴える声が、

仙台高等裁判所に門前払いされて、

明日でちょうど2週間、

一体何から書けばいいのか…

書きたいことはたくさんあるのに、

まとまらないうちに時間ばかりが過ぎています。

 

そんな中、大崎事件の再審開始決定という、

嬉しいニュースが飛び込んできました。

事件の概要などは、各マスコミ報道や、

こちらの支援団体のHPを参照ください。

日本国民救援会

 しかし…まだ安心するわけにはいきません。

検察が最高裁に特別抗告してくる恐れがあるからです。

この問題については当ブログの【28】をご参照ください。

 

実は大崎事件は2002年に鹿児島地方裁判所が、

一度、再審開始決定を出しています。

本来はここで、無罪になるべき案件でした。

しかし検察の抗告によって取り消され、

今日に至るまで16年間、

原口アヤ子さんと弁護団は、

2度の再審請求を繰り返し、

血のにじむような闘いを強いられてきました。

そして3度目の請求でやっと再審開始が認められた現在、

90歳となった原口さんは老人ホーム暮らし。

 

 

上記のリンクをご覧いただければ分かるように、

大崎事件の冤罪は明らかです。

にも関わらず何故、

3回もの再審請求をしなければならなかったのか…?

 

検察は “目の黒いうちに再審を開かせてたまるか!” と、

亡くなるのを待っているとしか思えません。

自分たちが一度起訴して有罪を確定させたものが、

覆されるのがガマンならないのでしょう。

連中のアタマの中にあるのは、

自分たちのメンツを守ることだけ。

以前も書きましたが、

検察というのは “司法マフィア” です!

 

現在、こんなことを許してたまるかと、

冤罪被害者や弁護士などが集まって、

「再審法」を制定しようという運動が始まっています。

実は再審に関するルールというのは、

刑事訴訟法で少し触れられているだけで、

手続きがシッカリ定められているワケではないんです。

なのでそこをハッキリさせて、

“再審開始決定に対する検察の抗告の禁止” を、

ルールとして定めてしまえば良いのです。

もうこれ以上、検察の横暴を許すワケには行きません!

 

ちょっと取り留めのない内容になってしまいましたが、

大助さんについても頑張ってアップしていきますので、

これからも、どうぞお付き合いください。

 

夜中でしたが、大崎事件のドキュメントをご覧になった方もいらっしゃると思います。

再審に「格差」などあってはなりません。(番組HPよりスクリーンショット

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【39】棄却!

今日2月28日、

仙台高等裁判所は、

守大助さんの再審請求を棄却。

証拠開示も事実調べも行なわず、

4年間逃げ回った末の棄却でした。

詳細は分かり次第また報告します。

 

2月5日の仙台高裁への要請後の

(結果的に最後の高裁要請になりました)

記者会見で、大助さんのお母様・祐子さんが、切実に訴えた内容を紹介します。

 

“息子は裁判官を選ぶことはできません。

 息子は無実、裁判所はどうか、

公平な判断をしてください”

 

今回も裏切られましたが、

一支援者として、

とにかく勝つまで闘い続けます!

引き続き宜しくお願いします!

 

記者会見で息子の無実を訴える守祐子さん。

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【38】全国集会の守大助さんメッセージ

2月4日の全国集会に守大助さんが

寄せてくれたメッセージを、

全文紹介します。

 

私は郁子医師の指示に基づいて、点滴をしただけです。

絶対に筋弛緩剤を混入していません。無実です!

即時抗告審で「再審開始・釈放」を勝ち取るために、

全国の皆さん!どうかお力を貸して下さい。

冷え冷えとした大気に、星も凍てつくような寒夜がつづいています。

皆さん、お変わりございませんか。

本日は、お忙しい中「全国連絡会・全国集会」へ、たくさんの方々にお集り頂いて、

とても感謝しています。あの日から17年、私は皆さんの温かいご支援のおかげで、

今日も負けずに塀の中から!無実を訴えて闘っています!

再審請求における検察の主張は事実上「白旗」を掲げているのです。

当時から清水刑事は “俺らは、お前がやったと思ったから逮捕した。

起訴するのは検事。裁判所が無罪出しても、俺らに責任ない”。

岸検事は “警察が逮捕したから起訴する。裁判で無罪になっても、

私に責任ないから” と!責任を逃れるような発言をしてました。

仙台高裁・嶋原裁判長には「良心・正義」を思い出してもらい

「新証拠」を刑事裁判の原則に従って判断してほしい。

“推認” での判断はやめてほしいです。

証拠開示・証人尋問されずに「湖東記念病院事件」では、

阪高裁・第二次即時抗告審で!!再審開始決定が出ました。

再審では画期的な判断です。私もつづきたい。

年度内に判断されます。全国から仙台高裁へ、

再審開始の風を吹かせて下さい。

今年こそ本当の春を、両親と迎えたいです。

助けて下さい。

2018年2月 無実の守大助

 

(写真上)一文字ずつ想いが綴られたメッセージ。メールもLINEもFacebookもできない塀の中からは、

手紙が外部に情報発信する唯一の手段。

(写真下2枚)弁護士会館を埋め尽くした200人が「再審開始」へ想いを一つに。

集会終了後は、再審開始を求めて仙台市の中心部をデモ後進。(撮影:北陵クリニック事件全国連絡会)

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【37】守大助さんが無実の理由〜そもそも事件がない〜

前回予告した通り、

守大助さんを無実と確信する理由を紹介します。

このブログで過去に触れた内容と重複もありますが、

2月4日の全国集会を前に、

改めてまとめておきます。

 

■医師が “筋弛緩剤の仕業” と診断していない

大助さんが点滴に筋弛緩剤を混入したことによって、

急変(急に具合がワルくなる)した “とされる” 5人の患者さん。

実はそれぞれのカルテには担当医師によって、

急変の原因がハッキリと記されています。

たとえば心筋梗塞であったり、

抗生物質の副作用であったり…。

“筋弛緩剤による” とは1行も書かれていません。

言うなれば、

急変は病気や(筋弛緩剤以外の)薬によるもので、

そもそも事件自体が存在しない…というわけです。

 

詳細は下記サイト内「起訴事案5件の比較表」を参照ください。

無実の守大助さんを支援する首都圏の会

このHPの「首都圏の会」は私たち「東京の会」よりはるかに早く発足。

東京には他にも、大助さんの支援をしている団体がいくつかあります。

機会がありましたら、改めて紹介したいと思います。

 

このうちA子さん(当時11歳)の急性脳症だけが、

いま一つハッキリしませんでした。

現在ではミトコンドリア病メラスという、

細胞レベルの難病によって引き起こされたことが、

ほぼ明らかになっていますが、

2001年当時は広く知られておらず、

「北陵クリニック」においても、

後に搬送された「仙台市立病院」においても、

医師たちは原因究明に頭をひねっていました。

 

そのことをクリニックのオーナー・半田泰延・東北大学教授が、

同大学の舟山眞人・法医学教授に相談します。

そして “筋弛緩剤が使われたかも” と推測した舟山教授が、

宮城県警に通報します。

あくまでも “疑いがあるから捜査してみてね” と、

伝えただけだったのですが、

警察は “それは大変だ!” と色めき立ってしまったのです。

そして、

“准看護士の守大助がアヤしい。奴の仕業に違いない!”

と決めつけて、

“しょっぴいて自白させれば何とかなるだろう”

と逮捕してしまったのです。

通報から約1ヵ月後の、2001年1月6日のことです。

 

■逮捕した後にカルテを押収

ここで疑問が生じるはず…。

警察は5人の患者さんのカルテをチェックしなかったのか?

そう、していなかったんです!

警察がカルテを押収したのは、

何と…大助さんの逮捕から10日後でした!

もし事前にカルテを精査していれば、

事件性ナシで終わっていたハズなのです。

もちろん大助さんの逮捕だってなかったでしょう。

原因がハッキリしないA子さんの急性脳症についても、

医師に聞き取りを行っていれば、

少なくとも筋弛緩剤は関係ないことが分かったでしょう。

 

大助さんは1月6日にA子さんに対する容疑で、

続いて3月までの間に、

残り4人について逮捕・起訴がくり返されました。

警察はカルテを押収して筋弛緩剤が関係ないと分かった後も、

逮捕を続けていたことになります。

 早くから冤罪を疑っていた報道番組

ザ・スクープテレビ朝日では、

患者さんを担当した医師の、こんなインタビューが登場します。

「急変はミノマイシン抗生物質の一種)の副作用だと説明したが、

警察も検察も “いや、筋弛緩剤だ” の一点張りで取り合ってくれなかった」

 大助さんを犯人と決めつけたら一直線。

すでに逮捕を大々的に発表し、

 “恐怖の点滴魔” という報道も拡散されていたので、

(マスメディアの問題については改めて書きたいと思います)

後戻りできなかったのでしょう。

まさにブレーキの壊れた機関車…。

過ちを認めない警察・検察の体質は、

冤罪を生む要因の一つになっています。

 

 ■“筋弛緩剤” というキーワードが一人歩き

大助さんの弁護団長・阿部泰雄弁護士は、

私たち支援者にこう語ります。

「そもそも筋弛緩剤が使われていないのだから、

間違ったイメージを拡散させないためにも、

“筋弛緩剤冤罪事件” と呼ぶのはやめて欲しい」

 “筋弛緩剤” というキーワードがはじめて登場したのは、

先ほど書いたとおり舟山教授の通報でした。

1990年代に筋弛緩剤を使ったとされる殺人事件が、

相次いで起きており(冤罪を訴えている事件もあります)

おそらくそこから連想したのでしょう。

 宮城県警も “我が地元でも起きてしまったか!”

と思ったに違いありません。

そして冷静さを失って(こんな時こそ冷静であるべきですが)

逮捕後にカルテを押収するという、

常識では考えられない暴挙に出てしまったのでしょう。

実は警察の「初動捜査状況報告書」は、

未だに表に出ておらず、弁護団は開示を求めています。

これが開示されれば、

警察がいかにしてボタンの掛け違いに至ったか明らかになるハズです。

 

■そもそも筋弛緩剤って

いつもより長めに書いてしまいましたが、

肝心の筋弛緩剤について書いていませんでした。

筋弛緩剤というのは、その名のとおり筋肉を緩める薬。

手術などで全身麻酔をする際には、

喉から管を通して肺に人工呼吸を行いますが、

その管を通りやすくするため、

喉や呼吸する筋肉の力を失わせるために用いられます。

静脈に注射されるのが一般的で、

大助さんが “やったとされる” 点滴に混入する方法では、

十分に効き目が得られず、

急変を引き起こすことなどは不可能…

というのが多くの医療関係者の一致する意見です。

製造元であるオランダのメーカーも、

「とてもあり得ない」と明言しているのです。

 そもそも患者さんは5人とも、

急変時に筋肉の弛緩が出ていません。

 

筋弛緩剤は大量に投与すれば死に至らしめることも可能ですが、

大助さんが使ったとされる量は、

患者さん1人あたり数ミリグラム程度。

しかも点滴液で相当に薄められていたことになります。

阿部泰雄弁護士は、このように例えます。

“射程距離50メートルの拳銃で、

100メートル先の人を撃ち殺したと言っているようなもの”

 

しかし警察は、

“患者さんの点滴液、尿、血液を調べたら、

筋弛緩剤の成分が検出された” という鑑定を提出。

裁判所もこれを認め、大助さんを有罪・無期懲役としました。

次回はこの鑑定がいかにアヤしい代物かを、紹介します。

 

地元・宮城をはじめ支援者有志が協力して、大助さんの無実を説明するパンフレットも制作。

希望される皆さまに配布したいのですがスミマセン…まだお問い合わせフォームを開設できてません。

もう少しお待ちください。

 

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