Free大助!ノーモア冤罪!

「北陵クリニック事件・無実の守大助さんを守る東京の会」事務局長の備忘録〜素人の素朴な目線から冤罪を考える〜

【32】アダム・スミスの言葉

冤罪に苦しむ人を支援したり、

権力に弾圧された人と連帯するココロを、

“惻隠の情”(そくいんのじょう)と表現した方がいました。

その方は松川事件をはじめ、

いろいろな冤罪・弾圧事件の支援活動を行って来た大先輩です。

平たく言えば、困っている人を思いやりいたわる心…

のようですが、なかなか実感を以て理解できませんでした。

 

そんなタイミングで出会ったのが、

かのアダム・スミスの言葉。

最近読んだ書籍『アメリカンドリームの終わり』

ノーム・チョムスキー著/Discover21刊)

で見つけました。

ちょっと引用してみます。

 

『極悪人すら憐憫の情をもつ』(1795)

いかに利己的であるように見えようと、

人間のなかには、

他人の運命に関心をもち、

他人の幸福を自分にとってもかけがえのないものだと考える、

なんらかの本性がある。

他人の幸福を目にして得られる喜び以外に自分が

得られるものは何もないとしても、

人間はそう思うようにできているのだ。

他人への哀れみや同情も、

この人間の本性のひとつであり、

他人の苦悩を目の当たりにしたり、

目にせざるを得ない状況に追い込まれたときに感じる情動にほかならない。

他人が悲しんでいるとき自分も悲しくなるという事実は、

あまりにも当然すぎて、それを証明する必要すらない。

このような感情は、

他のすべての根源的な感情と同じように、

誰もがもっているものであり、

高潔で慈悲深い人間だけに限られているわけではない。

それをもっとも敏感に感じとるのが

高潔で慈悲深い人間なのかもしれないが、

極悪人と言われている人間や最悪の無法者と言われている人間でさえ、

そのような感情をまったくもたないわけではない。

 

多分 “惻隠の情” と同じニュアンスでしょうか?

その他人の苦悩や哀しみが、

国家権力の横暴にもたらされるものだとしたら…?

そしてその横暴が、

いつしか自分に向けられる恐れのあるものだとしたら…?

これはもう、行動しかありません!

 

『アメリカンドリームの終わり』。スゴく示唆に富んだ1冊。

帯にある“明日の日本に対する警告の書”というコピーは、誇張でも何でもありません。

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【31】守大助さんから新年のメッセージ

守大助さんから、支援者へのメッセージが届きました。

大助さんは千葉刑務所に2008年に収監され、

10回目の新年を同所で迎えました。

メッセージは大助さんから阿部泰雄弁護士に届けられ、

弁護士を経由して全国の支援団体にFAXされたものです。

大助さんは手紙を発信できる数が制限されているので、

(月に7通)

声を広く伝えたい場合にはこのような方法が取られています。

以下その内容を紹介します。

 

 2018年が始まりました。

即時抗告審で「再審開始・釈放」を勝ち取るという

決意をあらたに、新しい年を迎えました。

皆様、どうかより一層のご支援を宜しくお願い致します。

 

新春とはいえ厳しい寒さが続く毎日ですが、いかがお過ごしですか。

炊事場で作業をしていますので、この年末年始も野菜切りをしていました。

正月という気分は、全国から届いた年賀状(1/4までに560通届きました。)

を一枚一枚読んでいる時間でした。メッセージにとても励まされました!

心強くなりました。私も負けずに無実を訴え闘うことができています!

再審請求における検察の主張は、事実上「白旗」を上げているに等しい

ようなものです。刑事と裁判官は当時(2001年)より責任逃れの発言を

していました。清水刑事は「お前がやったと思って逮捕したが、起訴

するしないは検事だからな!無罪となっても、俺たちに責任はない」。

岸検事は「私は警察が逮捕したから起訴する。裁判で無罪となっても

責任は私にないからな」と。裁判所がなぜ、こんなことを言っている

警察・検察を守るのか!嶋原裁判長には「証拠開示・証人尋問」せずに

再審開始決定した、大阪高裁・後藤裁判長のように(湖東記念病院)、

証拠に基づいて“良心と正義”で判断してほしいです。定年退官前に

再審開始・釈放を決定していただきたい。私は絶対に筋弛緩剤を混入

していません。やっていません!

今年こそ両親の元に帰りたいです。助けて下さい。

2018年1月 無実の守大助

 

以上です。

560通もの年賀状、本当に多くの皆さんが大助さんの無実を確信しています。

清水刑事と岸検事…この2人は自分の仕事に誇りを持っているのでしょうか?

警察官・検察官という以前に、

社会人として、人間としての資質を疑いたくなります。

こうした連中によって、冤罪が作り上げられているのが現状です。

嶋腹文雄裁判長は、大助さんの即時抗告審を担当。

定年退官を前に、この3月に「再審開始の可否」決定を出す予定です。

「湖東記念病院」については、一つ前のブログを参照ください。

 

大助さんの手書きメッセージ。キレイな字、見習わねば…。

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【30】クリスマスの日、守大助さんに面会してきました!

 もう昨年になってしまいましたが、12月25日に千葉刑務所の守大助さんに面会してきました。

 今回は「東京の会」の仲間2人と、私の計3人で面会。いずれも大助さん(46歳)と世代の近い30〜40代で、紅一点のYさんは何と、サンタさんの衣装をまとって来ました。大助さんにささやかなクリスマスプレゼント…ということで、この日のために買ったそうです(笑)。冤罪の支援活動には真剣さと同時に、ちょっとばかりのユーモアも必要です。

 もう一人のSさんは自分の不当解雇裁判の終決を機に、「東京の会」に本格的に参加するようになった心強い仲間です。Sさんは大助さんと初対面です。

 アクリル板の向こうに現れた大助さんはグレーの作業服姿。いつも通り “よっ、来てくれたね!” という感じで、にこやかに迎えてくれました。無実の罪で自由を奪われてもうすぐ17年、千葉刑務所に収監されて今年で10年…。想像を絶する不条理な状況に置かれているにもかかわらず、笑顔で接してくれる大助さんには、本当に恐縮するばかり。支援者である私たちの方が勇気づけられます。

 

 面会時間は30分。「東京の会」の活動報告やIさんの自己紹介をした後は、大助さんの近況を聴きました。10月から担当している刑務作業である、食材の下処理はだいぶ慣れたとのこと。約1000人分の収容者の食事のモトとなる、ジャガイモやニンジン、タマネギの下ごしらえをする大変な作業です。

最初は包丁の力加減が分からず悪戦苦闘していましたが、今では50kgのニンジンを50分で処理できるようになり、先輩受刑者からは“1時間30分ぐらいかかると思ったけど、早くできるようになったな” と、褒められたそうです。作業の不手際で怒られることもあるけれど、筋が通った理由なので納得しているとも、話してくれました。

 そして大助さんは12月20日に出た、「湖東記念病院事件」の再審開始決定を、“最高のクリスマスプレゼントです” と、まるで自分のことのように喜んでいました。

 この事件について、少し説明します。

2003年、滋賀県の病院で植物状態の入院患者が亡くなります。原因は不静脈による可能性が高く、そもそも事件性はないのですが、 “人工呼吸器のチューブを引き抜いて殺した” という、シナリオを勝手に描いた警察は看護助士の西山美香さんを逮捕。

山本誠なる刑事は、否認する西山さんを厳しく責め立てます。そして警察の意に添った供述をすると、急に優しく接するという取調べによって、強引に自白を引き出します。ちなみに西山さんがチューブを抜いたという目撃証言や、抜いたことを示す証拠は何もありません。

 “そんなことで、やってもいない犯行を認めるの?” と、疑問を持たれた方は想像してみてください。今まで警察と無縁で暮らしてきた人が、いきなり狭い取調室に監禁されて、刑事にひたすら責め立てられる状況を…。

強い意志の持ち主だって耐えられないだろうと言われているのが、日本の警察の取調べ。“コイツが犯人” と一度決めつけたら、どんな手段を使ってでも自白させるのが彼等のやり方です。

 西山さんは裁判になると自白を撤回。一貫して無実を訴えますが、有罪となって和歌山刑務所に12年間収監され、昨年8月に満期出所しました。

そして今回、大阪高等裁判所は、

“病死であった合理的な疑いがある” と、速やかに再審開始決定を出したのでした。例によって、検察は抗告してきました…。

 どうでしょうか?医療施設が舞台になっていること、病死を “殺人事件” と思い込んだ警察が事件化し、無実の看護スタッフを犯人にデッチ上げた点など、大助さんの事件ソックリです。自分のことのように感じられるのも当然でしょう。

 “考えが甘いと言われるかもしれないけど、湖東記念病院の流れを自分にも…と期待せずにはいられない” と最後に語って、アクリル板の後ろの扉に消えていった大助さん。

 いや “甘い” なんて言うことはないです!そもそも悪いのは警察、検察、裁判所。

弁護団や支援者仲間、マスメディアとも協力して、必ず大助さんの自由を勝ち取ります!そのように決意を新たにした面会でした。

 

面会終了後、千葉刑務所の正門前で自撮り。左からYさん、Sさん、事務局長の私です。

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【29】何故、検察は再審開始を妨害してはダメなのか?

■再審が決まると“必ず”イチャモンを付けてくる検察

更新が1ヵ月近く滞ってしまいましたが、2018年も、どうぞ宜しくお願いいたします。守大助さんをはじめ無実を訴えて闘う皆さんに、一刻も早く朗報がもたらされますように!

 さて新年1回目は前回予告した通り、“再審と検察” について書きます。

戦後長らく“針の穴にラクダを通す” ほど難しいと言われていた再審を巡る状況に、徐々に変化が起き始めています。2010年代に入ってから、布川(ふかわ)事件(2011年)、東電OL殺人事件(2012年)、東住吉事件(2016年)と、3件もの無期懲役事件が再審によって無罪を勝ち取っています。昨年は大崎事件、松橋(まつばせ)事件、年が押し迫った12月20日には湖東記念病院事件で、次々に再審開始決定が出されました。

 恐らく日本の刑事司法の歴史で、ここまで再審が相次いだのは前代未聞のハズ。

 しかし裁判所が再審開始決定を出すごとに、検察が必ずと言っていいほど、不服(抗告と呼びます)を申し立ててきます。昨年の3事件についても検察が抗告しており、ヘタをすると再審開始が取り消されてしまう恐れがあります。

最初の3事件についても検察の言いがかり(本当にこう呼ぶのがふさわしいです)を退けて、やっとの想いで無罪を勝ち取ることができました。

 ちなみに2014年の再審開始決定によって釈放された袴田巖さんも、検察の抗告によってまだ無罪になっていません。前回のブログ【28】を参照ください。

■ 検察は本来、再審に協力して無実の人を救う立場にある

 前置きが長くなりましたが改めて本題に…。

刑事訴訟法(450条)では確かに、検察は再審開始決定に対して “即時抗告をすることができる” と定めています。だからと言って、法律でOKなんだからいいんじゃない…?

というのは間違いです。

この部分はドイツの刑訴法を手本にした戦前の条文が亡霊のように残ってしまっているもので、本来は真っ先に廃止されるべきなのです。(ドイツは1964年に再審開始に対する検察の抗告を廃止)

 戦前の日本では拷問を伴う取り調べなどによって、たくさんの無実の人が獄中に送られました。 その反省に立っている(ハズの)現在の日本の刑訴法では、“疑わしきは被告人の利益に”と“無辜(無実の人)の救済” が大原則となっています。

中でも再審は誤った裁判で有罪にされてしまった人を救う、ほぼ唯一の機会と位置づけられており、検察が横ヤリを入れるなど許されるハズがないのです。

 刑訴法の大前提となる日本国憲法でも、第31条から第40条まで10条分を使って、無実の人を罰することがないよう定めています。

全99条からなる憲法の中で10条ものスペースが割かれているのは、刑事司法の分野だけです。ここでは紹介しませんが、ぜひ読んでみてください!!

 刑訴法に話を戻すと、再審を請求できるのは有罪を受けた本人、その親族、検察官とされています。つまり検察は本来、無辜の救済に積極的に協力すべき立場にあるのです。2011年に最高検察庁が策定した『検察の理念』では、検察の使命を以下のように謳っています。

公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ,事案の真相 を明らかにし,刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現するため,重大な役割を担ってい る。我々は,その重責を深く自覚し,常に公正誠実に,熱意を持って職務に取り組ま なければならない。

 そして10条からなる条文の第3条では、

無実の者を罰し,あるいは,真犯人を逃して処罰を免れさせることにならないよ う,知力を尽くして,事案の真相解明に取り組む。

 と、無実の者を罰してはならないと、ハッキリ謳っています。

 しかし現実はどうでしょう…。

前回も書きましたが検察のアタマの中には、自分たちのメンツを守ることしかないとしか思えません。“一度起訴して有罪にしたものは絶対に無罪にさせない” という、狂気にも似た執念すら感じさせます。

 守大助さんの北陵クリニック事件も、再審開始決定が出たら必ず検察は抗告してくるでしょう。もはや彼等に自浄作用は期待できないのかもしれません。私たち市民の手で、検察を変えましょう!!

 今回のブログは、昨年11月9日に開催された「くり返すな冤罪!市民集会」の、鴨志田祐美弁護士(大崎事件弁護団・事務局長)の講演「再審開始決定に対する検察の不服申立の禁止」を参考に書きました。鴨志田さん、明快なご講演をありがとうございました! 写真が暗くてスミマセン…。

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【28】冤罪「松橋事件」やはり検察は特別抗告(怒)

■検察は“司法マフィア”か?

前回紹介した「松橋事件」。12月4日、やはり検察は特別抗告しました!!!!(怒)

これにより宮田浩喜(こうき)さんの再審を開始するか、舞台を最高裁判所に移して、三たび協議が行われることになります。今はとにかく、最高裁が検察の抗告を速やかに退けて、再審が実現することを願うばかりです。

 特別抗告の前日に配信された、毎日新聞の記事を紹介します。

特別抗告ができるのは、高裁決定が憲法判例に違反している場合に限られる。福岡高検は、再審請求審で弁護団が提出した凶器と傷の不一致を指摘した鑑定書などが「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」と言えず、こうした新証拠を発見した時に再審開始を認めてきたこれまでの判例に違反するとの意見を最高検に伝えたとみられる。

この記事からわかるのは今回の特別抗告には最高検察庁、つまり検察のトップがゴーサインを出したということ。宮田さんの無実を裏付ける証拠を隠しておいて、一体どういうつもりで特別抗告をするのか…(怒) 抗告の理由も、言いがかりに等しいものでしかありません。

 実はこういうことは、決して珍しくありません。たとえば「袴田事件」。

2014年3月、袴田巖さんが約半世紀ぶりに自由の身になりました。静岡地方裁判所警察のデッチ上げ捜査を、“堪えがたいほど正義に反する” と断罪した上で、再審開始を決定しての釈放でした。

“袴田さん良かった!一件落着” とお思いの方も、多いかもしれません。実は…そうじゃないんです。袴田さんは、未だに “死刑囚” のままなんです。何故なら、検察が再審開始に即時抗告したから。

これを受け東京高等裁判所で協議が行われており、今年度中に再審開始の可否が出される見通しです。そんなことはないと願いたいのですが、万が一、再審開始決定が取り消されたら袴田さんは再び拘置所に収監され、いつ死刑が執行されてもおかしくない状況に…。

 くり返しますが、裁判所が “堪えがたいほど正義に反する” と断罪したほど(なかなか裁判所はここまで踏み込んだ表現はしません)無実が明らかな袴田さんを再び死刑台に送ろうとする…。もはや狂気の沙汰としか、言いようがありません。

 検察にとっては、一度有罪にした人が無罪になることの方が、“堪えがたいほど正義に反する” のでしょう。公益の代表者という任務を放棄し、自分たちのメンツを守ることに権力を行使する検察は、日本の司法に救う組織犯罪集団。“司法マフィア” とでも呼ぶべきです。

 他にも「名張毒ぶどう酒事件」など(この事件についても、改めて書きたいと思います)、検察のヨコヤリによって再審が阻まれた事例は、少なくありません。

次回は「大崎事件」を例に、検察の抗告が何故ダメなのか、法律的な視点も交えながら明らかにしていきます。

 

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 最高検察庁のホームページ(スクリーンショット)。ぜひアクセスして、検事総長の挨拶を読んでください。一体どのツラを下げて言っているのか…とツッコミたくなること間違いナシです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【27】冤罪「松橋事件」どうする検察!? 12月4日に注目!

■今週の嬉しいニュース

2017年11月29日、『松橋(まつばせ)事件』の即時抗告審で、福岡高等裁判所が再審開始を認めました。2016年6月の熊本地方裁判所に続いて、再審をやるべし!と判断したのです。

“マツバセ?”

“ソクジコウコクシン?”

“チホウサイバンショに続いて…?”

聞き慣れない語句を並べてしまいましたが、順を追って説明していきます。この事件は典型的な冤罪であり、守大助さんの北陵クリニック事件に相通ずる部分もたくさんありますので、いつもより長めですが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

 ■そもそも「松橋事件」とは?

1985(昭和60)年1月8日、熊本県松橋町(現在の宇城市)の民家で、住人男性(当時59歳)が殺されているのが見付かりました。首など10ヵ所以上を刺されての失血死でした。

それから約10日後、近所で電気店を営む宮田浩喜(こうき)さんが逮捕されます。宮田さんは亡くなった男性の将棋仲間。2人は事件の数日前、お酒に酔った勢いでケンカをしていました。

 これで宮田さんがアヤしいと睨んだ警察は、“オマエが腹いせに殺したんだろう!” と厳しく追及しました。腰の持病があり、キツい取調べに耐えられなかった宮田さんは、“自分の家から持ち出した小刀で刺した”と、犯行を認めてしまいます。

裁判では自白を撤回して無実を訴えましたが、“一度は自白した” という理由で 懲役13年の刑が確定。1990年から99年(仮出所)まで岡山刑務所に収監されます。

2012年3月、熊本地方裁判所に再審請求。2016年6月 、同裁判所は、“自白と客観的な証拠に矛盾がある”として再審開始を決定。しかし、これを不服とした検察が即時抗告しました(これが大きなモンダイ!後ほど書きます)

検察の即時抗告を受けて本当に再審を認めるべきか、舞台を福岡高等裁判所に移して再度の協議へ。そして今回も裁判所福岡高裁は、再審開始を認めるという判断を下したのでした。

 ■長男はどれほど無念だったことか…

現在宮田さんは84歳。脳梗塞認知症を患い、施設で暮らしています。そんな宮田さんを支え、ともに闘ってきた長男の貴浩(たかひろ)さんは昨年の熊本地方裁判所の再審開始決定を受け、新聞の取材にこうコメントしています。

捜査に当たった警察、検察の関係者も、父と同じ期間を刑務所で過ごしてほしい。そうでなければ冤罪はなくならない(2016年7月1日/毎日新聞

その貴浩さんは今年9月、病気のため61歳で亡くなりました。今回の福岡高等裁判所の決定を聞くことなく、高齢の父親の再審の行方を気にかけたままの他界。どれほど無念だったことでしょう。

■10ヵ所以上刺した凶器から血液反応ナシ!?

貴浩さんが憤った “警察、検察の捜査” とは、どのようなものだったのでしょうか?

宮田さんを犯人とする根拠は、警察に強要された自白以外にありません。宮田さんは “10ヵ所以上刺した” と自白させられますが、こんなに刺せば返り血を浴びたり、何らかの痕跡が残るはず。しかしそういったモノは一切出ていません。

凶器とされる小刀についても、警察の鑑識がいくら調べても血液反応が出ませんでした。エッ…そんなバカな?????普通ならそう思うことでしょう。宮田さんを責め立てて自白させた捜査員も、同じように疑問を持ったハズです。

しかしここで “宮田さんは犯人じゃない可能性がある。もう一度、捜査を仕切り直そう”とならないのが、警察の困ったところ。この事実がわかると、小刀に血が付かないよう、柄の部分に布を巻いて刺した。犯行の後、刃の部分は磨いだ。布切れは自宅の風呂釜で燃やした と、宮田さんの自白が 、より詳細に(?) 変わります。

 一度犯人と決めつけたら、とにかく自白させる。無実の可能性が出てきても、お構いナシ。後から判明した事実に合わせて、都合のいいように犯行のシナリオを改ざんして自白調書をデッチ上げる。このブログでも繰り返し書いてきましたが、そんな警察の捜査方法は、たくさんの冤罪を生み出す温床になっています。

 ■自白で“燃やした”布があった!?

さらに松橋事件では驚くことに、自白では燃やしたことになっていた布切れが、検察に保管されていたのです!! 布は古いシャツを切り取ったもので、切り取られたシャツも一緒に出てきました。布には焦げた跡もなく、血も付いていませんでした。

もし検察がもっと早く裁判に提出していれば、宮田さんの自白は信用に値しないと、無罪判決が出ていたかもしれない、超重大な証拠です!!

この布の存在が、どのように明らかになったのかというと、再審請求を進める宮田さんの弁護団検察庁に通いつめ、大量に開示された証拠物の中から、たまたま発見したのです。

 ここで少し説明を。警察が捜査で集めた証拠は、検察が保管します。そこからどの証拠を裁判に提出するかは、検察次第。再審においてどの証拠を開示するかも同様で、検察の全面的な証拠開示を義務付けた法律も存在しません。

じゃあ、無実の証拠が出てこないことがあるの…?検察の手中にある証拠をチェックする仕組みはいないの…?

そうなんです。これが日本の刑事裁判の現実で、検察の証拠隠しも、多くの冤罪を生み出す温床になっています。

今回も、もし検察が布を開示せず闇に葬り去っていたら…?考えるだけで恐ろしいコトです。

さらに弁護団は、小刀の刃の長さや幅では遺体の刺し傷はできないという新たな鑑定結果も提出。宮田さんの小刀が凶器という前提は完全に崩れ、再審開始決定の後押しとなりました。

 ■検察って何様なんだ?

以上です。どうでしょうか?

ズサンな捜査を行った警察も許せませんが、私はそれ以上の憤りを、検察に感じます。宮田さんの無実を示す布を隠し持っていながら、再審開始決定に平然と抗告を行う…。一体、どんな神経をしているのでしょうか?

今回、福岡高等裁判所が出した再審開始決定が不服な場合、検察は最高裁判所に抗告(特別抗告と言います)する権利も持っています。期限の12月4日までに抗告がない場合は再審開始となりますが、もし抗告されたら三たびの協議へ。

高齢で体調を崩した宮田さんに残されている時間が、決して多くない中で、冤罪を晴らす機会が、また遠のいてしまいます。

まずは12月4日、検察が抗告をするか断念するか、厳しくチェックしてください。

 そもそも裁判所が出した再審開始決定に、検察が言いがかりを付ける権利があるのか?これは日本の刑事司法の重大な欠陥です。次回はこの問題について、書きたいと思います。

 

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福岡高等裁判所の再審開始決定を受け、記者会見を行う宮田さんの弁護団

背後の写真が宮田さん。写真は「日本国民救援会」HPより。

 

 

 

 

【26】マスメディアを味方に!

滝沢秀明が弁護士を演じるドラマが、

2018年2月に東海テレビ・フジテレビ系でスタートするそうです。

タイトルは『家族の旅路〜家族を殺された男と殺した男〜』

注目はその内容。YAHOOニュースから抜粋して紹介します。

 

30年前に起きた一家三人惨殺事件。犯人とされた死刑囚のもとに、

青年弁護士・浅利祐介(滝沢秀明)が現れる。

彼は、ある女性から死刑囚の再審請求を依頼されたのだ。

小林健治による小説『父と子の旅路』をドラマ化する本作。

滝沢さんが演じるのは、両親を惨殺されたことで法律家への道を選んだ弁護士。

実父母と祖父を殺害したとされる男の冤罪を晴らして欲しいという女性に、

弁護士としての使命感から再審に向かい始める

 

メジャーなタレントの主演ドラマで

“再審”と“冤罪”というキーワードが出たのは画期的!!

社会の関心が高まっている証拠かもしれません。

これは冤罪事件の支援に関わる者にとって大きなチャンス。

マスメディアを味方にすることは、とても大切ですから。

 

そして前回報告した、

守大助さんの再審を求める記者会見ですが、

おおむね好意的な報道がされたように思います。

 

NHK仙台放送局

“阿部泰雄弁護士は「被害者の症状は筋弛緩剤によるものではなく、

確定判決はこの部分に向き合っていない」と述べました。

守受刑者の母親の祐子さんは「息子が患者を苦しめるために看護師と

なったのではない。20万人の人たちがおかしいのではないかと思っている。

これからも無実を訴えたい」と話しました。”

 

朝日新聞

“守受刑者は裁判で一貫して無罪を主張。

仙台地裁に再審を請求した12年に署名活動を始めてからの

署名数が累計で20万通に達した。再審請求については、

14年の地裁棄却に対して弁護側が即時抗告し、高裁の判断待ち。

弁護側は、患者から筋弛緩剤が検出されたとする検察側の鑑定に

誤りがあるなどと主張している。”

 

河北新報

弁護団長の阿部泰雄弁護士は

「筋弛緩剤の使用を認定した判決には科学的な疑念がある」と強調。

守受刑者の母祐子さんは

「息子の無実を信じ、再審開始を待ちたい」と語った。

布川事件で再審無罪が確定した桜井昌司さんも駆けつけ、

「捜査側の謝った見立てと思い込みが多くの冤罪事件を生んできた。

全ての証拠を開示し、審理し直すべきだ」と訴えた。”

 

どうでしょうか?

いずれも大助さんサイドの主張をしっかり紹介しています。

ふりかえってみると、

以前の報道は本当にヒドいものでした。

2001年の逮捕直後、

朝日新聞などは警察のデタラメ発表を鵜呑みにし、

“恐怖の点的魔”とセンセーショナルに報じました。

 

そして裁判で無実を訴える大助さんの主張が退けられるごとに、

被害者の一人とされるA子ちゃんの母親の、

“守被告は罪を認めて反省して欲しい”

というコメントを紹介していました。

冤罪を訴える被告人に対して、

被害者サイドの声を出して憎しみを煽る報道は、

本当に許せません!!

絶対にやってはならないことだと思います。

 

今回はA子ちゃんの母親が登場することもなく、

ようやくマトモな報道がされたという印象です。

記者の皆さんにどう関心を持ち続けてもらうか、

「東京の会」はマスメディア対応にも力を入れていきます。

 

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 河北新報」(右)と、「読売新聞」(左)の朝刊。